かこはよいものですか

I'm home4話の感想群、ミドルフェイズ1。

http://dtlog.sodenoshita.com/chatLogs_iamhome4_h.html

“栄誉の日々は遠く”——メジャー:『アディシェスの栄誉』。
このシナリオ中のサブタイトルは百入さんの行動コンボ名に寄る、というのは知っての通りで、元の命名も格好良ければ受け方も綺麗なのも改めていう必要もないとは思います。
本歌取り……雅……

状況の再確認。
頼りなさげな言動ながら、状況の進行役を担うリーダー!
「進行役はNPCが担った方が安定する」っていうのは繰り返してきた話で、もちろんここでもその通り。
デッドラインヒーローズってゲームが“戦闘以外のシーンはPCに問いかけを投げるためのものだ”と定義していたのが思い出される。
つまり、何に答えなければいけないのかが明確になるのだ。
リーダーが状況(問いかけ)を整理する。答えればよい。
物語を語るのが上手いGMは何への答えが欲しいのかを見せるのが上手い。
こういうマスタリングをすることになるゲームではたいていの場合PCはプロっぽくて、プロっぽさの表現としてGMから選択肢を明示する事ができる。
「君たちはプロなので仲間を直接見つける難易度はこれくらい、居場所を絞り込む難易度はこれくらいだろうと見当がつく」というわけだ。
箱庭を作ってどこにでも行けるようにするGMもいる。
こちらは行ける場所を示した上で「どこへ行きたいか」「誰と組みたいか」を聞くわけで、未知の土地へやってきた流れ者を遊ぶのに向いている。
ホームタウンを用意してどこの勢力に肩入れするか選んでもらったり、右も左もわからない土地へやってきた感じを出したり、あるいは手探りで探索を進める感覚を出したりだ。
ゲームが色々あるように上手いGMもいろいろだ。

栄誉の日々。
百入結衣子にそんなものがあったか。
ないとなれば答えはひとつだ。
コンボ名の本歌取りで百入さんを中心にした物語と示しながら、栄誉の日々、輝かしい過去のあった人々——マスタースカイ、ヴリトラの面々。生成亜綺羅もそうだろうか——の物語でもあると示している。
とはいえこれは、おそらくは、まあ深読みのしすぎだ。

丁寧な「この人はこう返すよな」って返し!
キャラクターを見せる機会をうまく作るGMと活かすプレイヤー。

話題の変更を切り出すタイミングが上手い。
今回の流れだとリーダーと烏羽くんとつるばみさんだ。
滑らかに話を繋いでみせる。
いくらでもPC同士の会話ができてしまうゲーマーたちのわざがこれだ。

椋実さんの、あんまり興味がなさそうに見せながらちゃんと心配も見せる配分たるや!
椋実・百入はともすればざらついた気分を残しそうな斬れ味を見せるキャラクターながらそうさせない。ひたすらにバランス感覚が上手い。マスターヴォルトって呼ぶのは発言1枠だけに留めたりとかだ。

江永さんは余計なことって思うし椋実さんはマジに心配してるから確認したっていうのが上手いんだよな……
キャラクターの違いは視点の違いだ。

“「待った。つまりこうだね」”。事前に書いていた台詞をめちゃくちゃいいタイミングで差し込んでくる……いつでも差し込める類の台詞で、時間管理ばかり気にしていると早いうちに差し込みたくなってしまう。もちろんそっちも必要な視点なんだけど、その上で待ちもできるかどうかは大切だ。こういう待ちができるのがすごいのだよね。

敵が多すぎるから味方を増やして忙しくさせよう。
シンプルなロジック。こういう鉄火場に慣れている。
慣れるほどロジックはシンプルになる。長ったらしいロジックを伝えるには時間がないからだ。
弱気な挙動と鉄火場や場の仕切りへの慣れが同居しているのがリーダーの面白さ。
たまらない。

痛み止めや濡らすとひんやりするタオルでどうにかなるのかな……w
気遣いと効果のなさそうな感じのギャップが楽しい。

“「つまり、遺産の侵蝕を知っているのかな」”。
普段の烏羽くんの口調と違って見えるのが面白い。
おそらく普段は断定的に話すからだ。
いつも決まった事を言うか、相手が知っているであろう事を聞く。確実な事を話すように話す。
誰もわからないであろう事を話題に上げる事がない。その必要もなかった。今は違う。だから違って聞こえる。

椋実さんがここで割り込むのが好きだ。
ここで割り込むのは必然ですらある。
この場にほかにここまで盤面が見えているキャラクターはいないはずだからだ。
つるばみさんは小学生……経験が浅い。そのわりに渉外担当だけど!
烏羽くんは方針決定を周りに委ねて、自分は実行者だと割り切っている節がある。暗殺者が誰を斬るか考える必要はない。
椋実さんと百入さんは視点を広く取れる。
おそらくこの場ではリーダーに次いで視野が広いはずだ。
それに椋実さんのパーソナリティは話の途中で入り込みやすい。
だから彼だけはリーダーの言葉の途中で手を増やす事を提案できる。

そのつもりがなくても連れ戻す。
そのつもりがないとしたらどうしよう。
家族なんだから戻ってきたいに決まってる。
百入さんがいない状況(といかけ)に対するそれぞれの答えが綺麗に分かれるのが美しい。

UGNをガチで潰したら、UGNからのヘイトは集まるわ消耗するわUGNがいなくなったからってFHの愚連隊セルみたいなアホどもが寄ってくるわで大変な事になりそうだもんな……

そうだね、きらわれているね!!!
たのしい

手番を物語のために使うのは美しい。ゲーム的な意味がない行動を取れるようにするって大事だよ、やっぱり。


ミドルフェイズではやはり状況説明が長くなる。
場所、現状、PC以外の人物……想像される必要のある要素が多いからだ。

“リスクが大きい”“知らないままにしておくことの、リスクが”。
誘導の妙。格好いい。前の行で予想されるのと正反対の流れに向かいながら、キャラクターの思考は一貫している。言葉の扱い方がめちゃくちゃ上手い。

“なんらかのリスクを負ってでもやる価値があったのか、あるいは——”までで止めて、台詞で受ける!
格好いいかよ

塩川はわからない。生成はわかる。
反応の違いは百入さんの隠密の凄さをより際立たせる。
ほんとうに凄いものは誰にでもわかる。それは正しい。
でもそれがどれくらい凄いことなのかは素養がなければわからない。

ここの演出にゲーム的な根拠があるのは強い。
必ずしも必要ではないけれど、あればあるほどゲームデータの手触りがはっきりしてくるのだよね。

聞かせる会話。
このわざと聞かせたとしか思えない声って描写の時点で生成さんが戦いたくはないって思っているのが見えてたまらない。
泣いちゃうのだよね。
だから百入さんだけは死なない拠点の攻撃を提案した。
百入さんは、それだけは避けたいからここにいる。

いつでも逃げられるというのにこうして影だけを踏ませ続けている。百入さんの地の文。
続けてNPC達が《ヴリトラ》の拠点だけを叩く作戦を話題に挙げる。
百入さんが影を踏ませていなければ、《ヴリトラ》は全力の攻撃にさらされていたのは想像に難くない。
それにしてもここまで完璧なタイミングで自前の地の文を差し込めるものなのか。

直に言葉を交わさないやりとり。格好いい。

ただのテロリストの銃声、めちゃくちゃ危険なやつなのでは……???
このあたり塩川さんがアホな描写ってだけじゃないな……そりゃ中身がアレならテロリストの銃声程度は“ただの”でしかないな……!?

“今度は、ちゃんと”。
生成は逃げてくれなかった。
この過去は誰が描いた絵図なのだろう。
あまりにも緻密で。

消えて判定、この状況にも即していて面白い。
盗んだのかな……

「クリアすれば合流できる」判定。
それを有利にする判定。
問題を切り分けるのはいつだって有効だ。

侵食率って概念があるから無理に失敗時のペナルティを設定しなくていいのがダブルクロスに合わせたバランス感覚だなあ。
「痕跡を残す」リスクも侵食率で表現するのが面白い。包囲をかいくぐりながら痕跡を残す事は確実にできるが、百入さんが消耗しないわけではない!

これがたとえばシーンを作るのに一切のリソース消費のないゲームだったら、ボス戦のエネミーを追加するとかでまた違った味わいになるだろう。

翳りのヴェール。彼女はいまその先に。

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