“かつて彼らは”

これは最初に考えていたよりも時間がかかるし、しかも時間をかける必要のある場面だって、直感のように気付くことがある。
時間管理を考えた上でのシナリオの進行ペースに比べて時間がかかっていて、でもここで展開を巻くのは物語としての価値を落とすとわかってしまうタイミングだ。
このオープニング群がそうだ。
そういう話をする。

http://scatter.sakura.ne.jp/Log/World_End_Moratorium.html

完璧な痛快娯楽活劇の導入じゃん……
完璧な導入じゃん!
2人の描写密度の取り方まで含めて映画っぽく鮮やか。
これ“笑みを浮かべている”あたりでバンって画面が止まって背景が赤の単色塗り潰しになって“ダイグレン”吉沢龍剣ってテロップが出るやつじゃん!!!
もちろんウールワースの登場も構成員を投げ捨てたあたりでテロップが出るんだよ……背景はオレンジあたりで……

この2人のかけ合い、永遠に続けられるやつなのでは……? そして永遠に見たくなるやつなのでは……???

こ、こやつ……既にとりあえず反応してもらうためのフックを出してから状況説明を用意する技を使いこなして……!

CEO、ニュース画面のテロップで名前が出るだけで止め絵にはならないやつじゃん!!!

額、「飲み屋なら使えそうな……いや無理でしょ!?」って味わい深い。
それだけ飲んじゃううわばみなのだなー

夏目さん(複数シナリオを経て強烈な物語を背負ってる)が謎めいた案内人として現れるの、武器を活かしてきたな……!
GMのPCを物語の導入に使うのは「ここまでの夏目さんへの思い入れでぶん殴れる」「事態がかれが出てくる類の性質を帯びているって示せる」「複数シナリオを経てきた格は初期情報を持っている事に説得力を持たせる」あたりをまとめて押さえられるのでめちゃくちゃ有効なんですよねえ。
難点は夏目さんを知らない人におめー向けじゃねーから! しちゃう事なんですが、卓の性質上そっちの心配も要らないんだよな……
あとは夏目さんが全部解決しちゃうシナリオになっちゃう、みたいなのも想定しうる難点ですけど、これもここまでのオープニングの丁寧さを考えたら心配要らないんですよ。なんなのパーフェクトGMボーグなの……?
何度も見せたPCが「この危機は自分だけじゃ解決できないんだ」とやってくるっていうのは実はいつかやってみたいなあと思っていた要素なので先を越された感がある……

さらっとマイヤーズ追加するのいいですね。むてきの女傑……


えっこれライトニングボルトとナイトバイポーラーのくだりに長々書いたら無粋になっちゃうやつじゃん……
にしても良いシーン。“意味も同じ”が最高ですね。
後から改めて効かせてくるのヒット確認付きのラッシュかよ

初日分で印象深いのが「複数エピソードの後の話」をやろうとしているところ。
あきれるくらいに貪欲に使えそうな物をかき集めて、驚くほど丁寧にまとめてみせるんだから!
下敷きにしたワールド・エンドに過去にこのキャラクター達が挑んだことがある手触りを持たせるんだもんな……
そのためにオープニングを丁寧に取り回しているわけだ。
しかもこの環境ならとっくにプレイされているはずのシナリオだから、参加者も読者もどういう事件だったか知っているわけですよ。大事な場面だけ押さえてしまえば十分に「このPCたちもこのシナリオに挑んだことがある」と思わせられる。

現在に戻ってきた後のシーンもオープニングなんだ!?
物語としては確かにここだけどシーン配分とか考えたら後じゃないかと思うけどいやでも確かにここしかないな……!
“……炎が。”から意識が戻るまでの描写が格好いいだぜ
氷の煽りと嚆矢の言葉とどっちに応えているのかわからないのが上手い。

しかしこの導入、先の吉沢シーンより見えている事態が一段複雑になったのがいいですね。
夏目がいる時点で平行世界案件。
吉沢オープニング段階ではヤクザ桐生がPC全員の世界の住人だったが、CEOにすり替えられたと見えた。
もう一段踏み込んで「かれを取り巻く側の認識ごと変わっているあたり入れ替えられたのはPCの側か?」くらいに思っていたわけだ。
そのわりにCEOが詳しくてさ!
って口走ってから改めて描写を読み返すと「君の知っている桐生だ」なんて描写はGM側からは出ていない事に気付いてしまいました。
これは……情報収集をうまいことやっただけだな……???

IDカード、良いですね。「かれにとってもあの事件は大きなものだった」って繰り返し繰り返し出していける機会を……データ的にも作って……!
一度出した小道具は徹底的に使ってやるぞ、という意思を感じます。つよい。

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