【研修備忘録】精神領域の認知リハビリテーション


2019.3.6 法人内研修
精神科リハビリテーションの動向
〜認知リハビリテーション(認知矯正療法)とは?〜


1.統合失調症と認知矯正療法
【統合失調症の社会転帰に関与している要因】


〈陽性症状〉〈陰性症状〉〈認知機能〉〈気分症状〉
〈気分症状〉は抑うつや情動不安定などで,最近注目を高めている.

【統合失調症の社会機能的転帰と要因の関連性】


統合失調症の機能的転帰(就職,就学,対人関係など)には,基本的な神経認知機能(覚醒,ワーキングメモリー,遂行機能,二次的言語記憶など)が関連性が強い.最近では,神経認知⇨社会認知⇨機能的転帰という関連性が示唆されている.社会認知とは,感情の知覚・原因帰属・心の心理・メタ認知などである.


【統合失調症における認知リハの射程】

【認知矯正療法が統合失調症患者の脳機能・構造に及ぼす影響】


・認知矯正療法(言語系列記憶課題)を15週実施,同課題遂行中のfMRIにて左外側眼窩回,左下前頭回の賦活(Wexler et al. 200).
・12例に対して,計40時間の認知矯正療法を用いたリハビリテーションを実施,fMRIにて右下前頭回の機能が活性化(Wykes et al. 2003).
・2年間の認知矯正療法(CET)を実施したところ,扁桃体・紡錘状回・海馬・海馬傍回にて神経保護作用が認められ(脳構造),認知機能の改善と関連(Eack et al, 2010).


【統合失調症患者に対する認知矯正療法の効果】


認知矯正療法は,それ自体でも効果的な要素はあるが,その他の治療(支援)方法と組み合わせることで,相乗効果が期待できる.
・作業療法士による認知矯正療法+就労支援の研究報告(McGurk et al, 2007).

2.うつ病と認知矯正療法
【うつ病の社会的転帰について】


・うつ病治療において,治療ゴールに社会・日常生活機能を設定した治験(臨床研究)は5%以下である(Thase et al, 2001).
・わずか20%が回復し安定状態を維持,60%は回復を示すが再発を繰り返す(Hollon & Shelton, 2001).
・初発エピソードから2年以内に50%が再発,80%は生涯で2回以上のエピソード体験をしている(Mueller et al, 1999).
・仕事,学校,家庭生活,社会の中で,慢性持続的な機能の障害やQOLの低下をもたらす(Papakostas et al,2004).

【うつ病の寛解後の社会的転帰に影響を及ぼす要因について】


Greer et al, 2010
・不眠,日中の眠気,疲労感
・身体症状,疼痛
・認知機能障害
〈寛解期の主な残遺症状〉 Conradi et al, 2010
・睡眠障害(39%の期間)
・気力の低下(35%の期間)
・認知機能障害(44%の期間)
⇨うつ病患者に対する認知機能への介入は必要である.また,大うつ病性障害でも認知機能障害とのは中核的な症状である.
⇨しかし,認知機能障害とうつ症状の重症度の関連は一貫してはいない(McDermott et al, 2009).

3.認知リハビリテーションについて
【日本における認知リハ】


・紙と鉛筆
 ⇨発散思考を鍛える認知トレーニング
 ⇨認知適応法
・コンピューター
 ⇨COGPACK
 ⇨J-CORES  ※集団でも実施しやすい
 ⇨NEAR  ※個人での実施を想定している
どの認知リハでも,訓練と実生活との関連性について話し合うグループディスカッションなどの支援が重要である(文脈化,ブリッジング).これにより,事実は全員一致しているが,類推は異なることへの認識を高めている.

4.その他


・日本でも就労+認知リハの研究はあるが「効果は同じでも,成果が異なる」結果が多い(定着率は低いなど).
 ⇨就労支援のあり方や就労に関する文化の違いもある
・J-CORESは,誰にでも同じステップを提供できるため集団での運用や幅広い集団への提供ができる.反対に,NEARは個別での課題設定などに重きをおいている.
・認知リハでは,認知機能が低下している対象者の方が改善の幅が大きいため天井効果はある.
・作業療法士は,実場面での評価・介入ができるため認知矯正療法との相性が良い.
・高次脳機能障害患者に対しては上手くいかない例が多い.高次脳機能患者の方が成果が出にくいため,集団の設定(うつ病患者と一緒にしない)などでより研究が深まる可能性がある.
・認知症患者については,発症予防については効果がある可能性を示唆する研究報告がある.

【感想】


よーし,とりあえず4月にある認知矯正療法の研修に申し込もう!
精神科作業療法は集団を求められやすいけど,実は集団に逃げている感もある.だって,他職種全員が集団を求めているわけでなく,ガチ経営陣以外とは多様な実践について意気投合することが割と多い.ということで,作業療法以外のスキルを身につけておくことも,いざという時にタイミングを逃さないために必要だ!作業療法だけで専門性を示すのではなく,他の領域のスキルを行使しながら作業療法の専門性を示すこともやっていこう!

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