オッドアイ #2

カーテンの裾から光が刺す朝6時30分、気に入っている星野源の「week end」で煇は目を覚ました。「はぁ」とため息をついて家族のもとへ向かう。このため息は日に日に大きくなっている気がしていた。「おはよう」とか細く挨拶をすると、優しい笑顔の母が「おはよう」と返す、そして父は相変わらず気難しい顔でコーヒーを片手に新聞を読んでいる。いつも通りの朝。だが煇は何かいつもと違うものを感じていた。近所のイチョウ並木を抜けて駅に着くと、サラリーマンと学生でごった返す車両に乗り込む。この時間は煇にとって非常に憂鬱な時間だった。彼の、目が合った人の心情を読み取る能力と朝の人間というのは非常に相性がよくない。だがおかしい、今日は周りの雑念が全く入ってこない。煇にとってそれは幸運なことだが、過去に体調が悪く能力が発揮できなくなることが多々あったので自分の心身の疲労を痛感することにもなった。

 学校に着くと「おはよう!煇!」と何人ものクラスメイトが自分の周りに集まってきた。こんなこと今まで一度たりともあったろうか。「お、おはよう」「なんだよ、体調でも悪いのかよ。いつもはもっと元気じゃねーか。」そんなはずはない、煇は悪い夢でも見ているようだった。とうとう自分もイジメの対象になってしまったのか、そう考えて能力を発揮しようとしても体調不良で能力が使えないことを思い出した。「何でこんなに間が悪いんだ...」そう心の中で呟き、クラスメイトの集団を押し除け自分の席に座り文庫本を取り出した。

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