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「ヤシノミ作戦」や「政を祭に」から考える、ネットが変える日本の選挙の形

総選挙の投票日まで1週間となり様々な予測が飛び交っていますが、4年前の総選挙から明らかに変わったと感じられるのが、ネットを活用した選挙活動の多様化でしょう。

特に、今回の選挙で印象的なのは、有権者側でボトムアップに様々なプロジェクトが動いていることです。


「落選運動」をする「ヤシノミ作戦」

例えば、最も印象的なものとしてあげられるのが、「ヤシノミ作戦」という不思議なタイトルのプロジェクト。

これは、選択的夫婦別姓と同性婚に賛成しない政治家を落選させることを明確に掲げた「落選運動」を行っているもので、21日には記者会見も行われていました。

従来のこうした選挙の応援活動というと、特定の党や候補者を応援するものという印象が強いと思います。

ただ、このヤシノミ作戦の興味深いのは、発起人の青野さんが岸田総理を応援する立場を取りながらも、自民党内に多数いる選択的夫婦別姓や同性婚に反対する議員の落選運動を行っている点です。

この活動はすでに今年7月の都議選でも実施されており、選択的夫婦別姓制度の導入に反対と答えていた候補10人を落選させたと報告。
今回の選挙期間中にもクラウドファンディングを実施しており、すでに目標金額の6割にあたる200万円以上を集めていますから、どのような影響をもたらすのかも注目されるところです。

選挙のネット活用が遅れてきた日本

実は、日本で選挙期間中のネット活用が可能になったのは、2013年4月のこと。まだ8年ちょっとしか経っていません。

また、ここまでの選挙においては、選挙期間中のネット活用は解禁されたものの、日本はネットをあまり活用していない高齢者の方が投票率が高いこともあり、それほど投票結果に影響を与えていないという見方をしている専門家が多かったのが現実。

実際の選挙活動は、ネット選挙解禁後も、あいかわらず街頭演説や選挙カーでの名前の連呼、そして駅前や商店街で街ゆく人に手を振ったり握手をするという、いわゆる「どぶ板選挙」が中心となってきました。

ただ、今回の総選挙は初のコロナ禍での総選挙ということもあり、密を前提にした集会や握手まわりができなくなったことも影響し、候補者のSNS活用も積極化している模様。

候補者の8割がTwitterやFacebookで発信している上に、YouTubeやInstagramの利用も増加傾向にあるようです。

こうした候補者によるネット発信と呼応するように、有権者側のネット活用も増えてきているようです。

さまざまなハッシュタグの活動が展開

実際に、冒頭で紹介したヤシノミ作戦以外にも、さまざまな有権者によるネットを活用した活動も増えています。
特徴的なのはどのプロジェクトも、なんらかのハッシュタグを軸に活動をしている点です。

例えば、小栗旬さんやローラさんなどの著名人が「#わたしも投票します」というハッシュタグで、若い世代に投票を呼びかけた「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画は、再生数が55万を突破。

また、U30世代のための選挙の教科書メディアというキャッチコピーで、インスタグラムで選挙に関する発信を若者向けに続けているNO YOUTH NO JAPANは、フォロワーが7万4千人を超えているアカウント。

こちらは「#だから選挙行かなきゃ」というハッシュタグでキャンペーンを展開するようです。

さらに、一般社団法人UMFとジョイサウンドが企画する「マツリゴトJAPAN2021」は、「#政を祭に」というハッシュタグを軸に、投票をした人だけが参加できる音楽フェスを企画。

なんと投票済み証や投票所の看板の写真をチケット代わりに、オンライン配信のイベントを観ることができたり、プロジェクト賛同企業のクーポンを利用できたりするという企画を実施しているのです。

昭和から変わらなかった選挙の光景は変わるか

もちろん、それぞれのプロジェクト一つ一つは、それほど大きくメディアで取り上げられているわけではないようですし、これからどれぐらい盛り上がるかはわかりません。

ただ、こうしたそれぞれの企画の印象的なのは、特定の政党や候補者への応援を呼びかける形ではなく、選挙そのものへの興味を喚起しようと活動されている点でしょう。

これまで、日本の選挙活動と言えば、街頭演説や選挙カーでの名前連呼など、興味のない人からすると騒音や迷惑行為と言われることも少なくない、昭和からほぼ変わらない選挙活動が中心でした。

その結果、多くの有権者が、候補者一人一人の信条や理念ではなく、知名度や所属政党を元に投票したり、そもそも選挙自体から興味を失ってしまっていたのが現実でしょう。

しかしネット選挙解禁から8年経ち、ネットを組み合わせて候補者を分析したり、若い世代に選挙をお祭りとして楽しんでもらおうという活動が増えることで、少しずつ日本の選挙の風景が変わりつつあるように感じます。

こうした変化が選挙結果自体にどういう影響をもたらすのか、それともまだまだ影響しないのか。
今回の総選挙の結果を注視したいと思います。

この記事は2021年10月24日Yahooニュース個人寄稿記事の全文転載です。


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