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快挙のバスケ日本代表に学ぶ、ファンを巻き込むSNSの使い方

(画像出典:バスケットボール日本代表公式アカウント)
この記事は2023年9月8日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。

バスケ男子日本代表のW杯が終わって一夜明け、まだ興奮冷めやらぬという方も少なくないのではないでしょうか。

今回のW杯では、17年ぶりのW杯勝利やヨーロッパ勢からの歴史的初勝利に、史上初となるW杯3勝、そして48年ぶりの五輪自力出場など、様々な日本男子バスケにおける快挙を成し遂げてくれました。

その裏側でもう一つ注目したいのが、バスケ日本代表におけるSNSの活用方法です。
 

大会中のSNS活用はもはや普通に

もちろん、いまやオリンピックは当然のこと、サッカーにしても、野球にしても、世界大会において代表チームのSNS活用がされるのは普通になっていますから、バスケ日本代表がSNS活用に積極的だったと言っても、それほど驚く人はいないかもしれません。

例えば、バスケットボール日本代表の公式SNSアカウントには、日本代表の写真や動画の引用投稿がずらりと並びます。

特に公式動画の活用は、2019年のラグビー日本代表のツイッター活用の頃から、日本代表の世界大会で一般的になった取り組みと記憶しています。

また、今回の日本バスケットボール協会のYouTubeアカウントでは、毎日の様に「INSIDE AKATSUKI」というタイトルのドキュメンタリーが公開されているのが印象的でした。

こうした取り組みはサッカー日本代表がカタールW杯で展開していた「日本代表 Team Cam」を参考にされていると考えられます。

ただ、そうした中で、今回のバスケW杯において、非常にバスケならではのSNS活用だったなという印象なのが、選手や関係者の方々が個人のSNSでも、ファンであるブースターとコミュニケーションを取る形で大会自体を盛り上げていったことです。
 

あえてネガティブな問題提起も

ある意味、最も象徴的な投稿と言えるのが、渡邊雄太選手の座席販売への問題提起の投稿でしょう。

初戦のドイツ戦で、不可思議な形で空席が目立つ形となった問題に対して、自らのSNSで問題提起をしたことは、ファンを巻き込んで大きな議論を呼び、メディアでも大きく取り上げられる結果となりました。

大会運営サイドに大会出場中の選手が苦言を呈すというのは、リスクも大きい行為であることは間違いありません。

ただ、そこをあえて歯に衣着せず、本音で問題提起をしたことは、渡邊雄太選手がいかにこの大会に賭けているかを知らしめる結果となりましたし、これを受ける形で大会側が早期に空席問題を解消したことが、その後の試合での凄まじい日本の応援を生む結果につながるわけです。
 

何度もファンに声援を呼びかけ

渡邊雄太選手は、パリ五輪出場の可否に自らの日本代表引退をかけるなど、様々な形でこの大会に本気で向き合っていることを表明していますが、試合中にも何度も何度も、ファンにさらなる声援を呼びかける姿が見られました。

これは、明らかにNBAで5年も活躍を続けている渡邊雄太選手ならではの行動と言えます。
特に米国のNBAでは、他のスポーツ以上にファンの声援がホームコートアドバンテージを生むと言われています。

フリースローの時に相手のチームの選手の集中を妨げるために大きな声をあげるだけでなく、あの手この手で妨害するのは有名ですし、味方チームのプレイには大きな声援をあげる一方で、相手チームのシュートが決まってもスタジアムが全く反応せず静かになるというのが普通の光景です。

日本では、慶応高校の夏の甲子園の決勝での応援が批判を集めたように、相手チームにもある程度気を使ったお行儀のよい応援をするのが美徳とされる国ですので、ファンの声援も大人しい面があるのは間違いありません。

そこで、渡邊雄太選手は沖縄を真の意味でのホームコートにするために、繰り返し繰り返し、様々な形でファンに声援を呼びかけていたのでしょう。
 

チェアマン自ら応援を拡散希望

さらに観客を巻き込む形を作る上で、渡邊雄太選手に次いで印象的だったのが、Bリーグの島田慎二チェアマンのSNS投稿でしょう。

島田チェアマンは、ベネズエラ戦の早朝に「拡散希望」とつけたファンへのお願いを個人のSNSに投稿。

来場予定のファンに、SNSや自身のnoteの記事を通じて、具体的にスタンディングオベーションやディフェンスコールをお願いしたのです。

この島田チェアマンの踏み込んだ投稿に、ファンも様々な形で賛同を表明。
SNS上でも話題になった結果、スポーツ新聞等のメディアが記事化する展開にもなっています。

ちなみに、島田チェアマンは、ドイツ戦で問題となった空席問題についても、いち早く自らのnoteで「ドイツ戦の空席問題について」という記事を投稿。日本のスポンサーによる問題という誤解を訂正するための行動も取っています。

実は島田チェアマンは、毎日の様に個人のSNSを投稿するだけでなく、ファンの声にも耳を傾けているからこそ、こうした柔軟な対応ができると言えるでしょう。
 

天井が吹き飛ぶような声援に

こうした柔軟なファンとのコミュニケーションを、公式アカウントではなく、選手やチェアマン個人のアカウントで積極的に取られているのが、ファンと選手の距離が近いバスケならではの取り組みと言えるのかもしれません。

こうした選手やバスケ関係者のアリーナ内外での声援を呼びかける努力が実を結び、最後のカーボベルデ戦においては、解説の馬瓜エブリンさんが「アリーナの天井が吹き飛びそう」と表現するほどの凄まじいホームの声援につながったわけです。

初戦のドイツ戦が空席が目立つ状態でのスタートだったことを考えると、10日弱で、日本のバスケにおける応援は激変したと言えます。
これは当然日本代表の決して諦めないプレーや勝利の積み重ねがありますが、天井が吹き飛ぶほどの声援が生み出されるのには、地道なアリーナ外での努力も貢献しているわけです。
 

ファンの声援は確実に選手に力を与える

もちろん、今回のバスケ男子日本代表の快挙は、選手や監督の日々の練習の積み重ねや努力から成し遂げられたことは間違いありません。

しかし、紙一重だった試合の一つ一つを勝利する過程で、ファンの応援が選手の力になったことも間違いないでしょう。

渡邊雄太選手が試合後のSNSに、会場の応援だけでなく、「会場に来れなかった方々からもSNSなど通して応援をずっと感じてました」と投稿されているのが非常に印象的です。

SNSでのファンの声援を選手が求めるという行動は、2018年のサッカーW杯ロシア大会での、長友選手の「元気玉作ってるんで、エネルギー送ってください」という投稿が象徴だったと記憶しています。

その後、東京オリンピックの騒動などを経て、SNS上での選手への誹謗中傷問題が注目されるようになり、大会期間中の選手のSNS投稿を控える傾向も一部では強くなりました。

しかし、今回目の当たりにしたように、やはりファンの心の底からの応援を引き出すのは、渡邊雄太選手のような個人の熱意であるはずです。

そういう意味で、今回の渡邊雄太選手や島田チェアマンの、ファンを巻き込み、チームや選手の力に変えるSNSの投稿の仕方は、今後のスポーツにおける大会期間中の個人によるSNS投稿のあるべき姿としても、一つの指標になるやり方だったと言えるかもしれません。

この記事は2023年9月8日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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