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都営地下鉄における駅の大規模改良    ~大江戸線勝どき駅の事例~

 都営地下鉄では、エレベーター増設によるバリアフリー推進、ホームドアの設置、駅のリニューアルやトイレ改修など、使いやすい駅を目指して様々な改良を行っています。
 その中でも、特に大規模な改良を行った、大江戸線勝どき駅の事例を紹介します。

◆都営地下鉄初のホーム増設を行った大江戸線勝どき駅

 大江戸線勝どき駅では、開業後に利用者が急増し、駅構内が著しく混雑するようになりました。
 このため、ホームの一面増設と、コンコースの一体化、階段・エスカレーターや地上出入口を増設する大規模な改良を行いました。

改良後の勝どき駅構内図
増設した新ホーム
コンコース一体化部分にできた改札口

◆勝どき駅改良前の混雑状況

 勝どき駅周辺では、大江戸線環状部の建設と同時期に再開発が進行し、開業後、利用者の急増で駅構内が著しく混雑するようになりました。

改良前の混雑状況

 勝どき駅は、ホーム幅員が狭いこと(幅=約8m)に加えて、コンコースが2か所に分断しており、コンコース間の移動ができない、という構造的な問題を抱えていたことから、大規模改良の実施に至りました。

改良前の勝どき駅構内図

◆勝どき駅改良のポイント~①躯体増設の検討

 ホームを増設することで、ホーム面積を単に増やせるだけでなく、両国方面行きの列車と大門方面行きの列車の乗り場を分けることで、人の流れをスムーズにすることができます。
 それには、既設の駅構造物の横に新たなホーム部分の構造物を新設し、既設構造物の側壁を撤去・一体化する必要があります。
 既設部分には他の構造物や土被りの荷重が掛かっており、この状態で新設構造物を接続し、既設構造物の側壁撤去を行いますので、十分な検討を行わないと既設構造物に過大な応力が発生し、損傷する危険があります。
 検討の結果、新設構造物を掘削した地山に直接築造すると、既設構造物の部材が許容応力度を超えてしまうため、新設構造物の床版下を地盤改良して、既設構造物の応力増加を抑える対策を行うこととしました。

新設構造物と、既設部分の損傷対策

◆勝どき駅改良のポイント~②コンコース一体化の検討

 もともとコンコースが2か所に分かれていたのは、晴海通りに清澄通りをアンダーパスする計画があり、この空間を空けておくためでした。
 駅改良・コンコース一体化に当たり、この空間の使用について関係部局と協議しましたが、アンダーパス計画は廃止になっていないので、この空間を残してコンコースを構築することになりました。
 このため、一般的には鉄道構造物と道路構造物は別々に構築しますが、ここでは、新たに構築するコンコースの上床を、将来アンダーパスを作る際に道路の下床として使用できる構造とし、限られた空間でコンコースとアンダーパスが両立できるよう計画しました。
 この他にも、勝どき駅付近には、ゆりかもめの延伸や首都高速晴海線の計画があり、将来建設することになった場合に支障しないよう、必要な載荷条件や空間確保について考慮しました。

コンコース一体化部分と晴海通りアンダーパスの関係


◆計画策定~工事の実施

 供用中の駅で改良工事を実施するためには、列車の運行やお客様の安全を確保することはもちろんのこと、ご利用中のお客様の不便を最小にしつつ、様々な部署が行う工事が円滑に実施できるよう調整することが大切です。
 大規模な改良工事では、駅構内に設置されている様々な設備に影響することから、駅務や電気、信号通信、建築、土木など様々な職種の関係者が集まるPTを作り、検討・調整を行いながら、改良案を取りまとめました。

 このような過程を経て、平成23年8月に工事着手し、平成31年2月に新ホームの供用が開始されました。
 工事の流れについては、交通局のHPでも紹介していますので、こちらもご覧ください。
https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/subway/kanren/improvement/process.html#a7

◆さらなる改良へ

 ホームの増設やコンコースの一体化は終わりましたが、駅利用者は工事着手時(平成23年度)の7.6万人から、令和元年度には10.8万人にまで増え、さらに周辺開発も進行しております。このため、さらなる改良の予定もあります。
 その一つが、再開発地区からの連絡通路接続です。

連絡通路接続予定図

 勝どき駅の大規模改良は完了しましたが、現在、浅草線泉岳寺駅で大規模改良工事に着手しています。こちらでも、様々な工夫を行いながら計画・設計・施工を行っていますので、機会があれば紹介いたします。