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Nouns DAOと統治の哲学【前編】


はじめに

こんにちは!本郷Web3バレーです。
Stanford Blockchain Reviewシリーズになります。
このシリーズではStanford Blockchain clubの業界レポートであるStanford Blockchain Reviewを日本語に翻訳したものを要約と我々の観点とともに発信していくものとなっています。
翻訳の許可をくださったStanford Blockchain ReviewのJayYuには感謝申し上げます。
前編では本文とその要約を、後編では我々の議論内容と観点を発信します。前編を追いながら後編を見ていただけるとわかりやすいのかなと思います。
今回扱うテーマは「DAOと統治について」です。

腐らない統治体制はないと言われています。そんな中で腐らない支配体制を支配体制を作るのに鍵とされているのか市民社会です。本記事ではNouns DAOをヒントに分散化された、民主的な市民社会の構築方法を見ていきます。

概要

  • DeFi,NFT,DAOの登場によって分散と民主主義の両立が可能な統治モデルができた。

  • DAOにより分散と民主主義の両立は可能であるが、そのためにはコミュニティの高い関心が必要不可欠→NFTを使おう!

  • 「NFTは思想の象徴として文化的資本の貯蔵庫となりうる」その結果市民社会が成立する。

    • 思想に共感したコミュニティの参加バッジのようにNFTを利用することで参加者間に連携を生み出しアイデンティティを与え高い参加率を維持する→市民社会の成立

  • それゆえ文化的資本の増大がNounsの成功の鍵であり、認知度を上げることと思想の魅力を訴えることでNounsNFTの流動性を与えていく必要がある。

  • 市民社会は自ら運動を起こし、腐っていく社会を止める勢力として機能するだろう。

要約

【導入】

  • Nouns DAOのケーススタディから以下のことを考察する

    • web3の市民社会、コミュニティ、統治の持つ影響力

  • 結論:NFT DAOの今後の課題は世界を構築することに真摯に向きあい、JPEGを思想の象徴として利用することで民主的なDAO統治と中身の伴った分散化の両方を促進することである。

【NFT基礎知識】

  • NFT1.0→イメージ、画像そのもの

  • 2.0→ユーティリティなどの機能が認知される

  • NFTはイデオロギーに沿ったインターネット上のコミュニティを立ち上げるのに最適ではないのか?

【Nouns DAOとは】

  • NounsはNFTコレクション

  • Nounsプロジェクトの長期的な成長と繁栄が目的

  • 毎日作品が作成され自動的にオークションが執り行われる

  • 4450万ドルの共同資源の分配について保有するNFTの量に比例して議決権を持つ

  • DAOにもさまざまな統治体制が存在するが、分散的な民主主義という視点にもとづいてNounsDAOの例を以下に見ていく。

    • 2つ以上のNounを持つNounerは提案可能

    • Nounderが拒否権を持つ

    • 実際に分散的に機能している

【Nouns DAOの成長メカニズム】

  • アイコンにミーム的価値を与え文化資本の貯蔵庫とすることでNFTはイデオロギーの象徴として機能する

  • 影響力を増すためにはより多くの人が知り、共感することが必要不可欠だ。

【市民社会とNouns DAO】

  • Nouns DAOの成功は市民社会の概念を再構築する。

  • マキャベリー「社会は再生しない限り退化する」→市民社会の見逃しでは?

  • アレクシス・ド・トクヴィルー市民社会とは「個人と国家の間に立つ仲介組織の領域」

  • 市民社会は、公共-政治的な次元で受け入れられなければならない。

  • Nouns DAOは優れた市民社会をそのアイコンの持つ文化的資本によって成り立たせる

  • Nouns のガバナンスモデルは分散化された民主的な統治機構

【DAO的統治機構のリスク】

  • 可決案の実行において起こりうる公約違反はDAOにとって大きなリスクとなる

  • これはアイコンに対する不信感を植え付け、それが持つ文化資本を損なう可能性があるからだ。

【民主主義の問題点】

  • 民主主義は自由を謳歌するためのシステムだが、自由こそがその問題点である

  • 統治される側もまた統治されたいと思うようなインセンティブを与えられる統治が望ましい

  • そのインセンティブとして有効なものが連携とアイデンティティの保持である

  • Nouns DAOはその拠り所として機能しなければ理想的な統治は実現し得ないだろう

【Nouns DAOの未来】

  • Nounsのアイコンを広めることでコミュニティを拡大していくことがNounsの未来につながる

  • NFT DAOはアイコンの象徴する思想により参加者にアイデンティティを与える

  • 画像に象徴される思想を掲げ社会を構築していくことがNounsにとって重要だろう

本文

導入

web3における統治の現代的な問題に対する哲学的なアプローチは説明の必要性を持つ。多くの先達とは異なり、哲学者はもはや、理想的に起こるべきことを世界に公表することはしない。私たちは謙虚になったのだ。我々はまた、過去に対する理解、ひょっとしたら過去そのものが、哲学者の視点によって変化することを十分に理解している。しかし、コンセンサスメカニズムや並列実行エンジンの革新が、人の心を揺さぶることはできないという問題は残ったままだ。Web3のインパクトを真に理解するためには、まず人類を理解する必要がある。そして、人類を理解するためには、まず私たちの過去を理解しなければならない。

どんなに豊かな経験も、どんなに徹底した歴史研究も、現在のメタバース・クルージング世代に、自分自身の答えを見つけるという創造的な仕事をさせることはできないだろう。しかし、知の歴史は、多くの暗号純粋主義者が評価するよりも、より理解の補助となるものである。私は、Nouns DAOの自治の原則とメカニズムのケーススタディを通じて、哲学的な観点から、Web3時代の市民社会、コミュニティ、ガバナンスに対するNouns DAOの影響力を調査しようと試みる。結論として、NFTプロジェクトの今後の課題は、世界を構築する丹念なプロセスに取り組むことであり、JPEGの背後に意味や象徴を置くことで、統一感、アイデンティティ、民主的責任感を自立的に育むことができるようにすることである。統治とは、統治する側と統治される側が存在する、二重の芸術なのだ。効率的な統治構造の上に、統治される側がコミュニティに留まるだけのインセンティブを与えなければなりません。最終的に、Nounsの目的は、図像の持つ伝達力と連帯感を活用することで、民主的なDAOガバナンスと中身の伴った分散化の両方を促進するという2つの任務を育成することだ。

NFTの価値について

Nouns DAOの深みに飛び込む前に、NFTの価値提案を理解する必要がある。NFTはブロックチェーン上で、デジタル財産権の保証など多くの目的で使用される。しかし、基礎となる製品から価値を獲得するものの、価値創造には関与しないファンジブルトークンとは異なり、NFTはしばしば製品そのものとなる(Fidenzas、Ringer、CryptoPunks)。NFTは通常、IPFSにホストされたJPEGを指すポインタだが、NounsやCyberbrokersなど多くのNFTプロジェクトは、実際にアートを生成し、直接オンチェーンに保存する。

長い間、多くの人がNFT1.0と見ていたものは、追跡を容易にするためにチェーン上に移動したデジタルコレクタブルに過ぎなかった。それがNBAトップショットやナカモトカードの時代だった。NFT2.0は、次の10億人のユーザーを暗号に取り込むために多くの人が注目したapesの時代で、「ユーティリティ」という泥臭い概念、つまりNFTをイベントのチケットとして使ったり、ダサい商品のクーポンとして使ったりする機能を意味した。つまり、NFTを投資対象、あるいはデジタルで取引される野球カードのようなものとしか考えていなければ、NFTがなぜ高価なのかを理解することはできないだろう。私にとってNFTは、イデオロギーに沿ったソーシャルネットワークを簡単に立ち上げることができる新しいデジタル原始的なものである。Nouns DAOはそのようなネットワークの1つだ。


Nouns 500 [1]

Nouns DAOとは?

Nounsプロジェクトは、「美はシンプルにあり」という格言を証明するものだ。しかし、実験的な試みにはよくあるようにそれ以上のものに成長した。何よりもまず、NFTプロジェクトであり、DAO(分散型自律組織)だ。

簡単に言うと、Nounsは、ERC-721トークンの形をしたジェネレーティブアート作品だ。SofaやSharkのような頭部を含む定義済みの形質をシャッフルして組み替えることで作成される。それぞれの名詞は(創設者のために残された10番目の名詞を除いて)、最高額の入札者に競り落とされる。落札者はNounを受け取り、彼のETHはNounsのトレジャリーに預けられる。オークションは毎日行われ、コミュニティは明日の次のNounの特徴に影響を与えることができる。

また、NounsはDAOでもあり、(他の多くのDAOと同様に)Compound Governanceのフォークを使用している。私はNoun 55の公開オークションを落札してコミュニティに参加した。2021年8月8日現在、Nounsプロトコルは24時間ごとに1つのNounを生成し、オークションを行っており、現在Noun591に位置している。このプロセスは、終末論的な宇宙の終わりまで継続する予定だ。

DAOは、何よりもまず民主主義ですー共同体の資源をどのように配分するかを決定する分散型の方法だ。Nouns DAOでは、多くのNFTコミュニティと同様に、主要な「共同資源」はトレジャリーだ。各Nounerは、NFTをいくつ所有していても、DAOがTreasuryの資金をどのように使うかについて、ほんのわずかな発言権しか持っていない。議決権は保有するNFTの量に比例する(一部の著名なメンバーはNFTを委譲され、議決権も比例して上昇する)。現在、341人のNouner(保有者のこと、複数のNounを保有する者もいる)と28176ETHの国庫があり、その額は4450万ドルにものぼる。

世界にはさまざまなタイプの民主主義国家(大統領制、議会制など)があるように、オンチェーンガバナンスにも多くのバリエーションがある。例えば、Curve protocolは「Vote Escrow」という実験を行っており、より多くの投票権と引き換えにCRVトークンをロックすることができる。もちろん、これらにはトレードオフがつきものだ。エスクローされたシステムには、より効率的なガバナンスにつながる、より集中した権力が生まれるが、同時に、こうした集中した権力システムは、民主主義を実際に侵食する権力の独占を生みかねない(veCRVが多ければ多いほど、あなたの流動性プールに流れるCRV報酬を過給でき、あなたはより多くのCRVとガバナンス権力を手にできる)。私たちは、このことを念頭に置いて、Nounsガバナンスに立ち返る必要がある。

Nouns DAOの統治:「市民社会」の再想像

Nouns DAOの統治機構は、多様なステークホルダーを認識し、「Nounsプロジェクトの長期的な成長と繁栄[2]」を守る、エレガントかつ堅牢な民主主義システムだ。2つ以上のNounを持つNounerは誰でも提案を提出することができ、各提案は定足数に従って単純多数決で可決される。さらに、可決された提案がコミュニティのルールや利益に反しないように、Nounder(Nouns DAOの創始者)は最終的な拒否権を保持している。

このシンプルな設計は、実際には驚くほど堅牢であることが証明されています。Nouns DAOは、国庫のETHのステーキングから利用可能な財源の割り当てに至るまで、218の提案を作成した。これらの提案のうち、153件が通過し、拒否権を行使されたのは1件だけである。それは提案60で、「タイムロック中に提案に拒否権を行使する財団の能力をテストする」という適切なタイトルがついていた。


Nouns DAOの投票[3]

この結果は、私が考えるNouns DAOの長期的な思想的意義の核心に触れるものだ。表面的には、Nouns DAOは、ベタなピクセルアートを中心としたコミュニティプール型ヘッジファンドの成功に過ぎないように見える。しかし、実際には、Nouns DAOの成功は、「市民社会」の概念を再構築し、時代遅れの民主的な制度を分散型デジタル次元に引きずり込むものだ。

このことを念頭に置いて、民主的ガバナンスの哲学と "市民社会 "の役割に目を向けてみよう。ルネサンス期のイタリアで活躍した実用主義的な政治哲学者、ニッコロ・マキアヴェッリは、すべての社会は退化するものだと考えた。彼は『リヴィー語録』の中で、「君主制は容易に専制政治になり、貴族制や寡頭制になり、民主主義は無政府に堕落する傾向がある。つまり、国家の創設者がこれら3つの政治形態のいずれかを確立するとしても、それを確立するのは短期間であり、彼が取ることのできる予防措置は、その逆への転落を防ぐことはできないからである」[4]」と書いた。彼は、すべての政治形態は有害であり、知事は、共和国を退化する前の状態に体系的に戻すことによってのみ、退化を食い止めることができると主張した。マキャベリは、「宗派、共和国、王国のすべての始まりには、何らかの善が存在しているはずで、それによって最初の評判と最初の拡大を取り戻すことができる」と書いている[5]。

マキャベリは、この再生は、内的にも外的にも達成できると考えている。外的には、ローマはフランスによる外的打撃の後に生まれ変わり、内的には、ハラティウス・コクルスやレグルス・アッティリウスのような偉大な徳のある人物によって若返ったのである。しかし、どちらの再生方法も頼るに値しないことは明らかで、筆者はマキャベリは腐敗に対抗するために、ブルータスの息子たちの残虐な処刑や同様の陰惨な行為を支持せざるを得なかったと主張する。もしローマが「10年ごとに」同様の粛清を行っていたならば、「決して腐敗することはなかった」と彼は書いている。死がより稀になったときにこそ、人間は自らを腐敗させ、「法を犯す」ようになったのである[6]。要するに、マキアヴェッリは、処刑のような陰惨な刑罰を正当化せざるを得なかったのは、それが大義のために必要だと考えたからである。彼はローマ帝国の衰退と没落を綿密に研究したが、自分の理論を救うことができるパズルの1ピース、つまり多くの民主主義国家を退化させないための重要な再生力、すなわち市民社会、すなわち人々の間の自由で自発的な結社を見逃してしまったのである。

19世紀フランスの社会学者アレクシス・ド・トクヴィルは、著書『アメリカの民主主義』の中で、市民社会とは、個人の利益を追求し、共同体の問題を解決する自己集合組織のネットワーク、つまり「個人と国家の間に立つ仲介組織の領域」であると定義した[7]。トクヴィルは、新大陸への航海を前にして、植民地の地方分権に驚嘆し、各町村が独自の事務を管理し、あらゆるテーマについて自律的に委員会を組織していることに衝撃を受けた。現代に目を向けると、ダナ・ビラのような学者は、市民社会とは新しく生まれた団体生活であり、「国家の公式な後援がない...一言で言えば、官僚的・権威的国家に対してだけでなく、(多国籍企業のような)大きな経済利益に対しても社会の主張を主張できる、分散された多元的な公的領域のことを指すようになった」[8]。市民社会は、公共-政治的な次元で受け入れられなければならならない。

もちろん、優れた市民社会の特徴として、自発的な参加、共同体意識、目的の共有が必要であるが、Nounsの最も革新的な点は、民主主義と内実を伴った分権化の両方を共生的に繁栄させることができる点にある。NFTは風変わりな収集品にとどまらず、哲学的に整合したソーシャルネットワークのバックボーンとなる必要がある。あなたがNounを集めるのは、Noggles(名詞のゴーグル)が好きだからというだけでなく、Nouns DAOの思想的原則を支持するからだ。1830年代のアメリカへの旅でトクヴィルが感動したニューイングランドのタウンホールのように、Nouns DAOは地元のタウンミーティングを21世紀にオンチェーンさせなければならない[9]。メタバースの時代には、私たちは、親族外でありながら非政治的な方法で互いに築く無数の相互接続を通じてアイデンティティを確立する。したがって、NFTは、志を同じくするイデオロギー・コミュニティのデジタル市民バッジに進化し、草の根から始まるサイバー市民社会を作り出すのだ。

実際、Nounsのガバナンスモデルの所有者と投票者の構造も、この分散化された民主的なプロセスを証明している。投票権は非常によく分散されており、全体の半分近くをNounを1つだけ持つ個人が持っている。 大きなクジラ(議決権を多く持つ発言者)は、毎日のオークションの希釈効果によって、投票権の20%未満のみを占めている。時間が経つにつれて、単一の所有者の数は増加すると予想され、他の高濃度DAOでよく見られる談合のリスクを軽減する。さらに、チェーン上の透明性により、所有権や今後のアンロックが隠されることはなく、投票者が忠誠心や意図を隠すことも難しくなる。投票に使用される独自のNFTは、保有者のトラックレコードを確立し、ゼロ知識での信頼を可能にする。

文化的資本による成長:アイコン・リクイディティ・フライホイール(アイコン・流動性による弾み車)

しかし、ユニークなガバナンス構造にもかかわらず、Nounsの生計は、その文化的価値をいかに広めることができるかにかかっている。基本的に、Nounは空想的なJPEGに過ぎない。このJPEGが流動性を持つためには、まず人々がその図像に価値を見出さなければならない。実際、図像と流動性は同じコインの裏表である。パーミッションレスなDeFiプロトコルによって、文化資本(イコノグラフィー)はトークン(流動性)とスムーズに交換できるようになった。ロレックスが年間100万個の時計を生産し、その価値を維持するのと同じように、バレンシアガのようなファッションハウスや新興のTiktokマイクロセレブリティは、そのアイコンのバイラル性を頼りにしている。これが、私が言う「アイコン・リクイディティ・フライホイール」だ。広義には、NFTはミーム価値(ミーム、サイン、社会的地位の力)を獲得して文化資本の貯蔵庫となることで機能する。

したがって、流動性が高まれば高まるほど、Nounsの図像の効力も高まる。図像を強化することで、より多くの資本がプロジェクトに流れ込み、バイラルな広がりにさらなる火力を与えることができる。ブルデューやボードリヤールが示唆するように、このような文化的記号の価値は、記号の階層的システムにおけるその位置に基づいている。最も高価なNFTはこの理論を検証するものであり、アズキの精霊が100万ドル以上で売れるわけがない。しかし、名詞は固定供給ではないため、名詞の価格を維持する唯一の方法は、その図像を広めて需要を喚起し、「ブランド効果」の好循環を開始することであろう。このようなことが起こり始めると、需要はであるが、供給は直線的であることを思い出してほしい⌐◨-◨。

それに伴って、DAOはETHを効率的に使用して注目を集め、Nounsを望ましいものにしなければならない。lil Nounsの提案(8つの適切なNounsを所有し、独自の流動性イコノグラフィーを起動するために使用する独自のミニ宝庫を持つNouns DAOのフォークの作成につながった)は、投機家に低いエントリを与え、したがって流動性の障壁を消した、正しい方向へのアクションだった。同様に、私は提案218「日本一のスキー場で15ヶ月間、200万人以上の人々にNounsと触れる機会を提供し、Nounsをアルプスのサブカルチャーに統合する」[10]に注目しています。提案者が求めた198Kの見返りとして、DAOはリゾート内でノーグルを配布し、ソーシャルメディアで紹介し、247のゴンドラにポスターを貼るなど、様々な特典を得ることができる。私はこの提案を少年のような熱意で見ているのだが(2024年の第2四半期まで徐々に展開される)、他の多くの提案が支持を得るのに失敗していることも認識している。なぜなら、これらの提案に対する私のメンタルモデルは、ベンチャー投資と非常に似ているからだ。市場サイクルの活性化と相まって、NounsはNFT技術、DeFi、DAOガバナンスを三位一体で活用するプロジェクトとなる可能性がある。

しかし、後述するように、Nounsのアートは美学の域を超えなければならない。アートは単なる風変わりなものであってはならないのだ。フライホイールの静止摩擦を完全に克服するためには、アートが価値体系(コミュニティとその実践を組織化する役割を果たすミーム、アイデア、慣習の集合)を開示することを確認する必要があるのだ。世界との関わり方を確立する必要があるのだ。

実行に伴う死:提案129


ニューヨークファッションウィーク[11]

Nouns DAOの「成長」がNFTとしての形式に固有であるのに対し、Nouns DAOの「死」はそうではない。他の多くの民主主義国家と同様に、Nouns DAOのガバナンスモデルは、実行の失敗と、それに続く信頼の喪失から最もリスクを負っている。これは、約束違反に関するイデオロギーと資源配分の問題であり、インフラを改善しても解決しない。

これは、私にとっても個人的な問題である。私は「Nounify New York Fashion Week」、すなわち提案129の提案者であるが、これは今となっては公約の違反として記憶されている。スタンフォード大学と関係の深いVC、1Confirmationの友人と話していたところ、Advsiryのチームを紹介された。「Advisry X Nouns」の出席証明バッジやゲストへのNounsギフト、会場のBrand Nounsの石膏化、 Nounなアフターパーティーの開催、Keith HerronがデザインしたNounsの作品をランウェイでの陳列、そしてドキュメンタリー映画の撮影。これら全てを多くのセレブが参加する世界の主要ファッションショーの中でも権威あるイベントであるニューヨークファッションウィークで、33ETHで実行する約束を取り付けることに成功した[12]。

人脈を駆使して支持を集めた結果、この提案は59対1で可決された。私は、会場となったワールドトレードセンター内にあるアートなランドマーク、Oculus NYCに行くことができなかったので、行った他のNounsを頼ることにした。しかし、あるNounerによると、「Nounsはほとんどいなかった」そうだ。私は慌てて録画を見て、すぐにAdvsiryに連絡した。彼らは謝罪し、自分たちの計画性のなさと、「適切な書類作成のための十分な時間」がなかったことなどを理由に挙げた。Nounsのブランディングについては、「Nounsのトランクをイタリアから急遽作って間に合わせたが、ショー当日になぜかランウェイに出てこなかった」。「スタイリングチームのミス」によるものだという。返金はされなかった。

この提案の失敗と33ETHの損失は私の責任だが、これは明らかにDAOに関するより大きな問題を示している。オンチェーンへのガバナンスの移動は、憲法の反多数派の立案者が直面しなければならなかった民主主義の問題のいずれをも解決することができなかった。Nounsコミュニティのメンバー間の信頼関係は崩壊し、人々は法的措置も含めて、お金を取り戻す方法を考え出始めた。しかし、ここで最も注目すべきなのは、DAOが現実世界で直面する実行リスクで、オンチェーンガバナンスという斬新な技術とコミュニティ、そしてその図像(アイコン)や流動性に対する不信感を植え付ける可能性があるということだ。

民主主義国家の問題点:哲学的なレンズ

古代ギリシャ以来、民主主義国家は、実行と統一という長年の問題に直面してきた。プラトンの『共和国』において、ソクラテスは、民主主義は、哲学者でない人々に、できる限り良い人間になろうとするよう誘導するためのものではないとした。民主主義は、徳を養うのではなく、自由を養うものであり、高貴に生きようとするか卑しく生きようとするかは自由である。しかし、この自由こそが、民主主義の最大の欠点である。税金を払っているのは自分だけではないと信じなければならない。強く共有されたアイデンティティを持たない民主的なコミュニティは、囚人のジレンマの餌食になることが多い。

クリプトに懐疑的な人たちにとって、国庫から手っ取り早くお金を得たいだけの提案を指摘するのは簡単である。提案129のように、不正を行わなかった者が結果的にお金を無駄にした例も見つけることができる。ギリシャ人は自由を謳歌していたが、何が自分たちを自由にしているのかを理解していなかったため、自分たちの民主主義システムに誇りを持たず、それが滅んでも気にしなかったという例もある。しかし、懐疑論者も空想家も見当違いである。分散型で民主化された存在であるDAOは、ますます多元化する公共領域の一部として、基本的に開かれた社会なのだ。もちろん、優れた統治機構がなければならないが、統治される側もまた、統治されたいと思うようなインセンティブを等しく与えられなければならないのだ。オープンソサエティには、連帯という強力なニーズがあり、それは私たちが持たなければならないものであり、機能する民主主義に見られるものでもある。連帯には、共通のアイデンティティの重要性を認識することが必要である。それは、自由な団体や市民社会の価値に帰結する。

ある意味、『Nouns』は、非常に差し迫った問題を浮き彫りにしています。科学技術は、これまで抽象的で哲学的だった問題を、私たちの関心の最前線に浮かび上がらせるのだ。ジャン=フランソワ・リオタールがポストモダンにおけるメタナラティブの喪失について初めて論じたとき、誰も彼が何を言っているのか理解できなかった。今、分散型サイバー経済や時空間世界から切り離された仮想シミュレーションが現実のものとなり、私たちはこの認識論の危機に直面せざるを得なくなっている。「近さ」の崩壊と絵画的空間の平坦化が進み、私たちはますます幼少期の快適な世界から切り離され、1時間の労働が15ドルの価値に換算されない暗号的な記号の世界へと突き落とされるのである。

その結果、Nouns DAOの将来に対する最大のリスクは、虚無的な疲弊感である。民主的な制度に対する信頼が低下し、ほとんどのDAOで投票率が低いことに見られるように、私たちはもはや投票に関心を持たなくなった。私たちは、ルールを守るべきときと捨てるべきときを判断する能力を失っている。ルールが何であるかについて合意する能力さえも失っている。私たちはもはや、この能力を究極の価値として認識する世界に住んでいないのである。悪の均衡によってのみ保たれている現実において、私たちの判断能力を回復させるために、ローマ時代のような公開処刑が必要でないことを祈る。マキアヴェッリは誇りに思うだろう。

結局、政治はギリシャの時のように小さなコミュニティで行われる。普遍的なルールなど存在しないのである。他の多くの人々と同様に、Nounsも中央集権的な暗号業界のブラックスワンの結果生じた弊害にまだ苦しんでいる。その最たるものがFTXの登場だ。このように、DAOの提案は木を見て森を見ずということがあまりにも多い。失敗した提案からETHを取り戻し、トレジャリーから配当を分配し、さらには慈善事業やその他の公共財に寄付する計画を、散漫な方法で起草することに時間を費やすべきではないだろう。Nouns DAOは、連帯とアイデンティティの拠り所を再確立する必要がある。私たちは、私たちの集団行動をより欠如したものにし、動揺させた忍び寄るニヒリズムを拒否しなければならない。最終的には、Nounerは、このコミュニティの一員としてのアイデンティティに気づき、実現する必要があるのだ。

Nouns DAOの未来

では、どうすれば運命を取り戻すことができるのか。どうすれば市民社会が育つのだろう。

その答えは、イコノグラフィーと流動性のフライホイールによって、文化資本の一形態としてのNounsの価値を活用することにあると言えるだろう。結局のところ、図像は影響力であり、影響力にはイデオロギー的な責任が伴うはずである。このような派手なJPEGの背後には、積極的に意見を形成し、情熱や感情を修正し、追求する目標、賞賛する人物のタイプ、使用する言語、そして最終的にはそれが包含する参加者の性格を決定する、相互に尊重し合うコミュニティがあるはずだ。

一見、難しいことのように思えますが、文化資本を経済的価値とするNFTコミュニティにとって、決して不可能なことではないはずだ。ここで重要なのは、適切な物語を正しく活用し、適切なバックストーリーを構築することだ。

実は、これはNFT、DAOガバナンス、DeFiの登場によって初めて可能になったことなのだ。完全に匿名かつ暗号化された世界において、NFTのDAOは個人に具体的な社会的アイデンティティの感覚を提供することができる。また、個人の主観的な自由を確保するために、様々なバイブスを提供し、その中から自分の好きなものを判断することができる。しかし、NFT DAOは、ハイパーニヒリズムに終始するエキセントリックな実験ではなく、メタバースの分化した統一性に体系的に統合された、認知された生き方、部族を提供しなければならない。このアイデンティティは、潜在的な充足感を提供するために知られていなければならない。Nounerであることは、anonが(その図像によって)認知された地位を獲得するのを助けなければならない。

トルストイが、文学の価値は道徳的な改善と改革にあると考えたのはこのためである。そのため、Nouns DAOのようなNFTコミュニティにとって最大の課題は、世界構築のための丹念なプロセスに取り組むことであり、JPEGの背後に意味や象徴を置き、一体感、アイデンティティ、民主的責任感を育むことができる。哲学的な真理は、普遍的な妥当性を必要とせず、ただ一般的な伝達可能性を必要とする。

Nouns DAOの民主的な試みは、有名で成功したプロジェクトとして、最終的にはインスピレーションを与えるモデルとして機能しなければならない:そのイメージにある無数の小さなローカルDAOのためのインスピレーションの源泉で、それらはすべて独自の集団的アイデンティティーの感覚を持っている。100の花が咲くように、マイクロ・アノン・コミュニティは、それぞれ固有の決定的な原理を持って出現する。このような現実を意識し、自分たちの関心に夢中になることで、彼らは同時に、自分たち自身の形が消え、新しいサイバー市民社会が次の高い段階へと移行していく、その内的活動の無意識の道具となるのである。このような方法によってのみ、民主主義と分散化の両方が暗号の時代に生き残ることができるのだ。

-So let’s build a world around our JPEGs.

著者紹介

0xBobateaは、ハーバード大学の3年生で、哲学と経済を専攻しています。彼はKarl Marxと同様に、Dragonfly Capitalのリサーチアナリストとしてのアームチェア哲学を用いて世界を変えることに身を捧げています。彼はCryptokittiesよりも前にdogecoinを買い、2020年にAxie Infinityのコミュニティアンバサダーとして活動していた時からNFTの取引を始めました。ハーバード大学では、彼はHarvard Blockchain Clubの研究イニシアティブを設立し、彼の作品はここや彼自身のミラーサイトで見ることができます。彼はAzuki、Doodles、Nounsを含む多くのNFTコミュニティでKOL(意見の影響力を持つ人物)として活動しています。

参考文献

[1] https://nouns.wtf/noun/500

[2] https://nouns.wtf/vote/129

[3] https://nouns.wtf/vote/227

[4] Niccolò Machiavelli, Discourses on the First Ten Books of Titus Livius, bk. 1, CH. 2

[5] Machiavelli, Discourses on Livy, bk. 3, CH. 1

[6] Ibid.

[7] Villa, Dana. “Tocqueville and Civil Society.” Chapter. In The Cambridge Companion to Tocqueville, edited by Cheryl B. Welch, 216–44. Cambridge Companions to Philosophy. Cambridge: Cambridge University Press, 2006. doi:10.1017/CCOL0521840643.010.

[8] Ibid.

[9] Alexis de Tocqueville, Democracy in America. University of Virginia American Studies Program, vol. 1, ch. 5

[10] https://nouns.wtf/vote/218

[11] https://discourse.nouns.wtf/t/nounify-new-york-fashion-week/1925

[12] https://nouns.wtf/vote/129

*この文章はchatgptで翻訳したものを修正したものになります

翻訳元の文献

https://stanfordblockchainreview.substack.com/p/nouns-dao-and-the-philosophy-of-governance

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