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工事現場におけるICT技術の活用促進に向けて

☆建設業の生産性向上

☆「東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会」を設置し、 意見交換を開始!

 建設局では、頻発・激甚化する豪雨災害への対応や交通渋滞の解消、水辺や緑地整備による環境の創出など、首都東京の道路、河川、公園の整備と維持管理に日々取り組んでいます。
 一方、これらインフラ整備の担い手である建設業界では高齢化が進み、熟練した建設技能者の大量退職と若手入職者数の伸び悩み等から、担い手不足が深刻な課題となっています。
 これらの課題に対応するため、建設局では平成29年度から、同じ工事量をより少ない人数、少ない工事日数で実施できるICT施工を導入し、工事現場の生産性向上に取り組んでいます。これらは、コロナ後の新しい働き方にも寄与することになります。
 今回は、この取組についてご紹介します。

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☆ICT施工とは

 ICT施工とは、ICT技術を活用した工事のことで、効率的で精度の高い施工を実現するものです。まず、無人航空機(以下、UAV)等により3次元(以下、3D)データで現地測量を行います。次に、3D設計データを作成し、ICTを活用した建設機械(以下、ICT建機)の位置情報と3D設計データを照合して、ICT建機による施工を行います。ICT建機は、機器の操作を自動制御で行うマシンコントロール(MC)、または建機のオペレータの操作支援を行うマシンガイダンス(MG)により施工します。現場の施工管理や施工数量の確認、検査も3Dデータで行います。

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 ICT施工により、従来行っていた丁張り設置による高さ管理や施工後のチェック作業、施工精度の確認資料の作成等が大幅に軽減され、現場作業の省力化が図られます。併せて、ICT建機と輻輳する作業が減少し、現場の安全性も向上します。

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☆建設局におけるICT施工の現状

 建設局では、平成29年度にICT技術を活用して掘削・埋戻し等を行うICT土工、平成30年度にICT舗装工、令和元年度にはICT浚渫工(河川)を導入するなど、国土交通省の取組を参考に、毎年、ICT施工に係る適用工種の拡大を行ってきました。ICT施工の活用は少しずつ進んでいますが、適用率が伸び悩んでいます。

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☆建設局のICT施工適用率は、何故伸びないのか

 ICT施工では、ICT建機を使うことで作業時間の短縮が図られますが、この効果を発揮するためには、ある程度の作業ボリュームが必要です。また、ICT 建機による作業では、衛星からの電波を受信して機器の位置を確認しますが、そのために位置情報を取得できるよう、良好な衛星の受信環境(以下、GNSS受信環境)が必要となってきます。

 これらを念頭に置いて、建設局の工事を見てみます。
 ICT土工を例に作業ボリュームを見てみると、対象工事の約8割の土工数量が1万m3未満で、特に2,000m3未満の割合が高くなっています。このように都市部の土木工事は比較的規模が小さく、ICT施工のスケールメリットが発現しにくい状況です。
 またGNSS受信環境について見ると、区部はビル等の建築物に遮蔽されるため、一般的に受信状況が悪く、また、多摩部も斜面や森林等で受信状況の悪い場所(非GNSS環境)が見受けられます。
 以上の理由によりICT施工が適用できない工事現場があります。

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☆ICTの積極的な活用に向けた取組

 このようにICT施工が適用できない工事現場も多く、受注業者や都の職員がICT技術を経験する機会が十分ではありません。
 しかし、ICT技術の積極的な活用を普及し、現場の生産性を着実に向上していく必要があります。
 そこで工事等におけるICT技術の活用推進を図るため、令和2年7月、国土交通省及び関係業団体で構成する「東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会(以下、連絡会)を設置し、関係者間で情報を共有して、実務的な見地から意見交換を行っています。

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 令和3年3月2日(火)に開催した第2回連絡会では、受発注者へのアンケート結果から見えてきた、建設局におけるICT施工の課題と促進策について報告しました。
 受発注者からは、ICT施工の促進を阻害する課題として、局の現場に特徴的なGNSS受信環境、施工規模と共に、ICTに関する専門知識の不足等の声が多く寄せられました。
 これらの課題を解決していくため、以下の3つの取組を掲げています。

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・ICT施工場所周辺のGNSS受信環境等について事前調査を行い、設計図書等に表記する
・GNSS受信環境の悪い現場でも、地上に設置した測量機器の自動追尾機能で、ICT建機の位置情報を取得してICT施工を行う方法等を周知する
・小規模工事でも、作業効率の向上により施工期間が短縮されるケース等を事例集として紹介する

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・起工測量やICT建機による施工などの5ステップの内、1ステップを活用すればICT活用工事とみなし、要した費用を計上する

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・施工業者を対象とした”ICT講習会”を開催する
・職員向けにICT研修を開催し、発注者側の知識を養成する

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 令和3年度は、これらの取組をとおして、建設局におけるICT技術の活用・促進を図って参ります。