ポジショニングとケイパビリティの雑感

古典的な経営学の世界では流派は大きくはポジショニングとケイパビリティに二分されると言われている。前者は超過収益に源泉は業界における自社の立ち位置にあると由来するどちらかというと外部環境を意識した考え方であり、後者は競争力は組織能力に由来するとする考え方である。そして二つの流派の巨頭であるポーターとバーニーはそれぞれ、自分の流派が重要であると主張している(らしい。筆者は経営学を学んだことはないので詳細は理解していない)。要するに「ケイパビリティなんて真似できるから、差別化はポジショニングである」「いや、ポジショニングこそ外部から見ても理解できるから、真似され、結局はケイパビリティが大事だ」といったいうのが両者の主張のようである。

コンサルティングにおいても前者は戦略アジェンダ、後者はオペレーションアジェンダや組織アジェンダと言われており、やはりパートナーでも戦略系パートナー、オペレーション系パートナーと流派は分かれている。もちろんそもそもどちらが重要なのかという問いはナンセンスであり、答えは「どちらも大事」といったところだと思っている。経営コンサルテxイングに従事している身としては、戦略がはまって大きな利益を上げたり、あるいは失敗することで業績不振に喘いでいる企業も見たことがあるし、逆に極めてユニークな企業文化と強力なオペレーション能力を有しており高い利益を上げている会社も見たことがある。なのでどちらも確実に存在しており、どちらも大事だというのが素朴な実感である。

より重要なのは両者の視点を使い分けることであると考えている。特に超過利益を出している会社を目の当たりにしたとき、つまり資本コストを上回るリターンを挙げている会社があったとき、それは何に由来しているのかを理解することは極めて大事である。経済学的に「効率的」な市場であれば資本コストとリターンはピッタリ一致しており、逆にそうではなく継続的に超過利益を出しているのであれば、そこには何らかの理由が存在することになる。そしてそれに何らかの形で関わる身であれば、その理由の理解に努めるべきである。

そしてこれらは結局のところはざっくりと分けるならばポジショニングとケイパビリティの二つに起因としていると考えるべきだろう。(もちろんどちらの場合もある。)従ってその二つの視点を使い分けることが大事である。ただこれは案外と意識しないと難しい。例えばコンサルティングファームに数年間以上在籍しているコンサルタントであれば、どうしても色がつきどちらかの視点に偏ってしまう傾向がある。いわゆる「金槌の使い方が上手いと全てが釘に見える」問題である。筆者自身も最初の数年の経験でかなり視点が偏ってしまい、もう一方の視点が欠けていることを20代後半で(幾らかの失敗を通じて)痛感し、それ以降は相当意識して思考の癖を矯正したことがあった。大事なのは両者の視点を使いこなせることなのである。

経営学の分野ではこの問題はかなり古典的であり、さまざまな意見があると思うが、実務に携わる人であれば、超過利益の源泉は大きくは二つあり、そのどちらの視点でも物事を見られるようにすることが大事だと思っている。

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