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選手村の整備と東京2020大会後のまちづくり

 令和3年(2021年)に開催された東京2020大会。様々な選手の活躍に胸を躍らせた方も多いのではないでしょうか?その選手たちが滞在していた選手村の整備には、東京都が大きく関わっていたんです!そして、その大会も無事に終わり、今後は新たなまちづくりを進めていきます。

 東京都第一市街地整備事務所選手村基盤整備課では、選手村の整備に加えて、この大会後のまちづくりのための基盤整備工事を所管しています。今回は、選手村として使用されたエリアについて、その歴史や事業・工事をご紹介するとともに、それに携わる職員の業務内容についてもご紹介したいと思います。

晴海地区の歴史

 選手村として主に使用された場所は晴海五丁目であり、東京都の臨海部に位置し、都心から近く海に開かれた立地特性を有しています。東京2020大会の地理的中心に位置しており、効率的な選手輸送等の観点から選手村の敷地として選ばれました。

 月島・勝どきを含むこの周辺は、昔は海でした。明治政府が経済発展のために東京湾を整備する中で、隅田川河口の川底の土砂を使って埋立地を整備することとしました。明治時代以降、月島→勝どき→晴海の順番に埋め立てられ、選手村に使用された晴海五丁目が現在のかたちに埋め立てられたのは昭和39年(1964年)のことでした。

 平成25年(2013年)に東京が2020オリンピック・パラリンピック開催都市に決定され、晴海五丁目の大部分が選手村の一部になることが決定しました。その後、選手村を整備するための調整が進められ、『晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業』の認可を平成28年(2016年)4月に取得し、工事が始まりました。次の項目では、この再開発事業についてご紹介します。

晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業の概要

 市街地の開発には色々な手法がありますが、この地区では『市街地再開発事業』という手法を用いて整備しています。『市街地再開発事業』とは、都市再開発法に基づき、建築物と公共施設を一体的に整備することにより、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図ることを目的とした事業です。その中でも、権利変換方式と呼ばれる第一種市街地再開発事業という方式を採用しています。
東京都都市整備局HP 

本事業では、約18ha(東京ドーム約4個分)の敷地に道路や建物を整備しています。道路は幹線街路210mと区画道路1,570mを整備、建物は住宅棟(板状)21棟、住宅棟(タワー)2棟、商業棟1棟が建設され、住戸数は5,632戸となる予定です。
 また、『特定建築者制度』を採用し、敷地や道路の整備を東京都が、施設建築物の建設を特定建築者が実施しています。東京都が負担する整備費は約540億円であり、事業施行の期間は平成28年度(2016年度)~令和7年度(2025年度)です。

 本事業の特徴は、再開発事業の途中段階において、東京2020大会の選手用の宿泊施設として住宅棟を一時使用することなどです。次の項目では、東京2020大会に向けた選手村の整備についてご紹介します。

東京2020大会に向けた選手村の整備

(道路等の都市基盤の整備)

前述したとおり、本地区は昭和39年(1964年)に埋め立てられた場所です。高潮に対応できる安全なまちづくりを進めるために、まずは約2.5mの盛土をして、地盤をかさ上げしました。
 水道や下水道、ガスなどのライフライン施設は地中に設置するものですので、盛土を行う際にあわせて敷設しました。また、本地区は防災性向上や景観配慮のため電線類も地中化する計画となっており、ケーブルなどを入れるための電線共同溝もあわせて地中に敷設しました。その後、道路の舗装や街路灯などの設置を行い、東京2020大会を迎えました。

(建築物の整備)

 建築物については、特定建築者によって住宅棟(板状)と商業棟の構造躯体が大会前までに整備され、選手村の宿泊施設等として一時使用されました。選手村としての使用にあたっては、組織委員会によってその宿泊施設等の内装工事や選手村内の装飾などが行われ、地区全体が大会仕様に整えられました。

東京2020大会

 東京2020大会は、令和3年(2021年)7月23日から開催され同年9月5日に閉幕しました。大会の開幕に先立ち、選手村は7月13日に開村しました。組織委員会では、選手たちを迎えるための準備を行うとともに、大会後は片付け作業を行っていました。そのため、大会期間の前後を含めた約4か月間は、選手村の全範囲が組織委員会によって管理・運営されていました。

大会後のまちづくり

東京2020大会が無事に終了した後は、道路の仕上げ工事や住宅棟(タワー)の建築工事などを実施して、令和7年度(2025年度)の事業完了を目指しています。
 例えば歩道部の仕上げについては、これまでのアスファルト舗装(黒い舗装)をインターロッキングブロックで舗装したり、街路樹を植えたり、広場を整備したりすることで、多様な人々が交流し、生き生きと生活できる、大会後のレガシーとなるまちを整備していきます。また、都と特定建築者とで連携し、公共空間と建築敷地が一体となったまちづくりを進めることで、一体感のある魅力的な街並みや快適な歩行空間を形成していきます。

 建築物については、住宅棟(タワー)2棟が新しく建築される他、大会時に一時使用された住宅棟(板状)や商業棟についても特定建築者が改修を行います。
 また、多くの人々が入居するにあたり、今後、交通需要の増加が見込まれることから、暮らしの足を支えるため、地区内に東京BRTや路線バスの新たな停留所を設けるとともに、マルチモビリティステーション(複合的な交通広場)や船着場を整備していきます。

 さらに、本地区では水素をまちのエネルギー利用として先導的に導入し、実用段階では国内初となるパイプラインによる各街区への水素供給を実現するなど、脱炭素社会に向けた環境先進都市のモデルとなるまちの実現も目指しています。大会時には大会関係車両等へ24時間体制で水素を供給するなど水素エネルギーを活用した取組が行われました。このような大会時の取組をレガシーとして、新たなまちづくりに生かしていきます。
 住宅棟(板状)や商業棟、マルチモビリティステーション等は令和5年度(2023年度)の完成を目指して整備を進めており、工事に順次着手しています。住宅棟(タワー)が完成し、道路工事の仕上げが完了するのは令和7年度(2025年度)の予定です。

職員の業務紹介

東京都第一市街地整備事務所選手村基盤整備課では、記事でご紹介した『晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業』を進めるための様々な業務を実施しています。
 最もイメージしやすいのは工事監督の業務かと思いますが、その工事を発注するための設計業務も当課の職員が行っています。また、本地区では当課だけでなく多くの関係者が同時期にそれぞれ工事を実施するため、「バッティングしてしまって工事ができない!」ということにならないよう、常に調整をしています。
 現在、本地区では既に色々な工事を実施している最中です。工事のために通行禁止としている場所もありますが、都民の皆さまが通行できる場所も設けています。また、近隣の施設をご利用の方や、お住まいの方もいらっしゃいます。そういった方々が、安全・安心に生活できるよう、現場を常に維持管理しながら、目標とする時期までに工事をしっかりと終わらせて、誰もがあこがれ住んでみたいと思えるまちを整備するのが、私たちの仕事です。
 これから工事が本格化していく中、ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、職員一同がんばって業務に取り組んでまいります。

おわりに


 本当は、事業や工事の内容など、もっと色々とお伝えしたいことがありましたが、紙面の関係上、記載しきれなかったこともたくさんあります。
 事業のパンフレットや工事についてご案内している『晴海レガシー工事かわら版』なども発行していますので、是非そちらもご覧ください。

東京都都市整備局HP
東京都第一市街地整備事務所HP

(都市整備局 市街地整備部/第一市街地整備事務所)