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徳島インディゴソックス 20年のあゆみ

 野球好きの皆さんの生活の中に四国アイランドリーグ、および徳島インディゴソックスが仲間入りをし、今年でなんと20年目を迎えました。
 我々を知ってくださったきっかけは、地元のつながりやドラフト会議、選手の移籍など様々だと思いますが、今回はこの20年をひとつの区切りとして皆さんと一緒に球団の歩みについて簡単に、でも深いところまで振り返っていこうと思います!

 これを読めばあなたも徳島インディゴソックス博士!



戦績で振り返る徳島

2005年

 2005年に四国アイランドリーグが誕生し、徳島インディゴソックスも加盟した。

『インディゴソックス』の由来は、徳島の特産物である藍染の『藍』を英語にした『インディゴ』と、メジャーリーグからインスピレーションを受けた『ソックス』が組み合わさったもの。
 「挑戦と変化を楽しみ、圧倒的情熱を持って明るい未来を創造する」、そんな思いから誕生した球団の歩みは、ここから始まった。

球団公式マスコット Mr.インディー


 この年は、序盤はなかなか勝利を掴むことが出来ず苦しんだが7月に11連勝を記録すると好調の波に乗り、9月には首位に躍り出た。その後は高知ファイティングドックスとの首位争いを繰り広げるが惜しくも敗れ、シーズンを2位で終えた。

 初年度も現在と同じく機動力を生かした攻撃がチームの特徴であり、盗塁数は146個でリーグトップであった。



2006年

 チームは前年の惜敗を受け、捕手全員を入れ替えるなど大幅な選手の入れ替えを行った。
 しかしこれが裏目に出る結果となり、新入団選手の経験不足、さらに既存選手は打撃面で大きく伸び悩むなど様々な要因が重なりチームは前期後期ともに最下位となった。

 約3週間、元メジャーリーガーの多田野数人を加入させたり、アメリカの独立リーグ(セントポール・セインツ)との交流戦を行うなど新たな試みを行う場面も見られ、チームとしての在り方を模索するような一年となった。

初代キャプテン 山田大二郎



2007年

 前年のシーズン終了後、秋と春にキャンプを行い投手陣は投げ込みを行うなど練習を強化させ開幕を迎えた。

 開幕時にはオフシーズンの練習が若干の成果を挙げたが、先発ローテーションが不確立であったことや打線の主軸であった西村悟の怪我などもあり、他球団の新戦力に力負け。
 結果として投打ともに安定しないまま19連敗を経験するなどし、4期連続の最下位となった。
 チームの強みであった機動力も、中心選手が愛媛に移籍したこともあり初年度の146盗塁から78盗塁へと大きく数字を落とした。
 
 しかし、2006年に最多セーブポイントを獲得し安定した活躍を見せていた小林憲幸が千葉ロッテマリーンズから育成3巡目で指名を受け、チーム発足以来初のNPB指名という快挙を達成した。

球団史上初となるNPBドラフト指名を受けた小林憲幸

小林憲幸
 最速149km/hのストレートとフォークの組み合わせで三振を奪い活躍した右腕。徳島インディゴソックスでセーブ王となり、球団初のNPB指名を受けた。育成3位で指名を受けた千葉ロッテでは二軍で登板を積んだが支配下登録には至らず、2009年のオフに戦力外通告を受けた。



2008年

 この年、NPB経験者の梅原伸亮などの新加入した戦力に期待が高まったが、前年に続き故障者が続出。チーム打率と本塁打数はリーグワーストの成績となり、防御率もリーグ5位。
 盗塁数は128個と3年ぶりに3桁台に到達したが、前期は5位、後期は最下位とチームの低迷を止めることは出来なかった。

 前年と同様、個人タイトルの獲得者はおらず個々の実力不足が課題となった。

【プレイバック】勝利を喜ぶ2008年のナインたち



2009年

 チーム発足当初から在籍していた渡邊隆洋が福岡に移籍するなど、この年も約半分の選手が入れ替えとなる状態でスタートした。
 前期は開幕から6連敗を喫し、その後も連敗を幾度と繰り返し早々に優勝争いから離脱。2期連続の最下位となった。
 
 後期は、のちに北海道日本ハムファイターズより6位指名を受ける荒張裕司らの打撃が向上し、優勝候補の香川に勝ち越すなどチーム状態が上向きとなり、5位争いを続けたが最終的には最下位となった。

 ただ、年間25勝は前期後期制になって以降最多の勝利数であり、さらに2年ぶりにNPB選手を輩出するなどチーム状態に好調の兆しが見えた。

ドラフト指名を受けた荒張裕司

荒張裕司
 徳島インディゴソックスでは正捕手を務め、力強いスローイングと安定した打撃を武器にリーグベストナインを獲得した。日本ハムより6位で指名を受けると、二軍戦ながら大谷翔平とバッテリーを組んだり、選手不足の影響で二塁手も務めるなどさまざま活躍した。2016年オフに引退を表明すると、消防庁の採用試験を受ける意向を明らかにし、その後無事に合格。消防士として新たな道に進んだ。



2010年

 この年は福岡から復帰した角野雅俊や大川学史らを中心とした投手陣によって守り勝つ試合が増えた。前年のような大きな連敗はなく、勝率5割を達成し前期を3位で終えた。
 
 後期は香川と愛媛に大きく負け越して首位争いからは遠ざかったが勝率は引き続き5割をキープ。初年度以来5年ぶりに年間の勝率が5割を上回るという大きな成長を見せた。
 さらに、ドラフト会議では弦本悠希が広島東洋カープより7位指名を受け、2年連続で支配下枠でのNPB選手を輩出した。

ドラフト指名を受け笑顔を見せる弦本悠希

弦本悠希
 最速151km/hの直球を武器に主に救援・抑えとして活躍し、広島東洋カープより7位で指名された。広島でも救援として登板するも、2013年のオフに戦力外通告を受けた。



2011年

 この年、チームは5月上旬に首位に立つとその後一度も譲ることなく創設7年目にして初めての前期優勝を達成。

 後期優勝は直接対決で勝ちきれず香川オリーブガイナーズに譲ったものの、リーグチャンピオンシップでは1連勝し年間総合優勝を掴んだ。

 この年はチーム打率が.291で本塁打数が31本と、現在までを含めて歴代最高の成績を記録。個人タイトルでは岩根成海がリーグ史上初となる防御率0点台で最優秀防御率を、大川学史が最多勝を獲得。そのほか富永一が最多セーブを獲得し、ドラフト指名を受けた。

 悲願の初優勝を達成し、チームとしての大きな進化が見えた年となった。

史上初、防御率0点台で最優秀防御率のタイトルを獲得した岩根成海
ドラフト指名を受けた富永一

富永一
 
徳島インディゴソックスでは1年目からチームの守護神として活躍。防御率は1点台で最多セーブのタイトルを獲得すると、広島東洋カープより育成1位で指名を受けた。しかし、NPBの舞台では公式戦に登板することは叶わず2013年オフに戦力外通告を受けた、その後徳島に復帰し1年間で28試合に登板。シーズン終了後に退団を発表すると、会社員へと転身した。



2012年


 前年敗退したグランドチャンピオンシップの制覇を目指して始まった2012シーズンであったが、前期は高知ファイティングドックス以外の2球団に負け越し、3位という結果に。

 後期は夏場に4連勝するなどして首位をうかがう勢いを見せたが、首位の愛媛マンダリンパイレーツに負け越していたことが響いて前期と同様3位に終わり、グランドチャンピオンシップ出場は叶わなかった。

 この年は個人タイトルの獲得者もおらず、チームの再建が急がれた。



2013年

 この年は開幕してから5月中旬まで連敗を記録することなく、福岡ソフトバンクホークス3軍との交流戦に4戦全勝するなど好調なスタートを切った。しかしその後6連敗を喫するなどして最終的に前期を2位で終えた。

 後期は7月下旬から8月にかけて10連勝を記録し、首位に立つ。途中愛媛マンダリンパイレーツの追い上げを受け優勝マジックが消滅することもあったが、確実に勝ちを重ね初の後期優勝を達成した。

 その後リーグチャンピオンシップでは敗戦を喫することなく2年ぶり2度目の年間総合優勝を達成した。グランドチャンピオンシップでは球団初の1勝を挙げるも、その後連敗し、悔しい敗退となった。

 徳島で4年間プレーしていた東弘明がオフのドラフト会議で指名され、悲願のNPB入りを果たした。

ドラフト指名を受け、会見に臨む東弘明

東弘明
 
徳島インディゴソックスでは遊撃手のベストナインを獲得し、オリックス・バファローズより育成1位で指名を受けた。しかし、一軍出場は果たせないまま戦力外通告を告げられた。その後は野球指導者へと転身した。

【プレイバック】2013 総合優勝



2014年

 チーム創立10周年を迎えた2014年シーズン。
 前期は香川オリーブガイナーズが首位を走りその後を追う展開が続いたが、前期終了時点で勝率は並び、直接の対戦成績で勝っていたため前期優勝を達成した。

 後期は愛媛マンダリンパイレーツと首位争いを繰り広げたが、首位攻防の直接対決を制し、3期連続となる後期優勝を達成。初の前後期優勝を果たした。
 リーグ内で見ると、防御率(2.91)・打率(.267)・得点数(419)がいずれもトップの成績であり、投打のバランスの良さが強さの秘訣であったといえる。

 リーグチャンピオンシップでもその強さを発揮し、愛媛マンダリンパイレーツを下し2年連続の年間総合優勝を達成すると、勢いそのままにグランドチャンピオンシップでも3勝1敗1分の成績で群馬ダイヤモンドペガサスを破り初優勝。悲願の独立リーグ日本一を果たした。

首位打者と打点王の二冠を獲得した大谷真徳


 ドラフト会議では入野貴大と山本雅士がそれぞれ支配下枠で指名を受けた。一度に複数の支配下枠指名者が出たのはリーグ史上初めてのこと。
 さらに、前後期優勝、年間総合優勝、ソフトバンク杯優勝、グランドチャンピオンシップの制覇を同年に達成したのもリーグ初の快挙であった。

ドラフト指名を受けた2人(左から入野貴大・山本雅士)

入野貴大
 
最速153km/hの直球を武器に、徳島インディゴソックスでは先発・救援とフル回転で活躍し、最多勝とベストナインを獲得。シーズンMVPにも選ばれ、東北楽天ゴールデンイーグルスより5位で指名を受けた。入団初年度には開幕一軍入りを果たし、9月には念願の初勝利を挙げるも翌年オフに育成選手契約に。2018年に戦力外通告を受け、引退した。

山本雅士
 
徳島インディゴソックスでは入団2年目に中継ぎとして初登板。多彩な変化球を投げ分け三振を奪えることを武器にその後、先発にも挑戦すると完封勝利を挙げるなど活躍し、リーグチャンピオンシップとグランドチャンピオンシップではいずれも胴上げ投手となった。この年のオフに中日ドラゴンズより8位指名を受け入団。一軍のマウンドにも立ったが、出場機会を増やすことは出来ず育成契約に。2018年に戦力外通告を受け、その後は独立リーグを渡り歩き投げ続けた。

【プレイバック】2014.10.13 グランドチャンピオンシップ優勝




2015年

 この年、リーグは新たな試みとして選抜チームを編成し、6月に北米遠征を行った。選手は日米プロ野球のスカウトにアピールすることが出来る選抜入りを目指しつつ、ペナントレースにも照準を合わせる新たな戦い方を模索した。

 前年までの主力選手が抜けた穴は大きく、前期は3連敗を3度記録し最下位転落を何度も経験。後期は一時的に愛媛マンダリンパイレーツと首位を争うも、最終的には5.5ゲーム差をつけられ独走を許した。本塁打数と打率が大幅に落ち、残塁数が増加するなど得点力不足が課題となる一年だった。

セカンドのレギュラーとしてチームを引っ張った増田大輝


 オフのNPBドラフト会議では2名の選手の名前が呼ばれ、3年連続のドラフト指名となった。

ドラフト指名を受けた2人(左から増田大輝・吉田嵩)

増田大輝
 
徳島インディゴソックスでは1年目からチームの主軸として活躍し、独立リーグ日本一にも貢献した。2年目のオフに育成1位で読売ジャイアンツより指名を受けNPB入り。二軍や三軍で経験を積み、2017年に支配下登録を掴むとその後一軍でのスタメン出場も経験。昨年はサヨナラ安打を記録するなど、現在も代走だけにはとどまらない活躍を見せている。

吉田嵩
 
徳島インディゴソックスでは3試合連続完封勝利を記録するなどして中日ドラゴンズより育成2位で指名を受けた。しかし入団初年度の開幕前に広背筋を故障。その年はウエスタン・リーグの公式戦に出場することが出来なかった。2018年オフに戦力外通告を受け、その後はJPアセット証券に入社。2021年に現役引退を表明した。



2016年

 前年の敗戦を基に、台湾球界唯一の2000本安打を記録した「台湾球界の至宝」張泰山や、アメリカマイナーリーグに所属歴のあるハ・ジェフン、ガブリエル・ガルシアなど外国人選手を補強した。

 前期は愛媛マンダリンパイレーツと並んで首位に立ったが最後の直接対決でサヨナラ負けを喫し、0.5ゲーム差で優勝を逃した。後期も最下位に終わりチーム全体としては不本意なシーズンとなったが、橋本球史(現・守備走塁コーチ)が盗塁王、福永春吾が最多奪三振などの成績を残した。
 また、新設された読売ジャイアンツ3軍との交流戦では増田大輝が徳島に凱旋するなどし、盛り上がりをみせた。

徳島インディゴソックスでプレーしたのち、「国際スポーツとくしま親善大使」も務めた張泰山


 オフのNPBドラフト会議では、2年ぶりの支配下枠での指名を記録した。

ドラフト指名を受けた2人(左から木下雄介・福永春吾)

福永春吾
 最速158km/hを記録した直球と多彩な変化球を武器とした右腕。徳島インディゴソックスでは2年連続で最多奪三振のタイトルを獲得。阪神タイガースより6位で指名を受けると、ウエスタンリーグで最優秀防御率と最高勝率のタイトルを獲得しリーグ優勝に貢献した。3年目には一時期守護神を任されるなど活躍したが、だんだんと出場機会は減り2020年オフに戦力外通告を受けた。

木下雄介
 
スピンの効いた浮き上がるような直球と落差の大きいフォークとスプリットが武器の右腕。徳島インディゴソックスでは主にリリーフとして登板し、安定した活躍を見せた。中日ドラゴンズより育成1位で指名を受けると、2年目には育成選手で唯一一軍キャンプに帯同し実戦での内容を評価され支配下登録を掴んだ。一軍での初登板は三者凡退に抑え、しっかりと結果を残した。



2017年

 この年、前期は全チームに勝ち越す圧巻の成績を誇った。チーム打率は.280で1試合の平均得点5.6点はリーグトップ。本塁打数、防御率、盗塁数もリーグトップであり、特に盗塁数は2位の愛媛マンダリンパイレーツを20も上回る53盗塁を記録。積極的な攻撃がハマり、勝率は7割、4ゲーム差をつけ前期優勝を果たした。

 一方で後期は開幕から5連敗を喫するなど苦しい展開が続き、前期はリーグトップだった選手指標も年間通算では順位を下げ、最終戦の高知戦に敗れ年間勝率は1位ながらも後期シーズンは最下位となった。

 リーグチャンピオンシップでは第4戦を完封するなど投手力で香川打線を封じ、3年ぶり4度目の年間総合優勝を達成。その後のグランドチャンピオンシップでも3勝2敗で信濃グランセローズを破り、2度目の独立リーグ日本一の称号を手にした。
 最終戦は雨天コールドゲームであったため、雨の降る中グラウンドで喜びを分かち合う選手の姿が印象的であった。

当時の様子はこちら


二刀流として活躍し、のちに韓国代表となったジェフン
ドラフト指名を受けた2人(左から大藏彰人・伊藤翔)

伊藤翔
 
直球と変化球のバランスが良いオーソドックスな投手。徳島インディゴソックスでは主戦投手として活躍し、防御率はリーグ2位の成績を残して埼玉西武ライオンズより3位指名を受けた。入団初年度から開幕一軍入りを果たしNPB初勝利も挙げたが、その後は安定した成績を残すことが出来ず2021年にはトミージョン手術を行うことを決意。昨年実戦復帰し、再びの支配下契約へ腕を振り続ける。

大藏彰人
 
直球とカーブを操り三振を奪っていく本格派右腕。徳島インディゴソックスではグランドチャンピオンシップの第3戦で8個の三振を奪い完封勝利を挙げドラフトへ猛アピールし、結果中日ドラゴンズより育成1位で指名を受けた。入団初年度は二軍での登板を重ねていたが、中日入団2年目に胸椎黄色靭帯骨化症を患った。手術を受けるもその後は良い結果を残すことが出来ず、2020年オフに戦力外通告を受けた。

【プレイバック】 2017.10.01 リーグチャンピオンシップ優勝



2018年

 この年から、前年限りで引退した橋本球史野手コーチとして就任。

 前期のホーム初勝利はなんと開幕から1か月ほど経った5月であり、チーム防御率・打率はリーグトップながら全体の成績は上がらず、勝率.281で2期連続の最下位となった。

 後期は途中8連勝を記録するなど優位に進め、8月中盤に優勝マジックが点灯。しかし終盤に猛烈な追い上げを見せた愛媛マンダリンパイレーツに逆転され、優勝を逃した。

 失策数は前年の53から大幅に減らし29となりチーム打率も.270とトップながら、投打が噛み合わないことが多く、逆転負けを喫する試合も多かった。

最多盗塁のタイトルを獲得した岸潤一郎


 NPBドラフト会議では後期リーグ戦でアピールを続けた鎌田光津希が千葉ロッテマリーンズより指名を受け、5年連続のドラフト指名を記録した。

ドラフト指名を受けた鎌田光津希

鎌田光津希
 
最速155km/hを記録した直球と多彩な変化球を武器とした右腕。徳島インディゴソックスでは17試合に登板し防御率は2.49と安定した成績を残し、千葉ロッテマリーンズから育成1位で指名を受けた。千葉ロッテに入団後、2年間イースタンリーグで登板を積むも支配下登録には至らず、2020年に戦力外通告を受け、現役引退を表明した。



2019年

 チームは前年の逆転負けの多さを糧に粘り強く戦い続け、八度の逆転勝ちを収めるなどし前期優勝を果たした。打線は得点数(134)と盗塁数(65)でリーグトップ。中でも平間隼人の22盗塁には他チームの指揮官も舌を巻いた。打線の頑張りに投手陣も応え、前年の防御率から1以上改善し、与四球数はリーグ最少であった。

 後期は『若い選手を積極的に起用する』方針を取った結果、3位に終わり優勝を逃した。しかし当時の牧野監督は「チーム力は上がった」と振り返り手応えを伺わせた。

 2年ぶりの出場となったリーグチャンピオンシップでは順調に勝利を重ね年間総合優勝を達成。グランドチャンピオンシップでは第5戦までもつれるも粘り強さを欠かず、3勝2敗で3度目の独立リーグ日本一を掴んだ。

最多盗塁のタイトルを獲得した平間隼人


 オフのNPBドラフト会議では支配下指名も含めて3名が名前を呼ばれた。

ドラフト指名を受けた3人(左から平間隼人・上間永遠・岸潤一郎)

上間永遠
 埼玉西武ライオンズより7位で指名を受けた。1年でNPBに行くという目標を掲げ入団した徳島インディゴソックスでは防御率1.40を記録し最優秀防御率を獲得し、ベストナインにも選ばれた。目標通りNPB入りを果たし、ライオンズ入団1年目は身体作りに専念し2年目に一軍初登板。好投を続け3試合目に念願の初勝利を挙げるもその後は好投続かず二軍に降格。同年オフにトミージョン手術を受けることを決めた影響もあり育成契約となった。多彩な変化球を武器に、再び一軍のマウンドに立つ姿を心待ちにしている。

岸潤一郎
 同じく埼玉西武ライオンズより8位で指名を受けた。大学時代に受けたトミージョン手術の経過が思わしくなく、一度は野球と完全に縁を切ったが母親の後押しもあり徳島で再スタートを切った岸。徳島インディゴソックスでは伸び悩む苦しい時期もあったが、打撃の勝負強さと機動力などが光りNPB入り。埼玉西武では内外野を守れるユーティリティ性を活かし少ない出場機会をモノにしていき、2年目には中堅手としての先発起用を掴みプロ初のサヨナラ打を放つなど大きな飛躍を遂げた。怪我を経験し新たな壁が現れたが、不屈の精神でもう一度這い上がってほしい。

平間隼人
 読売ジャイアンツより育成1位指名を受けた。一度は徳島インディゴソックスを退団し一般企業で社会人となるも野球への思いが消えることは無く徳島に復帰。安定した打撃成績を収め盗塁王も獲得し、悲願のNPBへ。ジャイアンツ入団2年目に出塁率5割超えを記録しファーム月間MVPを獲得。そのまま支配下契約を勝ち取るも一軍での出場は代走での1試合のみで、再び育成契約となり翌年オフに戦力外通告を受けた。昨季から北九州下関フェニックスでプレーし、二塁手としてベストナインを獲得。今季より兼任野手コーチとなる。



2020年

 この年は新型コロナウイルスの影響により開幕日が2度も延期。さらには公式戦開幕日が未定と発表されるなど、先の見えない状況に不安が生じた。
 その後、初年度以来初となる1シーズン制(前期・後期の区分無し)での実施が決まり、6月20日に待望のシーズンが幕を開けた。

 シーズン序盤から香川との首位争いを展開し、8月に6連敗を喫するなど苦しい時期もあったが9月末からは首位を独走。終盤に高知ファイティングドッグスの猛追を受けるも直接対決に勝利し2年連続のリーグ優勝を果たした。

 この年、ドラフト指名を受けた戸田懐生が最多勝と最多奪三振の二冠を獲得したことも含め投手陣が踏ん張り、チーム防御率は2.15と歴代最高の成績を残した。

首位打者と最多盗塁の二冠を獲得した新城翔太
ドラフト指名を受けた2人(左から行木俊・戸田懐生)

行木俊
 広島東洋カープより5位指名を受けた行木俊は、右肩の故障と向き合い続ける選手生活を送った。徳島インディゴソックスに入団した初年度も右肩の故障の影響で公式戦の登板はなく、2年目途中まで練習生契約であった。それでも日々トレーニングに励み最高球速を138km/hから150km/hまで向上させ、計10登板ながらNPBへと進んだ。しかし、広島に入団後に右肩痛が再発。3年目にしてようやく満足に投げられるまでに回復したが、その年のオフに戦力外通告を受けた。なお、今年からは北九州下関フェニックスでプレーすることが決まっている。

戸田懐生
 読売ジャイアンツより育成7位で指名を受け戸田懐生は高い奪三振能力を誇る右腕。徳島インディゴソックスには2019年の後期から入団し、クローザーを担うと一度も失点することなくシーズンを終えた。2年目は先発に転向しリーグトップの139奪三振、奪三振率10.75を記録し打者を全く寄せ付けない圧倒的な投球を披露。ジャイアンツに入団後は同期入団選手の中で最も早く6月に支配下登録を勝ち取り一軍登板を経験するも、その後目立った結果を残せず再び育成契約に。現在はフォームに細かい調整を加えるなどし、支配下への返り咲きを狙っている。

【プレイバック】2020.10.24 総合優勝



2021年

 コロナウイルスの陽性反応が球団内で確認され、4月29日から5月21日までチームは活動を休止することとなった。復帰後初戦は勝利したものの、その後5連敗を喫するなどチーム状態は上がらず、前期後期共に勝率は5割を下回り3位に終わり、リーグ3連覇を逃した。

 個人タイトルとしては村川凪が40盗塁で盗塁王を獲得。さらに佐藤靖剛が打点王、宇佐美真太がベストナインを獲得するなど、明るい材料は見られた。

最多打点のタイトルを獲得した佐藤靖剛
ドラフト指名を受けた2人(左から古市尊・村川凪)

村川凪
 横浜DeNAベイスターズより育成1位指名を受けた村川凪は、徳島インディゴソックス入団後の1年間で大きく成長を遂げた。前期は15盗塁ながら打率が.203と振るわなかったが、後期を経て打率は.265と大幅に上昇。もちろん盗塁数はリーグトップの40盗塁を記録し、走れるだけではなく打撃面でもチームの戦力となってみせた。昨年はイースタンリーグ108試合に出場し盗塁王を獲得。徐々に実力を発揮し今年のキャンプではA班に振り分けられたが、走塁練習で肉離れを発症し無念の離脱。その悔しさをバネに、支配下への道をひたむきに走り続ける。

古市尊
 同じく育成1位で埼玉西武ライオンズより指名を受けた。徳島インディゴソックスでは自慢の強肩を活かし出場機会を増やしていき、盗塁阻止率はリーグトップの.571(16/28)を記録。打撃面に課題を持っていたが、一芸でNPBへの道を開くという独立リーガーならではの強みを体現した。昨年、悲願の支配下登録を勝ち取ると一軍では12試合でスタメンマスクを被るなど実りのある一年となった。その経験を糧に、チームを牽引するような正捕手へと成長していってほしい。



2022年

 この年から、監督に岡本哲司が就任。
 前期は5月上旬に首位の高知ファイティングドッグスと0.5ゲーム差まで縮め、新入団の井上絢登が7本のホームランを打つなどどうにか持ち堪える試合を続けたが、終盤に勝ちを重ねることが出来ず、3位という結果に終わった。

 後期は7月終了時点で9勝4敗と順調に進み、首位をキープする。さらに野手転向した日隈モンテルが頭角を表し、茶野篤政が首位打者、井上絢登が最多打点、最多本塁打を獲得するなどした打撃陣の活躍が目立ち優勝を果たした。

打撃でチームを引っ張った3選手(左から 井上絢登・日隈モンテル・茶野篤政)


 その後のリーグチャンピオンシップでは高知投手陣に主力が抑えられ、1勝も挙げることが出来ず2年ぶりのリーグ年間優勝とはならなかった。

 NPBドラフト会議ではついに10年連続の指名を達成。3名の選手をNPBへと送り出した。

ドラフト指名を受けた3人(左から日隈モンテル・中山晶量・茶野篤政)

茶野篤政
 オリックス・バファローズより育成4位で指名された茶野篤政は、入団初年度の3月に支配下登録を掴んだシンデレラボーイ。徳島インディゴソックスではリードオフマンとしてチームを牽引し、首位打者を獲得。卓越したバットコントロールと積極的な走塁を武器に、ベンチスタートであった開幕当初から主力選手に昇りつめた努力の天才である。NPBでの初打席では三塁への内野安打で出塁し、その後盗塁を成功させるなど大舞台でも変わらず確かな実力を発揮。さらに育成出身ルーキーとしては初めてとなる入団初年度での満塁ホームランを記録し、記憶にも記録にも残る大躍進を遂げた。貪欲さを欠くことなく、更なる飛躍を期待したい。

中山晶量
 北海道日本ハムファイターズより育成2位で指名を受けた。明治大学時代は登板機会が少なかったもののオープン戦では150km/hを記録し話題となった。徳島インディゴソックスに入団後は22試合に登板し、先発と救援の起用に柔軟に対応する器用さを見せてチームを支えた。投球全体のストライク率は66.24%を誇り、最速150km/hのストレートとキレのあるフォークで打者をねじ伏せていく本格派右腕である。支配下登録、そして一軍のマウンドを目指し躍進してほしい。

日隈モンテル
 同じく育成2位で埼玉西武ライオンズより指名を受けた日隈モンテルは、高い身体能力を活かしたド派手なプレーが魅力の外野手。徳島インディゴソックスへは投手として入団したが、シーズン途中で野手転向。野手としての出場試合数は少ないが打球方向に偏りがないことと俊足を活かした内野安打の多さが魅力であった。12試合で10盗塁を決めるなどとにかくインパクトのある活躍が多かったモンテルは、埼玉西武入団後のイースタン公式戦初打席で初安打を記録するなどNPBの舞台でもその片鱗を見せており、支配下登録に向けて一層邁進していくだろう。

【プレイバック】2022.09.17 後期優勝



2023年

 前期は序盤に先行した愛媛マンダリンパイレーツを追う形となったものの、5月に首位に立つとそのまま首位を譲らず、6月3日に前期優勝を果たした。後期も勢いそのままに勝ちを重ね、8年ぶりに前後期優勝を達成した。

 リーグチャンピオンシップでは初戦に勝利し、前後期制覇によるアドバンテージ(1勝)を含めた2勝の成績で3年ぶりとなる年間総合優勝を達成した。

【プレイバック】 2023.09.22 総合優勝


 4年ぶりの出場となったグランドチャンピオンシップでは準決勝で敗れ敗退となったが、前期・後期・ソフトバンク杯・年間総合優勝の四冠を9年ぶりに達成した。

 オフに行われたドラフト会議では、独立リーグ史上最高順位タイの2位指名を受けた椎葉剛を皮切りに総勢6名が指名を受け、球団史上最多人数をNPBへと送り出した。

ドラフト指名選手は過去最多の6名
(上段:左から藤田淳平・シンクレアジョセフ孝ノ助・谷口朝陽
下段:左から宮澤太成・椎葉剛・井上絢登)

椎葉剛
 独立リーグにおける歴代最高順位タイとなる2位で阪神タイガースより指名された椎葉剛は、社会人野球を経験したのち徳島インディゴソックスへ入団。3年間所属した社会人チームでは公式戦での登板はわずか1試合であった。徳島に入団後、これまでの悔しさを糧にウエイトトレーニングに取り組み1年で最高球速を11km/hもアップさせた努力の剛腕である。最速159km/hのストレートと安定した被打率の低さが魅力。幼少期からファンだった阪神タイガースへの入団を叶えた右腕の夢舞台でのさらなる躍動が楽しみだ。

宮澤太成
 埼玉西武ライオンズより5位指名を受けた宮澤太成は、北海道大学出身者として初めてのNPB選手となった。大学時代は怪我に悩みながらも最速151km/hを計測し、ベストナインや最優秀選手賞を獲得するなどチームのために投げ続けた。徳島インディゴソックスに入団後すぐには思うような結果が出なかったが、ソフトバンク戦での好投をきっかけに急成長。夏場には最速155km/hを記録し、NPBへの道を切り拓いた。勢いのあるストレートと落差の大きいスプリットが武器の頭脳派右腕。北の大地からの期待を背負い、マウンドで躍動してほしい。

井上絢登
 横浜DeNAベイスターズより6位指名を受けた井上絢登は、2年連続リーグ本塁打王と打点王の二冠に輝いた打撃が自慢。福岡大学時代には4番打者としてチーム初の全日本大学野球選手権ベスト4入りに貢献し、ベストナインや打点王に選ばれるも指名漏れを経験。その後徳島インディゴソックスに入団し、ひたすらに技術に磨きをかけ続けた不屈の精神を持つ。パワーだけでなく出塁率もリーグトップを記録するなど、四国で大暴れした圧倒的な打撃を引っ提げ、さらに大きな舞台での飛躍を期待する。

シンクレア・ジョセフ・孝ノ助
 埼玉西武ライオンズより育成1位で指名を受けたのは、埼玉県生まれカナダ育ちのシンクレア・ジョセフ・孝ノ助。大学時代はアメリカでプレーするもなかなか満足のいくアピールが出来ず、日本で野球をしたいと志し徳島インディゴソックスに入団した。高い自己分析能力を持ち、芯を捉えさせない変化球を操りゴロを量産していくタイプの投手であるため鉄壁の二遊間を誇る埼玉西武との相性は抜群だろう。WHIP 0.78という被打率の低さが魅力の技巧派左腕は、支配下獲得へ向けて歩みを止めない。

谷口朝陽 
 同じく埼玉西武ライオンズより、谷口朝陽が野手として育成2位指名を受けた。「1年でNPBに行く」という強い意志を持って徳島インディゴソックスに入団した谷口。投げては最速153km/h、打っては破壊音を残す強烈な打撃を披露する、強靭な肉体の持ち主。体力測定や実戦で見せる確かな身体能力と、天性の才能を持ち合わせたスケールの大きいロマン砲の成長曲線は果てしなく大きい。夢のNPBの舞台でさらなる進化を遂げ、生まれ育った徳島に明るいニュースを届けてほしい。

藤田淳平
 福岡ソフトバンクホークスより育成7位指名を受けた藤田淳平は、指名の瞬間に大粒の涙を流した。東亜大学時代には3年春にリーグトップの防御率を記録し、春と秋に2季連続のベストナインを受賞するもドラフト会議では指名漏れという結果となった。徳島インディゴソックスに入団後はチームのためにフル回転で腕を振り続け、最優秀防御率を獲得するなど優勝に大きく貢献した。得点圏被打率は.086と驚異的な数字を誇る奪三振能力の高い左腕は、持ち前の強心臓を披露し、悲願の一軍を目指して突き進む。



ドラフト年表



おわりに

 ここまで読んでいただきありがとうございました!
 長きにわたり徳島インディゴソックスを応援してくださっている方、懐かしい選手名はありましたか?
 最近徳島インディゴソックスを知ってくださった方、新たな発見はありましたか?

 徳島インディゴソックスは、上手くいくときもいかないときも、どんな時もファンの皆様に支えられてここまで歩みを続けることが出来、今年めでたく20周年を迎えました。
 これからも進化を止めず、更なる高みを目指して精進していきますのでぜひ温かく見守っていただければと思います。

 きっと今年も独立リーグは、徳島インディゴソックスは、面白いです!!


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