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創出用地を活用した北青山三丁目地区 まちづくりプロジェクト

[本稿は、令和2年12月、都庁内に配信したブログ内容です]

Ⅰ 都営住宅建替事業

 住宅政策本部では、東京都住宅マスタープランに基づき、「豊かな住生活の実現と持続」という基本方針の下、住宅政策に係る幅広い施策を展開しています。この中で、都営住宅等は、全体で約 26 万戸、その敷地面積の合計は、新宿区の広さに匹敵する約 1,800ha に及ぶストックを有しています。これらが良質なストックとしての役割を発揮できるよう、都営住宅等の計画的な建替えを進めるとともに、都市整備局と連携して、建替えによる創出用地を地域特性に応じて活用するまちづくりに取り組んでいます。
 今回は、区部中心部における都営青山北町アパート(約4ha)の建替えに伴い、創出された用地(約3ha)を活用した北青山三丁目地区まちづくりプロジェクトと、都営北青山三丁目アパートの建設で採用した特殊な技術を紹介いたします。

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Ⅱ 北青山三丁目地区まちづくりプロジェクト

 老朽化した都営青山北町アパートを、集約・高層化して建て替えるとともに、創出された用地を活用して青山通り沿道との一体的なまちづくりを段階的に推進し、質の高い民間開発を誘導しながら、最先端の文 化・流行の発信拠点を形成する「北青山三丁目地区まちづくりプロジェクト」に都市整備局と連携しながら取り組んでいます。現在、都営住宅建替事業と定期借地による民活事業が竣工し、今後、沿道一体型開発区域の基本計画に基づき、UR 等関係者と連携しながら、当該区域でのまちづくりを進めていきます。

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Ⅲ 都営北青山三丁目アパートの計画

 都営住宅の建替えでは、あらかじめ設計された間取り(基準設計)を採用した、地上 14 階建てまでの片廊下型が一般的ですが、土地のポテンシャルを最大限活かした計画とするため、「基準設計」によらない 20 階建て(高さ約 70m)超高層のタワー型住棟としています。加えて、既存の団地内及び周辺の港区施設(保育所・児童館)を都営住宅の低層部に合築で整備するとともに、都営住宅建替事業区域内に既存の児童遊園を統合・再整備する計画としました。これらにより、都営住宅については必要戸数を確保しつつ、従前の1/4程度の敷地(約1ha)に集約し、残りの敷地(約3ha)を創出用地としてまちづくりに活用することが可能となりました。

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Ⅳ 都営北青山三丁目アパートの施工

 一般に、都庁本庁舎など超高層オフィスビルは軽くて強い鉄骨造が主流ですが、北青山三丁目アパートでは高強度のコンクリートと太径鉄筋の利用による鉄筋コンクリート造とし、経済性と居住性の両立を図りました。下層階のコンクリート強度は普通コンクリートの約 2 倍の60N/㎟を採用しています。通常、コンクリートは生コン車で生コンプラントから建設現場に運ばれて流し込まれます。そのため工場生産と比べ て、どうしても天候などの影響を受け品質にばらつきが生じやすくなります。本現場では、品質確保・省力化・工期短縮の観点から、工場で製作された柱や梁などの部材を現場に運び、クレーンで持ち上げつなぎ合わせるプレキャスト(PC)工法を採用し、約80%の PC 化率を達成しました。その結果、1フロア当たりの工程は6日サイクルまで短縮され、在来工法の14階建てより短期間で20階建ての超高層住宅を建設することが可能となりました。

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Ⅴ 都営北青山三丁目アパートの防災対策

 北青山三丁目アパートでの防災対策の主なものを紹介します。


■防災センター
総合防災の観点から防災設備、建物、給水設備、空調、エレベータ及び機械式駐車場を、防災センターにて 24 時間監視しています。

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■非常用自家発電設備
万が一の火災や停電の際に、消防隊が進入するための非常用エレベータや消防設備等を稼働させるために、都営住宅用と港区施設用の非常用ディーゼル発電機を設置しています。

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■その他
地域防災力の向上に資するよう、地区全体としてゆとりあるオープンスペースを確保するとともに、敷地内に 100tの防火水槽を設置しています。また、建物のほぼすべての階に防災備蓄倉庫を設置するとともに、居住者の交流や情報交換の場ともなる集会室のほか、超高層住宅にありがちな「ひきこもり」を防ぐ意味からも3層ごとに吹き抜け空間を有するコミュニティスペース(約 30 ㎡)を設けています。

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Ⅵ 最 後 に

 北青山三丁目地区まちづくりプロジェクトの他、住宅政策本部では、住宅セーフティネットとしての役割を担う都営住宅の建替えにあわせて、区市等の施設との合築や創出用地の活用により、福祉保健局・地元区市や民間事業者とも連携して、公共公益施設、子育て支援施設、高齢者施設等の整備を進めています。これまでの実績は、児童施設(保育所、幼稚園、学童保育等)約 400 件、高齢者施設(デイサービス、グループホーム等)約 100 件、民活事業8件(建設中1件含む)に上り、都内のまちづくりに大きな役割を果たしてきました。今後も、都内各地に立地する多くのストックを活かして、都の政策目的の実現や地域の課題解決を図るまちづくりを積極的に進めていきます。      (住宅政策本部 都営住宅経営部・東部住宅建設事務所)

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