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オフィス・通勤時の感染予防!換気の専門家にインタビュー②

東京iCDC事務局です。
前回は、自宅での換気のポイントについて伺いましたが、今回はオフィスの換気・通勤時に気をつけることなどについて、早稲田大学建築学科教授(日本建築学会会長)の田辺新一(たなべ しんいち)先生と、工学院大学建築学科教授(空気調和・衛生工学会新型コロナウイルス対策特別委員会委員長)の柳宇(やなぎ う)先生に伺います。

noteの最後に、ポイントをまとめています。是非ご一読ください!

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<田辺先生、柳先生の前回のインタビュー記事はこちらから>

1. オフィスでの換気のポイントは?

―田辺先生、柳先生、よろしくお願いします。寒い季節は換気がおろそかになりがちです。多くの人が仕事をするオフィスの換気のポイントは何でしょうか。
(田辺先生)
オフィスでの換気のポイントは、一人当たりの必要換気量を満たすことです。換気量の目安は、1人当たり 30㎥/hです。
感染対策のためには、室温や湿度に気を付けることも必要ですね。具体的には、室温は18℃以上、湿度は40%以上に保ちましょう。
特に会議室、休憩室やバックヤードなどの狭い空間では注意しましょう。

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(柳先生)
必要換気量は、二酸化炭素濃度測定器を使って簡単に「見える化」できます。
二酸化炭素の濃度が1,000ppm以下であれば、30㎥/h確保できているので、1,000ppmを超えていれば、換気量を増やすか、できなければ室内に滞在する人数を減らしましょう。
―会議室や執務室等で、密になっていないか、簡単に確認できますね!

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2.窓を開けられない場合の換気方法

―都内には、高層ビルなど窓が開かないオフィスビルもたくさんあります。そういったビルでは、どうやって換気をすればいいのでしょうか?
(田辺先生)
窓の開かない部屋などでも、機械換気を利用することで換気を行うことは可能です。ビルによって設置される換気設備が異なるので、詳しくご紹介しますね。

① 中央式空調の換気
冷暖房と一緒に換気が行われるので、稼働するだけで一人当たりの換気量を確保できます。
また、ビル管理法における特定建築物(※1)では、二酸化炭素の濃度が1,000ppm以下に管理するよう基準が定められており、定期的に検査が行われています。
★機械換気の例 ~中央式空調~

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② 個別分散空調の換気
(田辺先生)
エアコンによる冷暖房と、換気が出来る装置(「全熱交換器」等)をそれぞれ付けて換気を行っているビルもあります。
ほとんどのエアコンは、室内の空気を循環させるだけで換気する機能がありません。エアコンスイッチと換気スイッチが別の場合があるので、両方のスイッチが入っているか、確認してください。

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―スイッチの確認はすぐできますね!他にも注意点がありますか?
(田辺先生)
給排気とエアコン位置の確認も重要です。下の写真と図をご覧ください。

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給排気口とエアコンの位置が違うので、天井からビニールカーテン等で空間を仕切ると、エアコンの位置によっては、部屋全体の空気が換気されません。
仕切りが必要な場合は、換気装置とエアコンの位置を確認してから設置しましょう!

(柳先生)
機械換気を適切に行うには、給気口や排気口が塞がれていないことも大切です。換気ファンを運転しても給気口が閉まっていないか、物などで塞がれていないか確認してください。
また、窓開け換気が有効です。常に5㎝~10㎝窓を開けておけば、一般的なオフィスでは必要換気量の30㎥/hが確保できます。
―わかりました!早速確認してみます。

3.通勤電車での換気は大丈夫?

―オフィスに行く前の通勤電車って、混んでいて感染しないか心配です。各鉄道会社では、以下のような取組を行っていますが、これで対策は十分でしょうか?

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(田辺先生)
電車に乗るとき、皆さん不織布マスクをされているのは、よいことですね。
電車は窓開けやドアの開閉により、基本的には換気できています。
但し、感染のリスクを下げるためには、引き続き、時差通勤を進めるなど混雑を避けることにも気をつける必要があります。
―換気だけでは、感染のリスクをゼロにはできないのですね。引き続きマスクや手洗いが重要ですね!

(田辺先生)
そうですね。電車内では、接触感染もリスクとなりますので、マスクと手洗いは非常に重要です。
下の写真は模擬電車内で実験を行った時の写真です。この実験では、模擬電車内において、手が顔面を接触する頻度や、顔面を接触する行動に影響を与える要素を分析しました。

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分析の結果、以下のことがわかりました。
 ・1時間あたりの顔面への接触頻度は、平均18回でした。さらに、口や  
  鼻、目などの粘膜面への接触頻度は平均8回でした。
 ・電車においてつり革や手すりをつかむ習慣があり、電車利用後に手指衛
  生を実施しないと回答した人ほど顔面接触頻度が高い傾向がありまし
  た。
―つまり、つり革や手すり等様々な人が共用する物を介した感染のリスクがあるということですね。接触感染を防ぐためにも、改めて手洗いや消毒、マスクをすることが大切ですね!

(田辺先生)
はい、換気に加えて、車内ではきちんとマスクをして会話は控えめにし、飛沫を出来るだけ飛ばさないようにしましょう。また、接触感染の予防にも留意しましょう。
―はい、わかりました。田辺先生、柳先生、貴重なお話をありがとうございました。

【まとめ】オフィス・通勤での換気のポイント

★オフィスでは、窓開け換気・機械換気・二酸化炭素濃度の見える化を!
 ・換気量の目安は、1人当たり 30㎥/h
 ・二酸化炭素濃度の見える化で密になっていないか確認。
 ・二酸化炭素の濃度が1,000ppmを超えている場合には、
  換気量を増やすか、できなければ室内に滞在する人数を減らす。
 ・エアコンスイッチと換気スイッチが別の場合は、換気のスイッチをオン   
  に!
 ・オフィスでも窓開け換気が有効。
★通勤電車でも換気は極めて有効!
 ・換気だけではなく、不織布マスクをすること、オフピークで混雑を
  避けることや、大声を出さない、手洗いの徹底等も大事

~おわりに~
オフィス・通勤電車での換気は非常に重要ですが、あくまで基本的な感染対策のうちの一つです。
感染が広まりやすい冬は特に、三密の回避、マスク着用、手洗い消毒等、基本的な感染対策の「足し算」で、効果的な感染予防を続けましょう!

<参考リンク>
◆SDGsスマートウェルネス住宅研究企画委員会 「建物の感染対策チェックリスト(オフィス版)」
https://www.jsbc.or.jp/swo/files/check_tool_v1_20210602.pdf
◆鉄軌道事業における新型コロナウイルス感染症に関するガイドライン(鉄道連絡会) 
https://www.mlit.go.jp/common/001382037.pdf
◆「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf
◆東京都(制作:多摩小平保健所)(東京動画) 
「風を通して いい暮らし ~みんなでやろう 正しい換気~」
https://www.youtube.com/watch?v=xVVJwhqlEHw



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