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東京2020大会競技会場 有明アリーナの施設整備をご紹介

 財務局では、オリンピック・パラリンピック準備局からの委任を受け、東京2020大会の新規恒久施設等の5施設の整備を担当していました。
 このうち、東京2020大会でバレーボール・車いすバスケットボールの競技会場となった有明アリーナの施設整備概要をご紹介します。
 東京2020大会終了後は、最終的な建築物を完成させる改修工事を行ったのち、PFI(コンセッション方式)による㈱東京有明アリーナによって施設運営が行われます。

Ⅰ 有明アリーナの整備概要

■ 施設計画概要

 有明アリーナは、約15,000席の観客席(仮設席を含む)を有する施設であり、東京2020大会終了後は、様々な室内競技大会や各種イベントに利用可能なアリーナとなります。建築敷地は、東側、北側に有明親水海浜公園を挟んで東雲運河に面し、西側に都道(有明通り)、南側に区道に接している南北約235m×東西約155mの約36,500㎡の敷地となります。

 ゾーニングは、北側にメインアリーナ、南側にサブアリーナ及び交流広場を配置し、歩行者ネットワークや広場機能、海浜公園との連携等に配慮しています。
 また、敷地南側に隣接するマンションへの影響などを考慮し、北側の2階にメインエントランスを配置し、観客の影響が少なくなるように配慮しています。
 フロア構成は、1階にメインアリーナ、サブアリーナ、選手用諸室、記者室、機械室等を配置し、2~4階はコンコース及び観客席、5階は設備関係室などの配置となっています。

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配置計画

 外観デザインは、限られた敷地の中で、約15,000席の観客席を設け、客席断面構成に合わせ建物上部に対し下部を絞った立面形状とすることで、敷地面積の有効活用を図ると同時に、2 階レベルで周辺道路と連絡する外部デッキスペースを十分に確保しています。メインアリーナでは内部の必要な空間の確保に加えて、周辺環境に配慮した建物高さに抑制するため、屋根を懸垂形としています。この懸垂形の屋根により、必要な構造断面を合理的に確保した上で、空間気積が小さくなり、空調負荷が低減される機能上の効果も期待できます。また、反りのある屋根と外壁にリブ付きのPCコンクリート壁を用いて陰影のある仕上げとするなど、「和」のイメージを内包した日本らしさを表現する建築となるように工夫をしています。

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2階デッキより

 コンコースは、壁面と天井部に木ルーバーを設置し、メインエントランスにおいては、多摩産材を使用しています。

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メインエントランス

 メインアリーナの内装は、黒・グレーのモノトーンを基調とし、競技空間や木材が映える色彩計画としています。メインアリーナでは、屋根を構成するトラス梁下部のキャットウォーク下面に国産木材を使用しています。また、観客席上部の壁面にもルーバー状に国産木材を使用しています。視認性の高い天井面や壁面に効果的に木材を使用し、大規模空間の中でも、木の温かみを感じることのできる空間計画としています。
 アクセシビリティ対応においては、「Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン」及び「アクセシビリティ・ワークショップ」を反映し、トイレについては、車いす対応、男女共用、オストメイト対応など、各機能の分散配置を行いました。また、車いす席の各階分散配置や統一したサイン計画を行うなど、多様な利用者に配慮した計画としています。

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メインアリーナ

■ 構造計画概要

 建物構造の構成としては、メインアリーナ四隅のコアフレーム部、東西南北のスタンドを支持するスタンド部、2階外周のデッキ部、南側のサブアリーナ部を連結した架構となっています。
 メインアリーナ屋根は、主に四隅のコアフレーム部分と東西スタンド部分で免震装置を介して下部構造に支持されています。スタンド外周部分に位置して屋根を直接支持する斜め柱と段床受け斜梁を含む大梁は、納まりや施工の難易度の高い部材となるため、PCaとし、工場で製作しています。サブアリーナは、主にRCラーメン構造ですが、サブアリーナ屋根部は42mの大スパン鉄骨トラス構造となっています。

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構造モデル図

■ トラベリング工法(屋根架設)

 敷地が狭いため、限られた工期の中でメインアリーナの大空間屋根を構築する工法として、地上躯体と屋根の同時施工を可能とするトラベリング工法を採用しました。
 メインアリーナ屋根は、東西約120m、南北約130m、屋根の鉄骨平面トラスのトラス成は6.4m~9.0mあり、各柱頭部と免震装置等で接合しています。
 手順としては、南側のサブアリーナ躯体を先行構築し、その上部に設けた仮設構台上で、鉄骨の架設から天井の仕上げ工事、各種設備工事など天井部分の工事を実施しました。次に、その組み立てた屋根をメインアリーナの躯体上部に設置したレールに乗せ、推進ジャッキで送りだし、そのサイクルを10回繰り返し、屋根全体を構築しました。

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トラベリング工法イメージ

■ 設備概要

 「省エネ・再エネ東京仕様」を適用し、最新の省エネ設備や多様な再生可能エネルギー設備を導入しています。発電設備は、太陽光発電設備(200kW)、常用発電設備(コージェネレーションシステム、約210kW)を設置しています。照明設備は、全ての器具をLEDとし、適正照度制御、人感センサ制御を採用しています。
 また、空調熱源は、国内最大規模の地中熱利用ヒートポンプ(550kW)、太陽熱利用設備(100kW)を設置し、コージェネレーションシステムの排熱も利用しています。これらの再生可能エネルギー、省エネルギー技術の導入により、一次エネルギー消費量及びCO2排出量を、従前の標準的設備を利用した場合と比べ、約3割削減しています。さらに、下水再生水の採用や雨水のトイレ洗浄利用など様々な環境配慮に努めています。

Ⅱ おわりに

 財務局では、都立高校や都立病院など都立施設を所管する各局からの委任を受けて行う工事や財務局で所管する都庁舎の改修工事などを行っています。また、全庁的な技術管理部門として各種基準類などの整備も行っています。財務局は、今後も、都政の重要課題を踏まえた都立施設の整備に取り組んでいきます。(財務局建築保全部)