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車中心のまちから人中心のまちへ   ~新宿駅直近地区土地区画整理事業~

都市整備局は都市づくりの政策立案、宅地開発や建築物の指導のほか、自ら事業者となってまちづくりを行う業務を行っています。今回は、区画整理という手法を使った新宿駅直近地区でのまちづくりの計画をご紹介します。

1 新宿というまち

新宿は1885年の日本鉄道(現JR東日本)新宿駅が開業して以降、店舗・百貨店や劇場等が立ち並ぶ東口、エンターテイメント機能が充実した歌舞伎町、超高層ビルが形成されビジネス拠点となった西新宿など、個性あるまちづくりが行われてきました。

図1

新宿のまち

新宿駅の開業を皮切りに、都心と郊外を結ぶターミナルとして鉄道各線の駅が次々に開業し、鉄道網の発達に伴い駅ビルの建設とともに、西口広場が立体化されてきました。
現在の新宿は都内最大の商業集積地です。日本のビジネスを牽引する超高層ビル街を擁し、国内外の観光客が最も集まるまちで、多様な都市機能が高度に集積した抜群の拠点性があります。また、7路線8駅が結節し、1日に約380万人が乗降する世界最大の鉄道ターミナルであるとともに、首都高速中央環状線やバスタ新宿の整備により、羽田空港や人気観光地へのアクセス性も向上しており、圧倒的な交通利便性を誇ります。

2 課題と解決に向けた取組

一方、駅構造は複雑でわかりにくく、駅施設や駅ビルも老朽化しています。また、鉄道や幹線道路、駅前広場を横断できる空間が不足しており、駅とまち、まちとまちの間が移動しにくい状況です。駅前広場は自動車中心の空間構成で、膨大な歩行者が滞留できる空間も不足し、混雑が常態化しています。

画像2

新宿グランドターミナル及び新宿駅直近地区 位置図

このような現状を踏まえ、新宿駅とその周辺を「新宿グランドターミナル」と位置づけ、再編していくこととしました。その中で、新宿駅直近地区については先行する地区として、都が施行者となる土地区画整理事業で、線路上空のデッキ新設や、人中心の駅前広場への再構成を、駅の改良や駅ビルの機能更新と一体的に進めることとしました。

図3

新宿グランドターミナルの再編イメージ

3 土地区画整理とは

土地区画整理法第2条では、「『土地区画整理事業』とは、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう。(一部抜粋)」と定義しています。
つまり、土地区画整理事業は道路、公園、河川等の公共施設を整備・改善し、土地の区画を整えて、宅地の利用の増進を図る事業です。

4 新宿駅直近地区土地区画整理事業

新宿グランドターミナルの実現にあたって、先行して新宿駅直近地区を整備します。土地を整序し(入れ替え)、駅前広場などの公共施設を整備することから、土地区画整理という手法を用いることとしました。
本事業では、人中心の広場とまちに変えるため、公共施設(東西駅前広場と1号街路)を整備し、歩行者優先の空間をつくります。あわせて、東西デッキ、南北デッキ、東口・西口・南口都市計画駐車場の出入口を段階的に整備し、歩行者ネットワークを拡充します。

図4

新宿駅直近地区土地区画整理事業 概要

5 歩行者ネットワークの拡充

新宿駅直近地区における歩行者ネットワークは、東西デッキ、南北デッキの新設により拡充します。

①東西デッキ
線路上空に歩行者デッキを新設し、地下空間に集中する歩行者を分散化します。地下で駅の東西を結ぶ東西自由通路とともに、東西のまちをつなぐ「東西骨格軸」を形成します。線路上空にグランドターミナルの核となる広場(セントラルプラザ)や改札・乗換経路も新設されます。

図6

地下空間の現状と東西デッキ将来イメージ(平面)

図7

東西デッキ 将来イメージ図

②南北デッキ 
駅前広場の回遊性を高めるため、嵩上げデッキを拡張して南北デッキとし、歩行者ネットワークを重層化します。東西骨格軸のほか、東西デッキに接続する南北デッキを新設することで、歩行者ネットワークのターミナル軸を強化します。

図8

西口広場の現状と南北デッキ将来イメージ(平面)

6 歩行者優先の広場整備

西口広場、東口広場では、広場への車両流入の抑制や駐車場出入口の移設により、車両用空間を歩行者空間に転換します。
①西口駅前広場
<地上広場>
線路上空の東西デッキと連続し、建物と一体となった歩行者の滞留空間を創出します。地下に光が入るボイド(大穴)を継承し、広場の中心に整備することで、地上・地下・デッキの空間的つながりを形成します。
また、バス・タクシー乗り場を再配置し、交通結節機能を強化するとともに、広場の中央にあった西口駐車場出入口(ループ車路)を西側へ再配置することで、駅前広場に流入する車両を抑制します。

キャプチャ

西口駅前広場(地上部分)の現状と将来イメージ

<地下広場>
地下の東西自由通路と連続し、建物と一体となった歩行者の滞留空間を創出します。地上と地下をつなぐ縦動線を拡充し、緊密な歩行者ネットワークが構築されます。
地下駐車場へ繋がるループ車路を撤去・移設し、車両系空間であった場所を歩行者空間へ転換します。また、地下駐車場に荷さばき機能を確保することで、駅前への車両流入を抑制します。

キャプチャ2

西口駅前広場(地下1階部分)の現状と将来イメージ

②東口駅前広場
車道の一部と駐車場出入口を線路側に移設し、歩行者空間を拡大するとともに、集約できない荷さばきのために、まち側にも車両動線を確保します。角筈ガードとの接続部は、歩行者ネットワークの連続性を確保するよう配慮します。

図5

東口駅前広場の現状と将来イメージ

7 おわりに

今後は、本事業の事業認可を取得し、2035年度(新宿駅開業150周年)の東西デッキ、南北デッキ及び東西駅前広場の一部完成(新宿駅の鉄道上空の新たな往来の確保)を目指します。新宿駅直近地区土地区画整理事業にてデッキや駅前広場が整備されることが、グランドターミナルの完成や、更には新宿が生まれ変わることへの契機となることと思います。