昇進に関して - パートナーの動き方

前回のエントリでプリンシパルからパートナーへの昇進に関する留意点を述べた。関連してプリンシパルからの「プレイスタイル」について述べていく。私はプリンシパル後半およびパートナー前半の「プレイスタイル」は大まかに
●大チーム所属型
●エキスパート型
●クライアントリレーション型
の3種類があると思っており、それぞれ一長一短があると考えている。

まずは大チーム所属型。これは安定的にプロジェクトを依頼する大口のクライアント企業に仕えるチームに所属するというタイプである。この場合はトップエグゼクティブはシニアパートナークラスが関係性を構築することになりプリンシパルクラスだと、事業部長や鍵となる部署(例えば経営企画の部長)といったn-1、n-2クラスのクライアントと関係構築することになる。大口クライアントで安定的にプロジェクトが生じているため、プリンシパルもアソシエイト・マネージャー時代からデリバリーを通じて自然に関係構築ができる利点もある。特にマネージャーやアソシエイト時代から当該クライアントのプロジェクトを手掛けていると相当クライアント企業内のことは詳しくなり、結果的に付加価値を提供しやすくなる。(たまに入社して年次の浅いクライアントよりもクライアント企業に関して外部のコンサルタントの方が詳しい場合もある。)

このタイプは特に大きいファームでは最も自然な動き方になる。シニアパートナーやパートナークラスからシニアクライアントへのアドバイザリーのやり方を学びつつ、自分が関係を構築するn-1, n-2クラスのクライアントと一緒にそれぞれの組織で昇格していく形となる点も動きやすい。一方でいくつかの短所もある。このモデルは特定クライアントに割と依存する方式なので、何らかの事情でこのチームがなくなったときに次の飯のタネを見つけるのに苦戦するということがあり得る。ある皮肉屋のパートナーが「だいたいプリンシパルでパートナーの昇進を考え始めた段階で所属する大チームが消える」と言っていた。これはあながち間違いではないと思っている。結局アソシエイト後半くらいからその時点で大きくなり始めて2-3年の大チームに所属し、その中で昇進していくとプリンシパルの頃には大チームができて7-8年となる。その頃になるとクライアントの経営体制が代わりアンチコンサルの社長になったり、あるいはシニアクライアントと良好な関係を築いていたシニアパートナーがリタイアして引き継ぎがうまくいかなかったりしてチームが大幅に縮小することがある。そのときにこのタイプの場合は当該クライアント企業(とその業界)に詳しいことがある種の差別化要因だったのでなかなか他の状況で活かしにくくなる。(そもそも直接の競合のプロジェクトはできない。)加えて現実問題としてこのように統率のとれた大チームに所属するのは安定はしているが自由度が低く単純にやや窮屈な思いをすることもある。これは一番多い動き方ではあるが面白くはない(ことが多い)タイプではある。

エキスパート型。これはわかりやすい。ある業界ないしテーマに詳しいタイプである。このタイプのプリンシパル/パートナーは初対面のクライアントに対しても得意のテーマに関しては迫力を持って話せるため、社内の別のパートナーから当該テーマで彼ら・彼女らのクライアントへの支援も手伝って欲しいという要請が社内で来やすい。そして専門性を武器にクライアントとの信頼関係を築き、そのあとで幅広い経営課題にも関わる、といったやり方が成り立つ。一方でエキスパート型の場合の短所はクライアントとの広範な関係構築が築きにくいという点は挙げられる。また稼働の安定という問題もある。結局のところクライアントにとって同じテーマが常に経営課題になることは少ないためクライアントからはあくまでも専門家と見られより広範な相談をする”Trusted advisor”とは見られにくい。また「社内受注」したような場合はやはりクライアントの直接の相談相手にはなりにくく、結果的にやや便利屋で終わってしまう傾向がある。そのためパートナー昇進の際は「この人は結局、どのクライアントから本当に信頼されているのか?」という答にくい。また同じお題のニーズが安定して発生し続けることは少ないため稼動もやや安定しないという課題もある。これは大チーム所属型の次に多いタイプな印象がある。

クライアントリレーション型。これは特定のクライアント企業の中でコンサルタントに仕事を発注できる立場にある人と関係性を持っていることである。この際、最終発注責任者ではなく事実上の意思決定をしている人でもいい。このタイプの人に多いのは中途入社組で、日本の大企業のシニアな人たちとの人脈を妙に持っているような人で、若いのに「偉いおじさんたち」に可愛がられるタイプである。このモデルはパートナーとしては理想的ではある。先に述べた通りパートナーになる上で仕事を依頼されるようになることが一番の課題であるが、それがプリンシパルのうちにできていれば申し分ない。自分が直接クライアントとの関係を握っているため単純に仕事としても面白い。ただ一方でこのタイプにも昇進する上ではいくつかの懸念はある。最大の懸念は昇進の査定時に「この人は何故だかよく判らないが仕事は取れる。しかしそれは本当に再現性のあるものなのか?」あるいは「この人は専門性があるのか?」といった点を見られることがある。これは最も少ないタイプではあるがたまに見かける。

いずれにせよどのタイプを目指すことによって動き方が変わるため、プリンシパルの段階でどの動き方をするかは意識してみるといいと思っている

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