軋轢 #15

 
雄司は、いつもより重い自転車のペダルを漕ぎながら罪悪感とやるせなさを噛み締めていた。5分ほど自転車を漕ぐと、いつもの路地裏でやや下を向きながら歩く華奢な背中を見つけた。「優里。ありがとうな」息を切らしながらも聡の表情は澄んでいた。「わざわざこっちまで来てくれたんだね。ありがとう。」「こんな時間だし、俺のせいで帰るの遅くなったんだし送るよ」「え?いいの?明日、はやくないの?」「大丈夫だよ。」2人は街灯と月の光だけが灯る道をゆっくりと歩き出した。約1月会話のなかった2人は互いの心配とは裏腹に、尽きることなく言葉が交わされていた。「明日、応援行くから、点とってね。」「はずいわ、見に来んのか」「うん、聡くんと」「ま、なんでもいいよ。来ても来なくても点とるしな」2人の笑い声は静かな夜の街に吸い込まれていくようだった。「永遠につかなければいいのに」2人のそんな思いは届くはずもなく、優里の家に到着した。「じゃ、またな」「うん、頑張ってね」

雄司は大会で優勝したら、優里に想いを伝える覚悟をしていた、一方で優里は自分の胸に手を当てて「もう隠してるわけにはいかないよね」と未だに見慣れない鏡に映る自分に語りかけた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?