軋轢 #12

「あなたが雄司君ね!いつも優里から話聞いてるわ。仲良くしてくれてありがとう」優里の母親は優里の見た目に良く似ていてスラっとした手足と大人びた顔つきの女性だった。「こちらこそいつも仲良くしてもらってます」雄司は慣れない敬語を恥ずかしそうに使いながら優里に向き直した。「お母さん、私もう大丈夫だから。仕事中でしょ?」「わかった。じゃあ私戻るね。雄司君、優里のことお願いしてもいいかな?」「あ、え、はい...」照れながら答える雄司に微笑みをかけて優里の母は病室を後にした。2人になってからは沈黙の時間が続いた。こんなときなんて声をかければいいのか、雄司には分からなかった。「あ、そういえばさ映画館初めてだったの?今まで一回も無かったのかよ」「あ、うん... 暗いとこ怖くてさ」「何だよその理由」2人はこのままたわいもない話をして笑い合った。しかし雄司は優里や彼女の母親が何かを隠していることに薄々感づいていた。

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