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聴覚障害者の方々へデジタルの利用を勧めるために~東京都と八王子市の取組~

 東京都と区市町村が連携して進めている”デジタルデバイドの是正”に向けた自治体モデル事業について、聴覚障害者向けのデジタルデバイド是正支援を八王子市の皆さんと実施いたしました。今回はその取り組みについてご紹介いたします。

1:聴覚障害者向けのデジタルデバイド是正支援とは

 八王子市では、聴覚障害者に対し、情報保障の手段として、受診時やイベント参加時等にボランティアセンターを介して手話通訳者および要約筆記者(話の内容を要約しその場で文字にして伝える)を派遣しています。しかし、このコロナ禍の中で対面での対応が感染リスクとなり、なかなか利用しにくい現状がありました。

通訳を対面での利用する際のイメージ

 このような中で八王子市では、スマートフォンやタブレットで利用できるオンライン通訳のツールを導入しました。利用者は事前予約を行い、端末の画面をテレビ電話のように利用し、遠隔地にいる通訳者を介して、会話をするものです。このオンライン通訳ツールは、手話通訳、要約筆記どちらにも対応していて、お互いに顔の表情もわかるよう工夫されており、コロナ禍であっても、安心してサービスを受けることができます。

オンライン通訳ツール利用時のイメージ

 オンライン通訳ツールの普及に向けて検討を進める中で、一部の聴覚障害者はスマートフォン等をお持ちでない、十分に活用しきれていない、または、オンラインサービスで対面と同じようなサービスを受けられるか不安に感じている方がいらっしゃる、という状況が見えてきました。また、通訳者も、今まで対面で実施していた通訳を端末の操作をしながら行う、また、通訳をしても利用者側の端末が消音設定になっており通訳を届けたい相手に通訳者の声が届かない等、試行錯誤の状況にありました。

 今回この課題を八王子市から東京都にいただき、オンライン通訳ツールの普及促進に向けて、八王子市福祉部障害福祉課・デジタル推進室と東京都デジタルサービス局が一丸となって課題解決に取り組んでいくことになりました。具体的には、聴覚障害者向けに八王子市内各施設でスマートフォンの利用体験をしていただく教室をメインに実施しつつ、その場に参加いただく通訳者の皆様にも、事前に専門用語やアプリの説明を実施し、最終的には使用した教材や開催した気づきを資料として公開し、同様の取り組みを他所に広げていくことを目標としました。

オンライン通訳ツールの円滑な利用に向け、利用者と通訳者両方に支援

2:手話通訳者・要約筆記者に対する支援

 まずは手話通訳者・要約筆記者に対して、本事業の目的の説明から実際に教室で説明する内容に触れていただきました。

手話通訳者・要約筆記者向けの説明会

 使い慣れていない方も多く、また専門用語について聞かれたときのために意味を理解したく参加されている方もいました。教室実施の全体的な流れやイメージについても質問があり、熱心に参加いただけました。また私たちも実際に手話通訳をどのようにされるのかタブレットを介した例を見せていただきました。

オンライン通訳ツールを利用した手話や文字での会話

 実際に会話をされているのを見て、聴覚障害者の方にとって重要なコミュニケーションの手段であることを改めて認識しました。筆者は普段、手話通訳自体見慣れていないので興味津々、凝視してしまいました!確かに、スマートフォンに慣れることができたら、このツールを使ってどこでも気軽にコミュニケーションとれそうです!

3:聴覚障害者向けの教室開催と気づいたこと

 通訳者の皆様にもある程度慣れていただいたところで、次は聴覚障害者向けのスマートフォン教室の開催です!大変多くのご応募をいただきましてありがとうございました!聴覚障害者向けの教室開催は全国でもあまり例が無いもので、開催に必要な機材や進め方を手話通訳・要約筆記者の方々にアドバイスを頂きながらの実施です!

手話通訳有(左)と要約筆記有(右)の様子

 なかなか気軽に外出も難しい時期だったということもあり、地図アプリの位置情報とカメラを利用した、現地にてカメラを掲げたかのような風景を見る操作体験では、驚きと楽しさを感じている様子が窺えました。合わせて通訳等の便利ツールを紹介し触れていただくことで、いろいろなことができるツールとして認識いただき、抱えていた疑問点も解消し満足いただける結果となりました。

 工夫ができる余地があった点では、参加者が手元に気を取られてしまうと講師の説明に気が付かないところでした。サポーターの人がお知らせする工夫が必要そうです。また、感染対策のためのアクリル板が、後ろの席に座る受講者の視界に重なり、講師や通訳内容を見にくいという状況が発生したことも今後の改善点として挙がりました。その他の気づきについてはデジタルサービス局のHPにて公開していますので是非ご覧ください!

以下八王子市担当からのコメントです。

 今回、東京都の御協力により、聴覚障害者を対象としたデジタルデバイドの是正に向けて、新たな取組を実施することができました。
また、スマートフォン教室の開催に加え、携帯端末やタブレット端末をお持ちでない方にタブレット端末の貸与サービスも実施したことで、実際の生活の中で、オンラインを活用して人とつながる成功体験を得ることができた事例もありました。
 本市の取組が同様の課題を抱えている方々の参考になりますと幸いです。
ご参加いただいた皆様、関係者の皆様、誠にありがとうございました!

(敬称略)
八王子市デジタル推進室
佐藤 久幸、吉﨑 桃子

八王子市福祉部障害者福祉課
福岡 悟、山本 優

東京都デジタルサービス局戦略部
友光 亮介、山田 篤彦


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