オッドアイ

 「俺は目が合った人の心情を読み取ることができる。」
 この世界の人間は必ず1つ特別な能力を持って生まれてくる。物質の形状を変えられる者、体内から発火できる者。はたまた、家電を遠隔で操作できる者など、需要の有無に問わず様々な能力を有しているものが共存している。国民は持っている能力でランク付けされ、社会への貢献度に応じて酷い差別やいじめを受けるものもいた。しかし大人や教育機関は社会の歯車を止めないために見て見ぬふりするに他なかった。
 2083年 第6東京都。清水煇は希少性の高い能力を有したエリートが集まる高校に通っていた。彼の周りには火を操る者、動物と会話できる者など、能力者の中でも希少で洗練された力を発揮できるものが集まっている。その中でも煇は優秀でいつもトップだった。だが煇には友人は1人もいなかった。というより、人間が嫌いなのだ。小さい頃は明るくはつらつで人の輪の中心にいるような子供だった。しかし歳を重ねるごとに能力柄、周りの人間の本心や腹黒い部分が見えてきて人間を信じられなくなってしまったのだ。彼は常に群れず1人で本を読み耽っていた。この世界では持ち合わせた能力に応じて政府から職業と結婚相手を強制的に決められる。彼が高校卒業後に就く職業は警察だった。この世界での警察は、戦闘に向いている能力を有していたり、場を統率出来るような能力を有しているものしかなれない憧れの職業である。しかし彼はそれが憂鬱だった。

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