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多摩市CIO×稲城市CIO×都CIOの 座談会を実施しました!

東京都・区市町村CIOフォーラムにおける活動の一環として、都内各自治体CIO等へ「東京都・区市町村CIOフォーラムマガジン」を発行しております。今回は、マガジンに掲載した内容を一部公開します。
第2回は、「多摩市CIO×稲城市CIO×都CIO座談会」をお届けします!

※CIO(情報統括責任者):組織の情報戦略における最高責任者
※東京都・区市町村CIOフォーラム:都CIOと各区市町村のCIO(主に副首長)等が相互に密接な連携と協力を深め、電子自治体の構築や行政施策へのICT活用等の諸課題に関して、テクノロジー情報や導入ナレッジの共有化を通じて、都及び各区市町村のDX施策推進に寄与することを目的として設置

令和3年8月31日に、「東京都・区市町村CIOフォーラム第2回座談会」として多摩市CIO、稲城市CIO及び都CIOの対談を実施しました。

参加者(敬称略)
多摩市CIO(副市長):浦野 卓男
多摩市企画政策部長:藤浪 裕永
多摩市企画政策部情報政策課長:竹田 昂士
稲城市CIO(副市長):石田 光広
稲城市企画部長:芦沢 政美
稲城市企画部ICT推進課長:稲垣 裕也
都CIO:宮坂 学

行政手続のオンライン化について

オンライン化の第一歩:ローコードツールの活用

都CIO:宮坂(以下「宮坂(都)」)

今日は区市町村で行政のデジタル化を進めていらっしゃる皆様とお互いに情報交換できればと思っています。よろしくお願いします。まずは多摩市様から行政手続のオンライン化について、特に力を入れている取組を伺ってもよろしいでしょうか。

多摩市CIO:浦野(以下「浦野(多摩市)」)
行政手続オンライン化の流れは大きく2つあると思っています。1つは厳格な本人確認を要する、マイナポータルを利用してオンライン手続きをするもの、もう1つは各種申請やパブリックコメント、アンケートのような自治体独自でオンライン化できるもの。多摩市では後者のような、ローコードツールを利用した自治体独自のオンライン手続きを進めることで、住民の方に利便性を感じてもらえるように努めています。

宮坂(都)
ありがとうございます。マイナポータルのお話がありましたが、利用するにあたって何かボトルネックとなるようなことはありますか。

浦野(多摩市)
マイナンバーカードの普及、特に人材や場所の確保に課題があります。マイナンバーカード自体は10年使えますが、カードに格納されている電子証明書の有効期限は5年であり、更新が必要です。この対応には、人の手配、場所の確保等に相当な作業を要します。

宮坂(都)
ありがとうございます。次に、稲城市様お願いします。

稲城市CIO:石田(以下「石田(稲城市)」)
先ほど話題に上がったマイナポータルに関しては手続きの案内程度にとどまっています。そこで、来年度に向けてローコードで使いやすいシステムの導入を検討しています。

宮坂(都)
なるほど。手続のオンライン化に関する課題として、利用するツールの使いやすさの追求が挙げられるということですね。

石田(稲城市)
そうですね。ツールを自然に使える環境整備が必要だと思います。国や都が共通化・標準化を進めて環境を整えてもらい、市町村はユーザーとして活用する側に立つと普及も進んでいくのではないでしょうか。

宮坂(都)
皆様のお話を聞いていても、やはり共通化すべきものは共通化していく必要があると思いました。CIOフォーラムもそうですし、こういった場でも皆様からのご要望を吸い上げていきたいと思っています。


1つのツールを一緒に育てる

宮坂(都)
都では、デジタルサービス局を作ったときに、お客様の定義を3つ定めました。1つ目は都民や企業のようなユーザー、2つ目は都職員、そして3つ目が皆様のような区市町村職員です。お客様には良いサービスを提供してフィードバックをもらうことが重要です。是非一緒に話し合いながら、共通化できるものは共通化していきたいと思っています。
システムの共通化・標準化について何かご意見ありますか。

多摩市企画政策部情報政策課長:竹田(以下「竹田(多摩市)」)
基幹系システムに関する共通化・標準化の対応を完了した後は、マイナポータルを前提としない手続についても検討していきたいと思っています。各自治体共通の業務を対象として共通化していくというのも効果的ではないでしょうか。

稲城市企画部ICT推進課長:稲垣(以下「稲垣(稲城市)」)
本人認証が不要な手続については、ローコードツールを用いると簡単に作れて市民にオンライン手続の提供が進むと思います。また、集計などのバックヤードが効率化され、職員にとって使いやすい環境が構築できると考えています。市の職員は人事異動がありますので、市民向けにも庁内向けにも使えるツールがあると庁内共通基盤として有益なのかと考えております。

宮坂(都)
都庁はやっとローコードツールを使い始めたのですが、ローコードツールを使う自治体が非常に増えてきましたよね。

竹田(多摩市)
去年は試行的に導入し、正式導入は今年ですが、今年5ヶ月でフォーム作成数が120、回答件数も2700くらい集まっていて、非常に成果が出ています。
職員アンケートを取る際にもフォームを使っています。例えば「食堂はいるのか?」というテーマについて考えようと思ったとき、「お昼何食べましたか?」とか「どこに食べに行っていますか?」とか、職員のランチ実態アンケートを気軽に取ることが可能です。このようにカジュアルな使い方もでき、かつローコードなので、若い職員はすんなり理解してくれます。この点も利用の視野を広げられる可能性のあるところです。

宮坂(都)
そんなにカジュアルな使い方ができるのですね!
稲城市様もローコードツールの導入を検討しているということですね。今後様々な区市町村で採用していくと思いますが、選定に関しては2通りあると考えています。1つは都と区市町村で話し合ってツールを選定し、共通化・標準化していく方法。もう1つは各自治体で事情や活用方法が異なりますので、個別に選定していく方法。現場の皆様は、選定方法についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

稲垣(稲城市)
便利なツールが出てきているので、市民と近しいものは各自治体レベルで個別に選別していくのもいいのではないかと考えております。その方が地域の実情や職員のITスキルを考慮したツールの選定が実現できるのかと思っています。反対に、マイナポータルのような全国的に使えるものは国に合わせた共通化・標準化が必要だと考えています。

宮坂(都)
ありがとうございます。せっかく共通化をして皆様で使うならいいものを作りたいと思うのですが、どうやってニーズを把握していくのかが課題だと認識しています。

竹田(多摩市)
ローコードツールユーザーの視点からすると、例えば、多摩市で作ったフォーマットを稲城市様がいい意味でそのまま流用する、その逆もできるのかと思っています。いわゆる基幹系システムに対する共通化・標準化の考え方をそのまま当てはめるのではなく、一つのツールを選定した上で一緒に作っていく標準化です。用意されたものを作るのではなく、一緒に作り上げていけるようなことができるといいのかと思います。

宮坂(都)
おっしゃるとおり、一つのツールを選定することによって自治体間の横展開がやり易くなると思います。皆様が現場で使っていて、「これは他の自治体の人も使えるんじゃないのかな」といったツールがあれば、是非情報提供していただいて我々も検証したいと思います!

稲城市会議

チャットで変わったテレワーク環境

全職員がチャット利用できる環境

宮坂(都)
話は変わりますが、皆様のテレワークの状況と課題についてお話を伺ってもよろしいでしょうか。

浦野(多摩市)
コロナの関係でチャットを導入して、いつでもどこでも情報が入ってくるようになりました。家でもお風呂でもトイレでもどんどん情報が入ってきます。一方で、いつでも情報共有ができ、緊急の相談に乗れるのはメリットだと思います。今では全職員がチャットを利用できる環境になっています。

宮坂(都)
すごいですね!

浦野(多摩市)
反面、労務管理の面では課題があると思います。また、住基、税、福祉といった基幹系業務などは自宅ではできないといった部分も課題です。そういった課題はありつつも、テレワーク環境の整備を進めてきたといったところが現状です。

宮坂(都)
ありがとうございます。稲城市様はどうでしょうか。

石田(稲城市)
テレワーク導入については、本来は働き方改革の一環でスタートしていましたが、コロナへの対応が後押しになり急速に進みました。また、チャットに関しても、本来は災害対応やコロナ対策に関する早い情報共有を目的に導入しました。使ってみると非常に使いやすいということで急速に導入が進み、今では全職員が利用し、様々な活用をしています。

宮坂(都)
チャットを導入した後の組織の仕事の仕方がどうなるかすごく気になっています。メール中心のコミュニケーションとチャット中心のコミュニケーションで、特にここが変わったというところはありますか。

石田(稲城市)
やはりタイムリーに情報共有できるところですね。メールは大容量ファイルを添付するときにはいいですが、短い時間で情報共有してすぐに動きたいときにチャットは非常に便利だと感じています。

浦野(多摩市)
スピード感に加えて、いつでもどこでも利用できるのがいいですね。チャットはスマホにくるので、自席で利用している端末を持ち帰る必要がなくなりました。先ほど申し上げた通り労務管理上の課題もありますが、この状況下では有効に活用する必要があると思います。

宮坂(都)
我々も都庁の情報システムについて検討を進めていますが、キーワードになるのはコミュニケーションの基本をメールからチャットへ、パソコンからスマホへ変えていくことです。この2つを進めることで、情報環境として劇的な進化が起きるような気がしています。まさに皆様が先に取組を進められていて、お話を聞けて大変参考になりました。

都副知事

AIの利活用


これからは「民助」の時代

宮坂(都)
AIの利活用について是非伺ってみたいです。稲城市様はどうですか。

石田(稲城市)
保育所の入所判定でAIを活用していて、現場で非常に評判がいいですね。事務の効率化・結果通知の高速化が非常に重要で、そこに導入効果があったと思っています。

宮坂(都)
判定の仕組みは他の自治体でも使える可能性がありそうですか。

石田(稲城市)
我々も先進自治体の事例を活用して導入しました。そういった点では他の自治体へ導入が可能であると考えています。

宮坂(都)
我々も含めて、各自治体で行っている試行とか実証の成功事例は共有したいですよね。
多摩市様はAIを使った音声対応を導入したと伺ったのですが、導入後の状況を教えていただけますか。

浦野(多摩市)
コロナのワクチン接種に関して、AIでの音声対応を導入しました。当初は一件予約するのに時間がかかったり、対応完了となる前に他の方の予約で埋まってしまったりとあまり力を発揮できませんでした。しかし、予約枠が十分になって来るにつれ、24時間対応できるという面も含め有効に機能したかと思います。AI導入は民間から提案があって形にできました。そういう点でも好事例だと思っています。
これは私の持論ですが、「自助」「共助」「公助」に加え、これからは「民助」の時代だと思っています。そういった視点から公民連携係という組織を作りました。今までは、提案ごとに民間がそれぞれの組織にアプローチしなくてはなりませんでした。しかし公民連携係を作れば、「どこに活用するかは別にして何かやりたい!」という声が聞ける。このような入口を作ったことが今回の事例を導入できた一因だと思っています。

宮坂(都)
素晴らしいですね!今までは提案する民間の方々が担当部署を探さないといけなかったですからね。我々自治体に入ってくる情報量も大きく変わりそうですね。

多摩市会議 (1)

DX人材について


色々な共通化の可能性

宮坂(都)
最後になにかフリーテーマでありますか。

浦野(多摩市)
人材については大きな課題だと思っております。定期的な人事異動がある中で内部のICTレベルをどう担保するか、外部の人材を登用する際の費用や適性の判断が難しいと思っています。東京都において確保した人材を区市町村でも活用させていただき、費用も負担し合うという取組も良いのではないかと思っています。

宮坂(都)
ありがとうございます。稲城市様はどうでしょうか。

石田(稲城市)
一つ目はICTスキル全般ですね。市職員のスキルもそうですし、市民がサービスを活用できるかどうかも重要な観点だと思います。そういった意味では市民へのサポートの必要性を感じています。
もう一つはやはり人材です。内部だけでは解決できない課題は外部人材の登用により対応することも必要だと思っています。業務プロセスの抜本的な見直しからやるべきで、ICTスキルに加え、業務分析スキルが必要です。今は縦割りの視点で物事を考えがちですが、組織横断的な実施を検討するということが益々大事になってくるのではないでしょうか。

宮坂(都)
貴重なお話をありがとうございます。今日のお話を聞いていて、国と区市町村の間の中間領域の共通化がとても重要であり、このような領域について議論ができる場や人間関係を丁寧に作っていきたいと改めて思いました。人間関係は研修などを通じて都と区市町村同士の現場の職員が繋がる環境を作ったり、自治体をまたいでチャットでやりとりができるコミュニケーション環境を作ったりしてみたいですね。
また、AIの話でもあったとおり、成果の発表を通じてノウハウの共通化や、都で採用した人材が皆様のところにお手伝いに行くような人材の共通化、またはデータの共通化ですね。そういった色々な共通化の可能性があるのだと、大変参考になりました。ありがとうございました。

―ありがとうございました。活発な意見交換をしていただきまして感謝申し上げます。お忙しい中、貴重なお時間を頂戴しまして、ありがとうございました!

本取組については、今後も月次で継続して実施する予定です。次回もお楽しみに!

過去の座談会はこちら!
第1回CIO座談会:「東京都と区市町村のCIOが連携し、DXを推進:CIOフォーラム対談 with調布市」

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