軋轢#13

次の日、優里は何事もなかったように笑顔で教室に入ってきた。「優里ちゃん、大丈夫なの!?」「うん!全然平気だよ!」聡は安堵ながら雄司に目線を変えた。「なんでお前俺に何も連絡しないんだよ!大丈夫なら教えてくれよ」「あぁ、わりい」「杉山君、おはよ」「ん」雄司のそっけない対応に聡と優里は顔を見合わせた。雄司は優里が自分に何か重大なことを隠していることに少し苛立ちを覚えていた。「俺がどんな想いで、病院まで駆けつけたと思ってんだよ。」心の中で呟きながら、また深く考え込んだ。「まず、この年で映画見たことないなんてことあるか?しかも映画館の光で気を失うなんて」雄司は気付かぬうちに思考の全てを優里に奪われていた。

第一章 了

第二章

 心地よい風が吹く人工芝のサッカーグラウンドにはインターハイ予選を控えたサッカー部の選手達が練習に明け暮れていた。雄司もその中にいる。雄司は一年生ながらもメンバーに選出された。雄司の脳裏に優里はいなかった。彼には目にはたくさん蹴り込まれたボールと汗の染み込んだグラウンドしか映っていなかった。

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