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神宮外苑再開発における明治神宮野球場の改修・新造に限定した私感(その1・改修)

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自分が初めて明治神宮野球場(神宮球場)に足を運んだのは、1975年(昭和50年)である。スワローズファンとして、明治神宮野球場で野球を観戦するようになって48年間が経過したことになる。


スワローズファンにとって、神宮外苑再開発は関心の差こそあれども2010年代前半から気になる話題だったのではないだろうか。スワローズの本拠地である明治神宮野球場の姿が変わる可能性が浮上したからである。


そして、神宮外苑再計画の中で、①現在の明治神宮第二野球場を解体し、秩父宮ラグビー場を建設。②現在の秩父宮ラグビー場の場所に明治神宮野球場を建設。③新たな明治神宮野球場の完成後に現在の明治神宮野球場を解体という流れで工事が進むことが明らかとなった。


個人的には現在の明治神宮野球場に対する愛着や思いは強い。他方、現在の明治神宮野球場はプロ野球の本拠地としては様々な問題を抱えているとも感じている。


昨今では神宮外苑再開発の反対運動が叫ばれている。だが、個人的には自分の贔屓チームである明治神宮野球場の改修などに対して、具体的な問題を指摘したり、改修費用などに関する興味深い対案を目にしていない。


そこで、いちスワローズファンの目線で、神宮外苑再開発における明治神宮野球場の新造・改修という点に絞って感じることを記してみたい。


ここでは、現在の明治神宮野球場を改修した場合をテーマに思うことを記してみたい。


この問題について記すにあたり、個人的には以下のポイントがあると思っている。


・明治神宮野球場・明治神宮第二野球場の敷地は、宗教法人明治神宮の私有地である。

・宗教法人明治神宮は明治神宮外苑における収益事業(球場など)の利益で、神宮内苑・外苑の管理費を捻出している。


・新造(新築)より改修の方が大幅にコスト増となる可能性が高い

明治神宮野球場を改修する場合

神宮外苑再開発に反対する意見において、明治神宮野球場については改修で対応可能と主張している。個人的にはこの意見に与して心情的に署名したものの、現在の明治神宮野球場を改修する場合には以下の問題が浮上する。

・改修コストが巨額となる可能性が高い

・日本で最も稼働率が高い球場故の課題

一般に改修と聞いて、新造(新築)よりも低コストというイメージが浮かぶ向きも一定数いるのかもしれない。個人的には現在の明治神宮野球場を改修する場合、明治神宮野球場を新造する場合よりもコストが高いのではないかと予想している。


明治神宮野球場は1926年(大正15年)に東京6大学からの多額の寄付などにより開場した。その後、長きにわたり学生(アマチュア)野球の聖地として利用された。MLBのニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した球聖ベーブ・ルースが来日時にプレーしたことに加え、1リーグ時代の職業野球東西対抗戦(現在のオールスター戦)も開催されている。学徒出陣の舞台ともなり、戦後は米軍に接収されたこともある(ステイトサイドパーク)。


プロ野球の本拠地となったのは、1964年の東京五輪開催にあたり、駒沢球場を追われた東映フライヤーズ(現在の北海道日本ハムファイターズ)が1962年から使用したのが最初である。プロ野球の本拠地となるにあたり、アマチュア野球の聖地をプロ野球の本拠地として利用することは認められないと国会でも議論となったが、行き場を失っていたフライヤーズの利用が認められた。その後、国鉄スワローズの経営に参画したフジサンケイグループの意向(後楽園球場開催のプロ野球中継は日本テレビが放映権を持っていた為、神宮球場に本拠地を移すことによりプロ野球の中継権を確保したい)が反映され、1964年からスワローズの本拠地となった。その後はフライヤーズが本拠地を段階的に後楽園球場に移したことにより、現在の利用状況となっている。


明治神宮野球場は開場から97年目となり、1世紀近い歴史がある。その為、建物自体が歴史的な建造物となっている。1924年に開場した阪神甲子園球場は、2007年から3期にわたる改修が行われて使用されている為、阪神甲子園球場と同様に明治神宮野球場も歴史的な価値を鑑み、改修で十分に使用できるというのが、神宮外苑再開発に反対する際の主張となっている。


個人的には現在の明治神宮野球場を継続使用して欲しいという思いはある。だが、現在の明治神宮野球場を改修して継続使用する場合には、多額のコストが発生する可能性が極めて高い。


先に記した阪神甲子園球場の改修では、200億円規模が投じられたことが明らかとなっている。現在の明治神宮野球場を改修して継続使用する場合には、200億円以上の改修費が必要となる筈である。


何故、現在の明治神宮野球場が阪神甲子園球場を上回る改修費が必要となるのかと言えば、現在の明治神宮野球場は阪神甲子園球場の改修前レベルを遥かに下回るインフラをはじめ様々な問題を抱えているからである。


明治神宮野球場は角度の急な階段や狭い球場内通路などバリアフリーやユニバーサルデザインとは全く異なる環境である。内野席の客席の狭さ、背もたれのない外野席などは快適性に欠ける。2階席を歩行が困難な方や車椅子の方が利用するのは大変だろう。そして、令和になっても選手の入退場は外野両翼のポール際にある出入口とベンチの往復である。


プロ野球ファンに歴史ある建造物である明治神宮野球場を改修して継続使用するべきという主張が余り響かないのは、他の球場との比較でインフラが大きく劣るからである。その為、明治神宮野球場が新造されることに対し、歓迎するプロ野球ファンが多い印象がある。

明治神宮野球場の改修にあたり、改修費用は宗教法人明治神宮の負担となる。宗教法人明治神宮の私有地であり、政教分離の観点でいち宗教法人の私有地に国や東京都などの地方自治体が費用を補助することは難しいからである。


200億円以上と予想される改修費を宗教法人明治神宮が賄うことは容易ではないだろう。週刊ダイヤモンド(2016.4.16号)に掲載されていた明治神宮の売上は収益事業において、その他外苑が60億円で球場によるものは18億円である。


明治神宮の収益事業の売上は118億円だが、収益事業に対しては宗教法人でも法人税の対象となる。仮に純利益を高めの10%と見ると18億円で、この利益額から課税される為、税引き後の純利益は10億円程度となるのではないだろうか。


阪神甲子園球場は阪急阪神ホールディングス(以下、阪急阪神HD)の持ち物だが、阪急阪神HDは阪神タイガースと甲子園球場の双方を運営している。プロ野球球団は本拠地球場も保有し、利益の最大化を図るのが現在のプロ野球球団の運営スタンスである。阪急阪神HDの2023年3月期決算の営業収益は7164億4400万円、四半期純利益は510億5100万円で、阪神甲子園球場の改修に投じられるだけの原資を有している。


宗教法人明治神宮は、あくまでも球場を所有して球場使用料などを得るだけに止まり、プロ野球(ヤクルト球団)の収益とは別勘定である。現在のプロ野球球団で球団・球場の一体運営を行なっていないのは、ヤクルト球団のみである。上記に記したように宗教法人明治神宮が球場で得られる収益は18億円程度(現在でも推定20億円程度)である。


宗教法人明治神宮の営業利益(収益事業の売上)は、現在でも推定150億円程度で200億円規模には達していないのではないだろうか。コロナ禍の3年間は参拝客や球場来場者も激減する打撃を受けた。純利益を高めの10%と見ても、明治神宮が200億円以上の改修費を拠出するのは容易とは思えない。スポーツ庁の2023年概算要求が463億円余であり、明治神宮野球場の改修にはスポーツ庁の年間概算要求額の半額(以上)の予算が必要となる可能性が高い。


改修費は抑えられるのではないかと考える意見もあるとは思う。だが、現在の明治神宮野球場の実態を見れば、インフラは相当厳しいと言わざるを得ない。その為、個人的には球場収益が推定20億円程度と思われる事業に対し、宗教法人明治神宮が巨額の改修費を投じるのはハードルが高いと思う。


明治神宮野球場の改修費を賄う為に、寄付やクラウドファンディングなどを募れば良いのではないかという意見もあるだろう。だが、200億円以上に及ぶと思われる額を賄うのは厳しいのではないだろうか。24時間テレビの寄付額で年平均で15億円程度である。個人的にはこの改修費に対する具体的な対案が見られないことに不満を感じている。


また、明治神宮野球場は日本で最も稼働率の高い球場と称されており、仮に改修を行う場合には阪神甲子園球場の3期よりも工期の長期化が予想される。工期の長期化は改修コスト増の要因となりかねない。


そして、明治神宮野球場の改修を主張する理由として、MLBのフェンウェイ・パークやリグリー・フィールドが改修で現存していることも挙げられている。だが、これらの改修にあたり、観客の費用負担が増すこととなっている。


フェンウェイ・パークの改修などに伴い、レッドソックス戦のチケット平均価格はMLB30球団の中でも1998年から10年連続で最も高値だった。MLBのリグリー・フィールドは2015年から5年をかけて改修が行われたが、改修費は約825億円に達したと報じられている。この改修額を拠出できたのは、球団オーナーが不動産事業で莫大な富を得た大富豪の2代目だからである。そして、改修費を賄う為に、カブスのチケット平均価格はMLBの中で最も高値となった。リグリー・フィールドの改修とともに、球場周辺は高級ホテルやマンションが相次ぎ建設された。リグリー・フィールドの改修にあたり、現在の神宮外苑再開発のような動きが並行していたからである。


追って別記事として、明治神宮野球場の新造(新築)についても記してみたい。

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従来はフリーブログでしたが、今後は対象読者を限定する形で運営します。商業メディアでは深掘りされにくい印象のあるスワローズに関して、自分なりの私感を記せればと思います。新規の方はAmebaブログの過去記事(https://ameblo.jp/yuujin0929/)に目を通した上で、読んでみたいと思っていただけるようであれば幸いです。

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