軋轢 #6

 「琴美...なのか...?」と雄司は小さくつぶやいた。だが直ぐに思い直し席に戻った。杉山雄司と桧山琴美は幼馴染だった。同じ病院で生まれ家も近所で毎日一緒に遊んでいた。子供ながらにも「大きくなったら俺たち結婚するんだもんな!」と話すほど仲が良かった。しかし、彼女は中学に上がる寸前に突然死した。そんな琴美と全く同じ目を持った少女と雄司は2秒間見つめあったのだ。「琴美にそっくりだ...」彼はこの感情を心の奥深くにしまい、思い出す事を禁じた。同時に優里も彼と初めて顔を合わせたはずなのに、小学校の友達に久しぶりに合うような懐かしさを感じていた。優里はすぐに自転車の彼であることを思い出し、彼への興味が収まらなかった。というよりも彼になぜここまで惹かれているのか気になって仕方なかったのだ。

 しかしここから数ヶ月間、雄司と優里は会話を交わすことも目を合わせることすらなくなった。

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