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創出用地を活用した八王子市長房地区まちづくりプロジェクト

Ⅰ 都営住宅建替事業

 住宅政策本部では、東京都住宅マスタープランに基づき、「豊かな住生活の実現と持続」という基本方針の下、住宅政策に係る幅広い施策を展開しています。この中で、都営住宅等は、全体で約 26 万戸、その敷地面積の合計は、新宿区の広さに匹敵する約 1,800ha に及ぶストックを有しています。これらが良質なストックとしての役割を発揮できるよう、都営住宅等の計画的な建替えを進めるとともに、建替えによる創出用地を地域特性に応じて活用するまちづくりに取り組んでいます。
 今回は、八王子市における都営長房団地の建替えに伴い、創出用地(約3.1ha)を活用した八王子市長房地区まちづくりプロジェクトと、事業を推進している都営住宅経営部住宅整備課民間活用事業担当の仕事を紹介いたします。

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Ⅱ 都営住宅の建替えによる創出用地を活用した民間活用事業

 これまで都は、都営住宅の建替えに伴う創出用地を活用し、民間活力の導入によって民間の創意工夫を生かして、都の政策目的の実現や地域の課題解決に資するまちづくりを推進してきました。
 都心居住の推進・多様な都市機能の導入を目的とした、平成13年度の南青山一丁目団地建替プロジェクトを皮切りに、高品質・低価格の定期借地権戸建住宅の供給を目的として平成15年度には東村山市本町地区プロジェクト、都心部における子育て世帯向け住宅・子育て支援施設の整備を目的として平成17年度には勝どき一丁目地区プロジェクトなどを実施してきました。

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    平成29年9月に策定された「都市づくりのグランドデザイン」においては、身近な地域で誰もが活動しやすく快適に暮らせる、「集約型の地域構造」への再編を目的とし、大規模団地等を「生活の中心地」に設定しました。この計画に基づき、多摩地域等の大規模団地等の建替えに伴う創出用地を活用し、商業、医療、福祉等の生活支援機能が整った生活の中心地を形成することを目的に、民間の創意工夫を生かして、民間活用事業を進めています。八王子市の長房団地において実施している本事業は、生活の中心地の形成を図る民間活用事業の第1弾となります。

Ⅲ 八王子市長房地区まちづくりプロジェクト

①都営長房団地と本地区の都市計画変更
 都営長房団地は、八王子市のJR西八王子駅から約1.5kmの位置にある、約3,600戸の大規模団地です。平成8年度より建替事業を行っており、約3.1haの用地を創出しました。

案内図・位置図

 平成27年3月に改定した「八王子市都市計画マスタープラン」において、本団地では、創出用地を活用して地域の利便機能や生活支援サービスの強化など、地域コミュニティの維持に資する魅力づくりを進めるとされました。本計画等をもとに、長房団地において誰もが暮らしやすい「生活の中心地」を形成するため、地元自治体である八王子市等と協議を進めていきました。
 都営住宅団地の建替えが進捗し、八王子市により、平成29年に地区の課題や特徴を踏まえ、地区の目指すべき将来像を示す地区計画(新長房地区地区計画)の変更と併せて、用途地域についても従前の「第一種中高層住居専用地域」から商業施設等が10,000㎡まで立地可能となる「第二種住居地域」に変更されました。

用途変更図

②事業の公表から複合施設の着工まで
 都市計画変更が告示されたことを受け、都は事業の骨子を示す「事業実施方針」を平成29年11月に、事業の詳細な募集条件等を示す「事業者募集要項等」を平成30年3月に公表し、事業者の公募を開始しました。
 公募開始後は、商業事業者をはじめとして4グループから応募があり、5名の学識経験者により設立した「八王子市長房地区まちづくりプロジェクト審査委員会」の審査を経て、平成30年9月に、地元においてスーパーマーケットを展開する株式会社スーパーアルプスを代表企業とするグループ「きらり☆長房ローカル・ネットワーク」を事業予定者として決定しました。
 令和元年9月には30年間の事業用定期借地権設定契約を締結し、複合施設の建設工事が始まりました。

複合施設の概要
 本事業では、商業施設、医療・福祉施設、緑とオープンスペース及び交流スペースの機能を備えた複合施設の整備を行いました。

〇商業施設
 スーパー、ホームセンター、洋菓子店、ドラッグストア、100円ショッ   プ、フィットネス等生活に必要なものが全て揃う、いわゆる「ワンストッ  プ型」の複合商業施設が整備されました。

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〇医療・福祉施設
 内科、小児科、歯科に加え、24時間対応の在宅療養支援診療所とともに、隣接して調剤薬局が設置されました。また、近隣の八王子市地域包括支援センターが本施設に移転し、規模・機能が拡充されています。

〇交流スペース
 洋菓子店の隣に設置され、誰でも利用可能な開放的なスペースとして運営されます。内装や家具には多摩産材等が利用されています。今後、世代間交流等のイベントの実施も予定されています。

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〇緑とオープンスペース
 誰でも利用可能なポケットパークやプレイパークが整備されました。また、菜園を設置し、地域や小学校に開放されます。

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施設の完成
 令和3年4月の開業後は、スーパーマーケットやドラッグストアなどは、団地居住者や近隣住民の利便性向上に繋がるとともに、ホームセンターは、周辺地域から車で訪れる家族連れなどで賑わっています。


Ⅳ  東大和市東京街道団地地区まちづくりプロジェクト

 生活の中心地の形成を図る民間活用事業の第2弾として、東大和市の都営東京街道団地において、「東大和市東京街道団地地区まちづくりプロジェクト」を推進しています。
 こちらの事業用地は、平成29年に「東京街道団地地区地区計画」の策定と併せて、「第一種中高層住居専用地域」から商業施設等が3,000㎡まで立地可能となる「第一種住居地域」に変更されました。

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 令和3年3月に事業者募集要項を公表し、11月に、地元において商業施設等の開発・運営を行っている本荘倉庫株式会社を代表企業とするグループ「チーム・東大和リビングテラス」を事業予定者として決定しました。令和6年度の複合施設のしゅん工に向け、事業を進めていきます。

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Ⅴ   民間活用事業担当の仕事

【業務内容】
 民間活用事業担当では、新規に民間活用事業を行う団地では、地元区市や商業・医療・福祉関係者、道路・公園等の公共施設管理者、周辺自治会等との協議など、事業実施のための調整業務を行っています。また、これまで実施したプロジェクトの施設については、適切に運営されているか確認を適宜行っています。業務を通じて、都市計画法・建築基準法令に基づいた建築の技術的知識をはじめとして、土地の評価等の不動産、事業の採算性等の財務、借地借家法等の法律などに関する幅広い知識や、関係行政機関・民間企業への説明、折衝能力等のスキルなどが身につく仕事です。

【仕事の魅力】
 多くの関係者との調整協議は時には困難も伴いますが、関係者の協力を得てそれらの難題を乗り越え、プロジェクトにより完成された複合施設が多くの方々に利用されているのを見ると、この事業に対するやりがいを感じます。

港南四丁(2)目

東村山本町(2)

勝鬨一丁目(2)

Ⅵ   おわりに

 複合施設の開業によって、団地及び周辺地域の生活利便性が向上することで、地域の活性化などまちの魅力アップにつながることを期待しています。また、今後も実施を予定している地区においても、民間の力を最大限に活用し、身近な地域で誰もが快適に暮らせるまちづくりを推進していきます。

                  (住宅政策本部 都営住宅経営部)