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84番目の都立公園開園 ~練馬城址公園の整備と一部区域の開園 について~

1 はじめに
 令和5年5月1日に84番目の都立公園「練馬城址公園」が開園しました。練馬城址公園は、練馬区の中央部に位置し、周囲は住宅が立ち並ぶ市街地の中に位置しています。昭和32年12月21日に都市計画練馬城址公園として決定され、計画面積26.6haのうち、約22haが遊園地「としまえん」として人々に親しまれてきました。室町時代に周辺を治めた豊島氏によって築かれた練馬城の城跡と、その周辺の景勝地を生かした遊園地として整備された「練馬城址豊島園」は、大正15年に開園した後、令和3年8月31日の閉園までの94年間、当地において多くの人々を魅了し続けた遊園地です。このとしまえん跡地を整備し、一部エリアを開園したのが、都立練馬城址公園です(図1)。

図1 都市計画練馬城址公園(赤枠)

2 練馬城址公園の事業について
1)事業着手の経緯
 本公園は、東日本大震災を契機とした平成23年12月の「都市計画公園・緑地の整備方針」の改定において、首都東京の防災機能強化のため、優先的に事業を進める予定の「重点公園・緑地」に選定され、遊園地の敷地は優先整備区域に設定し、都立公園として整備することになりました。

2)民間との連携
 令和2年6月に都は土地所有者である西武鉄道株式会社を含む関係者と、都立公園の整備と適切な利用について相互に連携・協力して推進するため、覚書を締結しました。覚書の概要は以下のとおりです(図2、図3)。

図2 都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書
図3 民間事業者による施設運営位置

 本事業は、都が段階的に公園整備を進めるプロセスにおいて、土地所有者等の民間事業者が、その土地の一部に公園の持つ機能の一翼を担うことに配慮した民間施設を、公園整備されるまでの間に一時的に整備、運営することになっています。これにより、発災時には周辺からの出入り口や避難空間を確保しており、民間事業者と練馬区が連携して避難者を受け入れる体制が整えられています。

3)整備計画
 公園整備にあたり、公園の将来像を示した整備計画を策定するため、知事の附属機関である「東京都公園審議会」に対して、令和2年6月に諮問しました。その後、4回の審議会を踏まえて令和3年4月の答申を受け、令和3年5月に整備計画を策定しました。 

(1)テーマ及びコンセプト
 整備計画では、室町時代の練馬城の築城、大正の遊園地「練馬城址豊島園」の開設から昭和・平成・令和と都民に親しまれた遊園地「としまえん」まで、長年にわたって人々でにぎわった土地の歴史・風土、緑豊かな自然を大切にし、公園利用者に加えて、地元町会等の地域団体やNPO等、多様な主体が関わり、人々が交流しながら公園を創りあげていくという考えの下、本公園のテーマを設定しました。また、テーマを実現するため、「緑と水」「広域防災拠点」「にぎわい」という視点から、3つのコンセプトを設定しました(図4)。

図4 整備計画のテーマとコンセプト

(2)ゾーニング
 テーマ、コンセプト及び計画区域の空間特性を踏まえ、「緑と水」、「広域防災拠点」、「にぎわい」の機能発現に必要な要素を取り入れた5つのゾーンを設定しました(図5)。

図5 ゾーニング

3 段階的な公園整備
 都が段階的に公園整備を進めるプロセスにおいて、区域の一部については、当面のあいだ民間事業者が施設を運営することになっているため、段階的な整備スケジュールを設定しました(図6、表1)。

図6 段階的な公園整備スケジュールの概略


表1 段階的な公園整備スケジュールの概略

 まず、令和5年度に北西部の「A 花のふれあいゾーン」、南東部の「B エントランス交流ゾーン」、石神井川沿いの「C 川辺の散策ゾーン」の3つのゾーンの一部が開園しました。これにより、広がりのある草地広場や川沿いの散策路、最寄り駅近くの人々の交流広場ができることで、地域に親しまれる公園機能を発揮するだけではなく、災害時には公園内に避難できる出入口、避難空間が確保されることになります。一方、民間事業者の施設(スタジオツアー施設)では、緑の空間の確保、施設前広場の一般開放、防災用の備蓄等を実現し、都立公園と一体的に機能を発現することになっています。
 次に、令和11年度には「概成」の段階として、新たに南側の「D 人々を繋げ歴史を伝える文化ゾーン」部分が開園する予定です。遊園地や城跡の歴史を伝える場となるだけでなく、開放的な草地広場と水遊び場が整備されることで、災害時に避難・活動が可能なオープンスペース、機能が拡充されることとなります。

4 練馬城址公園の開園状況について
 令和5年5月1日、図7で示すエリアを開園しました。四季折々の花が咲く花の丘や、連日こども達に大人気のユニバーサルデザイン複合遊具、遊園地「としまえん」の施設をオブジェにした思い出コーナーなどがあります。これらの施設は整備前に、設計案についてオープンハウスを行い、その際に頂戴した意見を反映させて整備した施設です。令和5年5月3日の開園記念イベントでは、ステージイベントやスタンプラリーなどが行われ、4万3千人の来園者で大いに賑わいました。

図7 練馬城址公園開園区域概要

5 おわりに
 本公園の事業は、遊園地跡地を公園として整備すること、整備や開園後の利用において区域内の民間施設と連携することなど、これまでの都立公園事業の中でも特殊な事例です。
 遊園地閉園を惜しむ人、公園の新規開園を楽しみにする人等、様々な思いがこの事業に向けられていることを意識しつつ、令和11年度の概成に向けて、多くの方々のご意見を伺いながら、利用者に喜ばれる公園整備を進めていきます。