軋轢 #7

入学してから2ヶ月が経ち、高校生活に慣れが出始めた。そんな時学生にとっては一大イベントである席替えが行われた。雄司と優里は窓際の後方の席で前後になった。琴美の死について前向きになれつつあるときに、琴美を彷彿とさせる目を持つ優里が前の席にいることは非常に心が痛かった。一方優里は動揺を隠せていなかった。ここまでの2ヶ月間、優里はずっと雄司を観ていた。クラスではしゃいで先生に怒られている時も、放課後誰よりも早く外に出てグラウンドに向かう姿も優里が憧れていた青春そのものだった。そんな今まで背中ばかりを目で追っていた淡い初恋の相手が、今度は自分の背中を見つめていることに胸のざわめきを感じていた。「なぁ、黒板見えない」後ろからけだるそうな声が聞こえた。「ごめん...」「別に謝ることはねーけどさ」「ちょっと左避けるね」「サンキュー」2人は目を一度も合わせることなくお互い前を向いたまま、初めての会話した。優里と雄司は互いに初めて話す相手なはずなのに、懐かしさと安心感を感じていた。

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