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世田谷区CIO×都CIOの座談会を実施しました!

東京都・区市町村CIOフォーラムにおける活動の一環として、都内各自治体CIO等へ「東京都・区市町村CIOフォーラムマガジン」を発行しております。今回は、マガジンに掲載した内容を一部公開します。
第3回は、「世田谷区CIO×都CIO座談会」をお届けします!
※CIO(情報統括責任者):組織の情報戦略における最高責任者
※東京都・区市町村CIOフォーラム:都CIOと各区市町村のCIO(主に副首長)等が相互に密接な連携と協力を深め、電子自治体の構築や行政施策へのICT活用等の諸課題に関して、テクノロジー情報や導入ナレッジの共有化を通じて、都及び各区市町村のDX施策推進に寄与することを目的として設置

令和3年9月14日に、「東京都・区市町村CIOフォーラム第3回座談会」として世田谷区CIOと都CIOの対談を実施しました。

参加者(敬称略)
世田谷区CIO(副区長):中村 哲也
世田谷区政策経営部長兼デジタル改革担当部長(CIO補佐):加賀谷 実
世田谷区政策経営部参与(CIO補佐):河﨑 健一郎
世田谷区デジタル改革担当部デジタル改革担当課長:松永 仁
世田谷区政策経営部ICT推進課長:山田 和彦
都CIO:宮坂 学

キャプチャ

世田谷区DX推進方針 Ver.1

「Re・Design SETAGAYA」の3つの方針

―本日はよろしくお願いします。早速ですが世田谷区様のDX取組についてご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

世田谷区CIO:中村(以下「中村」)
資料をもとにデジタル改革担当部長よりご説明させていただきます。

中村副区長(ぼかし後送付用)

世田谷区CIO補佐:加賀谷(以下「加賀谷」)
よろしくお願いします。今年3月に世田谷区DX推進方針 Ver.1を策定しました。そのコンセプトを「Re・Design SETAGAYA」と定めまして、3つの方針を重要としています。1つ目は区民が利用する「行政サービスのRe・Design」、2つ目は区民が主体となる「参加と協働のRe・Design」、3つ目は区職員が働く「区役所のRe・Design」です。
3つの方針のあるべき姿は定めておりますが、まずはスモールスタートで始めてみて試行錯誤を繰り返しながら改善を進めていきたいと考えております。そこで2年間の重点的取組をまとめました。また、DX人材確保についても2年間で集中的に取り組み、DX推進に向けた基盤を作っていきたいと考えております。
また、推進方針”Ver.1”とあるように、技術革新・環境変化・区民のニーズ等がございますので、状況に応じて柔軟にバージョンアップをしていきたいと考えております。

都CIO:宮坂(以下「宮坂」)
貴重なお話をいただきましてありがとうございます。我々デジタルサービス局は4月にできまして、その際に3つのお客様の定義をしました。1つ目は都民で、都民の方に良いサービスを提供することが大事だと考えております。2つ目は都庁職員で、まさしく「区役所のRe・Design」に同感で、職員がもっと戦える情報環境を作りたいと考えております。3つ目が区市町村のICT担当の方々で、我々としてはここを積極的にサポートしたいと思っております。この機会に情報交換をさせていただければと思いますので、本日はよろしくお願いします。

副知事2

民間・若手の視点によるDX推進方針策定
宮坂
まず資料を拝見させてもらったときに、3つのRe・Designという形で非常に綺麗に整理されていると思いました。このような戦略を作るときにどういうプロセスでどういうメンバーだったのか興味がありますのでちょっとお伺いしてもよろしいですか。

世田谷区政策経営部ICT推進課長:山田(以下「山田」)
私は、民間から採用されて2年間の任期付きでICT推進課長をやっています。DX推進方針を策定することになったきっかけは、区長・副区長から「情報化を本格的に推進してほしい。具体的にどのように進めていくかまとめてほしい」という要請を受けたことです。もう好きなようにやっていいという話だったので、コンセプト決めから、政策経営部の若手を中心としたチームで考えることにしました。“DX”という言葉が庁内でまだ浸透していない状況だったので、分かりやすいキャッチーなフレーズで庁内の指針となるものにしたい、作ったら完成ではなく、トライ&エラーでバージョンアップを繰り返していけるものにしたい、といった若手のアイデアがもとになって出来上がりました。これまでWordで作ることが当たり前だったものをPowerPointで作成し、プレゼン形式で発表したのも世田谷区の中では斬新だったのかと思います。

宮坂
資料もすごく見やすくて、初見で概要がぱっとわかり素晴らしいなと思ってみていました!どれくらいの期間で検討されたのでしょうか。

山田
だいたい2ヶ月ぐらいですね。

宮坂
早いですね!戦略を立てるときに、何か問題意識があって3つのRe・Designとして整理したのかと思いますが、それぞれ具体的にどういう問題意識や課題があったのか教えてもらえますか。

世田谷区政策経営部参与:河﨑 健一郎(以下河﨑)
私も民間の者で当初からこの検討に参加させていただいていますが、最初にびっくりしたのがインターネットに原則接続してない環境で仕事をしているということです。そこからまずは基盤の整備として「区役所のRe・Design」が出てきました。そこで、国とやりとりしながら進めている渋谷区に学びに行きまして、これをベースに検討をしました。

しかし「DX=単なるデジタル化」ではないのではないかという話になり、有識者の方にお話を伺ったところ、DXの本質はUXの改良である、とおっしゃっていました。区のユーザーは区民ですから、区民の方々の視点から、単なるデジタル化ではなく、ユーザーのサービス体験としてどのように設計されるべきか、ということをまずは考えなければならないということで「行政サービスのRe・Design」というところに落とし込んでいきました。

その上で、我々は基礎自治体ですので、公共的な役割が一番重要だと考えています。伝統的に世田谷区は住民自治の意識も高い地域です。この民間の力を活用しないというのはもったいない。一例としては例えばコロナ禍において、学校でのZoomを使った授業というのは当初難しい中で、PTAやご父兄の方々が自主的にアンケートを取って実現方法の提案をいただきました。その延長として、職員と区民とで一緒に課題に取り組んでいくことができないかと考え、「参加と協働のRe・Design」ということで、DX推進方針の最重要の柱として位置づけというのが背景でございました。

宮坂
背景がよくわかりました、ありがとうございました。民間や若手の視点を取り入れたことでこのような素晴らしいDX推進方針が策定できたのですね!

キャプチャ2

「区役所のRe・Design」

労働環境改善における制度上の課題
宮坂
おっしゃる通り、職員の方の働く環境がすごく大事だと思います。そのひとつとして、チャットとスマートフォンが働き方を変えるキーになると思っていますが、スマートフォンについての現状と今後について教えてもらえますか。

山田
災害対策関連組織など一部職員には配布していますが、職員数が5,000を超えますので、全員にすぐには配れないのが現状です。そこで必然的にBYOD(※)を考えることになりますが、他自治体同様、現状の庁内の制度上においては、実現は厳しい。それでも今年度から、MicrosoftのIntuneを使った検証などを行い、セキュリティ面や運用面の評価を進めていこうと考えています。
※ BYOD…Bring Your Own Deviceの略。個人所有の端末を業務に活用する仕組み

宮坂
基本はセキュリティ環境を作った上でのBYODという方針なのですね。

山田
そうですね、庁内的な機運や規則が整い次第すぐ実施できるように準備をすすめておこうと思っています。

宮坂
ありがとうございます。先ほどインターネット環境も課題とおっしゃっていましたが、他にも職員の働く環境面での課題はあったりするのでしょうか。

世田谷区デジタル改革担当部デジタル改革担当課長:松永(以下「松永」)職員からはテレワークの要望が非常に高いですが、BYOD含めシステム環境が整ってない、システム環境が整ったとしても制度として在宅勤務の利用に関して整理が必要である点が課題です。まずは在宅勤務以前に、パソコンを会議室に持っていっても仕事ができるなど、自席以外のどこでも仕事ができる環境を作っていきたいと思っています。

宮坂
まず庁舎内のネットワークでどこでも業務が実施できるような環境にして、その次に自宅や庁舎の外側でも作業できるようにするといった2段階のイメージですね。

東京都でも、原則としてリモートワークは自宅でしか行ってはいけないという制度面が問題になっています。自宅でやりたい人も多いが、自宅の通信環境等も考慮しなければいけないということで今議論しているところです。

写真修正後

「参加と協働のRe・Design」

住民の声をどうやってデジタルで集めるのか
宮坂
あと、最重要とおっしゃっていた「参加と協働のRe・design」の部分に興味があります。住民の方からのご意見を集めるところにデジタルテクノロジーの大きな可能性があると思っています。私自身としては2つのチャネルを考えています。1つはログ。ログから分かることはたくさんあるのですが、あまりログを見る文化がなかったので、まずはページビューから分析を始めたいと考えています。もう1つはアンケートで定性的な意見を聞くところを自動化したいと思っています。

まだ我々も始めたばかりですが、世田谷区様の方で住民の方のご意見を集めるときに今までやってきたことや今後やろうとしていることを教えてもらってもよろしいですか。

河﨑
世田谷では伝統的に市民参加の文化があります。例えば無作為抽出で、区民の方100人に集まってもらった車座集会や、下北沢・三軒茶屋地域の商店街の人でまち作り会議のようなことをやっていました。今は、ツールを用いてそれらを電子的に行う取組を試行的に始めております。宮坂さんがおっしゃったログなどの分析は重要だと思う一方で、もっと具体的なやりとりを相互にできる仕組みを作りたいと思っています。

他にもLINEの活用は考えていて、例えばまちの情報をLINEで教えてもらってどんどん対応していくようなことも考えています。

宮坂
素晴らしい!我々も今スマートシティ実現へ向けて頑張っていて、いくつか先行エリアを設けて先端技術をどんどん導入しています。それ自体は必要なことですが、一方で主役は区市町村であるべきだと考えております。住民の方の声をどうやってデジタルで集めるのかの方がスマートシティとしては大事です。見る力・聞く力をデジタルでどう増幅するか、と考えて西新宿ではLINEを導入してみました。

このあたりのノウハウ・ツールの選定について今後また情報交換させていただきたいです。

河﨑
ぜひお願いします!試行錯誤をしてよりよい方法を考えていきたいですね。

人材登用・活用

雇い方のイノベーション・雇用しないイノベーション
―ここまで一方的に宮坂のほうからお聞きさせていただいたのですが、逆に世田谷区様から何か宮坂の方にご質問あればと思うのですがいかがでしょうか。

松永
今一番悩んでいるのが外部の人材活用の方法です。東京都のように任期付で直接募集しても手を挙げていただけるのか。そのあたりの民間の活用のところで頭を悩ませていますのでアドバイスいただけると。

宮坂
我々も現在試行錯誤しながらやっていますが、最初に調査したのが世界の都市の職員に占めるICT人材の比率でした。すると、東京よりも人口が少ないような都市であっても、どこも1000人規模でICT人材を持っていました。それに比べ、東京都は当時20人くらいしかICT人材がおらず、もっと増やさないと無理だなと痛感しました。
制度的に壁もあるのですが、まずは行政が雇い方を柔軟にするということで、雇い方のイノベーションを起こさないといけないかなと思っています。
そこで最初にやったのは任期付の職員をいれるというやり方です。任期付なので、長い職業人生の中の数年を都庁で働いてみませんかといったアプローチで、これはうまくいきました。
副業型の採用も今回始めまして、週に1回から働くことができる勤務形態としていますが、それはまだ人数が少ないです。ただ神戸市を始めとした他団体の事例ではすごい数の応募が来ているらしく、デジタル庁も副業で来る人が多いと聞いています。ここはまだ我々も正直おっかなびっくりやっているところですが、雇い方のイノベーションを起こさない限り人数を増やすのは難しいので、やってみたいと思っています。
あとはオープンデータ・オープンソースを通じて市民の方にどう参加してもらうかも鍵だと思っています。我々はまだデータやAPIを出せていないのですが、APIを出すことによって、雇用関係はなくても街を何とかしたいという意欲のある人が色々なものを作ってくれる可能性がある。オープンデータを利用して、市民団体の方がバリアフリートイレの地図を作ってくれた事例もあります。
そうやって、雇用関係はなくてもデジタルならではの参加しやすいやり方が大事かと思っています。先ほど仰っていたLINEを活用したまちの情報の投稿や、デジタルを通じたちょっとした市民参加のあり方も大アリですよね。雇用しないイノベーションというか(笑)そういうのをどんどん起こしていかないと!普通に公務員になりませんか?と言っても、なかなか取れないと思っていますので、皆さんとぜひ一緒にアイデアを出していきたいですね。

松永
ありがとうございます!大変参考になりました。

―本日は貴重なお時間をいただき、色々な形で意見交換をさせていただきありがとうございました!
本取組については、今後も月次で継続して実施する予定です。次回もお楽しみに!

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