「獄激辛ペヤングFinal」のスコヴィル値が当てになんねぇから俺が決着つける
かつてテレビ朝日系列でやってた「ソノサキ」という番組で有名激辛料理の辛さを測定するという企画があった。
この日は「食の疑問」がテーマの回で、スタジオに来ていたメイプル超合金・カズレーザーの「激辛料理はお店やメーカーによって辛さの単位が唐辛子○本だったり、辛さレベル○○だったりで統一されていない」という疑問(というより文句)を調査するという企画があり、結論としては「辛さの単位として『スコヴィル値』があるが、一般に普及していない事、測定に手間がかかる事が原因で広まっていない」との事だった。
そして番組で辛さの単位を統一する!という事で様々な有名激辛料理を取り上げ、当時「激辛ペヤング」ブランドで最高の辛さを誇った「激辛ペヤング MAX END」が駆り出され測定された。
意外や意外どこの番組も手を付けてない画期的な企画で、辛いもの好きな私は興味津々で見ていたが、結果、激辛ペヤングENDのスコヴィル値は500だった。低すぎる。ちなみによく言われるタバスコが2,000~2,500スコヴィル。
スコヴィル値を正確に図ろうとするとアルコールで食品を抽出するという工程があるが、どうもその工程でトチった気がする。抽出した液体の容器に気の抜けるような字で「ペヤング」「もうこたんめん」と書かれており何となく不安が漂った。
激辛ペヤングENDの辛さは確かに当時の市販カップめんの中では最上位の辛さだと感じ、激辛マニアからすれば物足りないという評価だったらしいが少なくとも500スコヴィル程度ではない。激辛ペヤング以前から販売している辛口カップ麺の有名ブランド、日清食品の「とんがらし麺 うま辛海鮮」はパッケージにスコヴィル値を明記しており、ご丁寧にミニキャラの吹き出しで「そのまま食べると495スコビル、パウダーを入れると780スコビルだよ~」と書いていた。
ソノサキの情報を信じるなら激辛ペヤングMAX END=とんがらし麺うま辛海鮮パウダー無し、ということになる。絶対にそんなことはない。
アルコールで抽出する、という段階でミスがあり薄くなりすぎたとしか思えない。
一方、ネット上では広く流布されている出どころ不明の情報では「ペヤング激辛やきそばMAX END」の辛さは153,400スコヴィルとされている。これは高すぎる。
これの基準でまるか食品の公称値で倍々にして行くと獄激辛FINALは920,400スコヴィルになる。もはや一般の流通には乗らない、セレクトショップで買うしか無いような超激辛ホットソースの値である。催涙スプレーの5倍とか6倍の数値だ。辛味には金がかかる。辛くすればするだけ値段が上がる。300円しない商品ではコスト的にも現実的ではない。もしこのスコヴィル値で本当に出すなら1,000円を超えてしまうだろう。
もう馬鹿正直にソースを砂糖水で薄めていったほうがマシな結果が出るんじゃないか。俺がやったる。
スコヴィル値は元々砂糖水でサンプルを何倍にも薄めて辛味を感じなくなるまで試すという極めてアナログな定義・方法で測定されていた。時間も手間もかかるし主観に頼らざるを得ないので、今は基準をそのままに機械化されている。
原始的なので多少のコストと手間を惜しまなければ個人でも全然試せる方法である。激辛商品のセレクトショップでは独自にこの方法で調べている所もあるらしい。
手始めに最もポピュラーなホットソース、タバスコでトライ。5.0gのタバスコを5%の砂糖水で薄めていく。タバスコには唐辛子の微細な破片が入っているので、コーヒー用フィルターで越してからテイスティング。
100倍に薄めたタバスコ、明確に辛さを感じた。まだチリトマトヌードルくらいの辛さはある。
500倍に薄めたタバスコ、吐き出してじっくり待つと辛さが来た。
1500倍・1800倍、ギリギリ辛さが分かる。
2100倍、ついに辛さが完全に消えた。つまり今回のテストでタバスコ1800~2000スコヴィルという事になる。
ある程度の信憑性がある事が分かった。これで300倍で辛さが消えたりしたら試す価値が無い。
いよいよ本番、獄激辛Finalの付属ソース。24gほど入っているが、5.0g拝借して砂糖水で薄めていく。
100倍。薄めてもバリバリ色がついている。そして匂いは激辛ペヤング特有の「あの匂い」。勢いよく鼻から吸うと簡単にむせる。
中々やるかもしれない。スプーンにこぼれない程度移し舐める。辛い。かなり辛い。100倍に薄めてもタバスコ原液に匹敵する感触。
って事は、単純計算で20万スコヴィルって事になるのか?本当か。それは無いだろうが辛すぎる。
辛味を含んだ油が上に浮いたと思い、上澄みを捨てて中間をすって舐めたが同じ辛さ。これは凄い。
流石に辛味の消えるスピードはタバスコよりもずっと早かったが、ファーストインパクトは大差ない辛さに感じた。
2,500倍。まだ薄く色づいている。タバスコなら既に辛さが消えているはずだが、まだまだ辛い。弱まって入るがそれでも強く感じる。
飛んで25,000倍。ここまで来ると光に透かしても透明の液体になった。が、相変わらず匂いは健在(もちろん容器は毎回丁寧に洗浄している)。
辛さも相当に弱まり、口に含んで転がしている時は辛さが分からなかった。しかし、吐き出すとじわりと辛さがやってきた。
まだ辛さが分かる。
50,000倍。完全に水と区別がつかなくなった。でもまだ匂いは鼻をつく。怖い。辛味も何とか分かった。
辛さが分かることより50,000倍に薄めても結構匂いがする事の方に驚く。
大台の100,000倍。いよいよ匂いも薄まったが、それでも分かる。怖い。辛味は…消えてしまった。念の為、30分時間を置いて再度テイスティング。辛味は無い。まさか匂いより先に辛味が消えるとは…。
戻って75,000倍。分かる!僅かながら辛い、辛いぞ。さっき感じなかったものを感じる。ギリ辛い。
ここから更に細かく境界線を探ることも出来るが、面倒なので75,000スコヴィルって事
で。タバスコの約37.5倍。
獄激辛ペヤングFinalの添付ソースは75,000スコヴィルです。
ソースはこの後に250gくらいの戻し麺に加えて混ぜる事で完成するので、弱まることは弱まるだろうが、麺表面にまとわりつくので1/10とかにはならないだろう。
完成時の感覚としては30,000~40,000スコヴィルくらい?
ここで激辛ペヤングシリーズのおさらい。(カレーver.など姉妹品は除く)
2012年2月20日 ペヤング激辛やきそば(初代)
2017年12月7日 ペヤングもっともっと激辛MAXやきそば(『初代』の2倍)
2018年9月17日 ペヤングやきそば激辛MAX END (『もっと』の2倍)
2020年2月24日 ペヤング獄激辛やきそば(『MAX END』の3倍)
2022年3月7日 ペヤング獄激辛やきそばFinal(『獄激辛』の2倍)
これらの公表値に今回の結果を当てはめると、それぞれソースの辛さは…
ペヤング激辛やきそば(3,125スコヴィル)
ペヤングもっともっと激辛MAXやきそば(6,250スコヴィル)
ペヤングやきそば激辛MAX END (12,500スコヴィル)
ペヤング獄激辛やきそば(37,500スコヴィル)
ペヤング獄激辛やきそばFINAL (75,000スコヴィル)
うん、現実的だ。しっくりくる。正確ではないにせよこんな感じだろう。
もちろん製品も頂いた。スコヴィル値を調べるためにソースが2割ほど少なめになってるとは言え一口目に感じる苦味。個人差はあるが、人は許容範囲を超える辛味を苦く感じる(本当に辛味が駄目な人は江崎グリコのLEE20倍も苦いと言う)。
これはヤバい。辛味も即効性。ペヤングの香ばしい麺だとか、キャベツの甘みだとか全部消し飛んでる。ペヤングらしさも薄い。
一口で無理と判断し卵黄投入。辛味はマイルドになるも完全に卵黄の味が負けて消える。卵黄ゾーン、4口で終了。熱々では無理と判断し冷ましてマヨネーズ大量にかけて食うことに。冷ました事で辛味が弱まった上にマヨネーズでコーティング、プラス舌の麻痺で何とか食べられる辛さに。
でも、うん…まぁ…うまくはない。激辛ペヤングシリーズは「獄激辛」まで何とか味のバランスを保っており、辛めの物が好きだよ、程度の私でも卵黄やマヨネーズを加えることで美味しく食べることが出来た。それだけペヤングの基本味は包容力があった。しかし、辛さが限界を超えてついに崩壊してしまったのかもしれない。
これの香ばしさだとか旨味を判別するのは並の人間には無理だ。ここまで激辛マニア向けの製品は凄い。
ちなみに湯戻しする前のペヤングの麺の破片を「ペヤングはラード混ぜた油で揚げてるから香ばしんだよね~」
などと言ってポリポリ食べていたら舌の先端を噛んで血が出るという最悪のコンディションで食べた。
辛すぎるあまり舌全体が痛すぎて全然気にならなかった。辛味は痛覚だと再認識した。
あと翌日(っていうか今日)指を空き缶で切ったが何故か痛みを感じなかった。
怖い。
(追記 2022/3/24)
日をあけて約4,100スコヴィルと明記してある韓国の激辛汁なし袋麺「ブルダック炒め麺」と江崎グリコのLEE 20倍カレーを食べた。辛いは辛いが、なんて常識的な辛さだと感動した。やっぱこれくらいが身の丈にあってるさね!
(追記 2022/3/25)
初代の激辛ペヤングが未だに現役と分かったのでヨドバシで買った。
試しに同じ方法で付属ソースのスコヴィル値を測ってみると、約3500スコヴィルだった(やっぱいけるじゃん砂糖水)
製品を食べると拍子抜けするほど辛くなかった。これでも出たての頃は結構ヒーヒー言ってマヨネーズを入れてたと思うが、舌がバグったのか。勿論辛いことは辛いが香ばしい麺や甘いキャベツと調和してとても美味しい。感動するくらい美味しい。"食事をしてる"って実感する。「獄激辛Final」はなんかもう対処って感じだった。ただの「獄激辛」はギリギリ美味しいの範疇だったけど、やっぱ無理して食べてたんだと思った。これくらいの辛さが一番美味しい。