見出し画像

急いで作った製品がみごとに不良だった時の向き合い方:燕三条の町工場の一例

特急品ということでお客様の期待に応えるべく、急いで作った製品が不良だったということが、稀にあります。そのようなときは、どうすれば良いのでしょうか?
たまたまレーザー加工機の加工予定も忙しくなく、材料も在庫で賄えるという状態で、ステンレスの板(1枚約5万円)を14枚ほど使う注文をいただきました。
等間隔で長孔をあけ、長い長方形状にレーザー加工します。その後、Lアングル状にベンダーで折り曲げて社内での加工は完成となります。
その後、お客さんが塗装処理を施し、チャーター便で県外に発送する予定となっていました。
DXFのCADデータをいただいていたので、プログラム作成も順調に進み、レーザー加工に入りました。
2日間ほどかけて、レーザー加工で、必要数のブランク品を作りました。
その後、事件は起きました。
板を曲げて図面と照らし合わせたところ、どうも図面と形状が一致しません。どうやら、プログラムを間違えていたようです。
Lに曲げる板を加工する場合、2つの面の板を作ってそれを接合し、伸び値を引いて、展開図を作成します。折り曲げる側どうしを接合しなければ正しい形にはならないのですが、慌てていたため、折り曲げる側ではない部分を接合し、プログラムを作成していたのです。
納期は迫っていますし、目の前にはブランク不良の製品が置かれています。

①とりあえず、代替品を作る。
まずは代替品を作る手配を始めました。必要な材料のストック数が足りなかったので、材料の手配から始めなければなりません。
材料の納入予定を調整しつつ、1日でも早く対応してもらえるよう対応をお願いしました。
当初の納期予定には間に合いそうにないので、お客様に納期の変更をお願いしました。幸い、若干の予備日を採っていたこともあり、なんとか調整することが出来ました。
加工も一工程づつ進めていくのではなく、レーザー加工の工程がある程度進み、曲げ工程で追いかけるように工期をかぶせてトータルの加工時間の短縮をかけました。

②取り返しのつかない失敗ではない。
とりあえず今回の失敗は、社内で発覚し、協力会社やお客様に納期の調整がお願いできたことで、かろうじて乗り越えることが出来ました。
これが、社内で不良だと気付かず、客先、さらにその上の客先へと流れていって、いざ取付作業にかかった時になって、穴が合わず、不良が発覚したらどうなっていたでしょう?

③学びの場と割り切る。
同じ過ちをしないためには、今回の失敗をどのように活かしていけば良いのか?
まずは確認作業の徹底。
工程としては、プログラム作成 → レーザー加工 → ベンダー加工 と進んでいきます。
本来はプログラム作成時に、作られたプログラムと図面とを照らし合わせて、齟齬がないが確認します。ただし、間違っていないと思い込んでプログラムを作成しているので、プログラム作成者には「正しいだろう」というフィルターがかかった状態で確認することになります。
確認する時間は僅かなはずなのですが、そういった確認作業もおざなりにされがちです。
対策としては、時間をおいて、出来れば翌日以降に、確認作業を改めて行うべきです。時間があくことで、多少なりとも冷静に確認作業を行う事が出来ます。
また、DXFデータを過信しすぎないことも必要でしょう。結局人が作成しているデータなので、手書きよりは書き損じが少ないのですが、ゼロではありません。矛盾をはらんだ図面が作成されることもありますし、ダイレクトに数字がうち込まれた場合は、寸法の値とデータの実測値で異なることもあります。
工程が複数ある場合は、各工程での確認作業も有効です。
レーザー加工の工程でも、1枚目を加工したら図面とブランク品を見比べることで、不良に気づくことが出来たでしょう。

④急いで作ることは適切だったか?
本来、ある程度ボリュームがあって、金額も張る案件では、試作を作り形状確認をしたうえで、量産加工を行います。
今回の事例に関しても、本来であれば、試作で1個作り、形状確認した上で残りを加工するべきでした。
「急ぎ」ということで、試作工程を省いてそのまま量産したのですが、試作工程を省いてまで急いで対応すべきだったのでしょうか?
今回のブランク・曲げ加工の場合、試作に要する時間は、およそ半日程度です。半日量産加工に入る時間が遅れたからといって、当初のお客様の希望納期は満たすことが出来ました。
「急ぎ」という言葉に踊らされた感があったようです。
迅速な対応を売りにしているわが社としては、納期対応は重要な要素ですが、全工程を冷静にタイムテーブルにのせてスケジュールを組めば、無理にイレギュラーな対応(試作工程を省く)はしなくてもすみました。

仕事もプライベートも何度も同じ過ちを繰り返してしまいがちですが、それでもめげずに、トラブルの軽減に努めていきたいと思います。
失敗で学ぶ授業料は、割高になりがちです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?