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【アークナイツ】オムニバスシナリオ『VIGILO_我が目に映るまま』の感想

アークナイツのオムニバスシナリオ『VIGILO_我が目に映るまま』を読んだのでその感想を書いていこうと思う。

終ぞ希望を抱かず

舞台はクルビアの都市トカロント。時系列としては8章の後にヴィクトリアへ向かう最中の出来事らしい。ママジョンズというクルビアの企業に襲われたドクターとアーミヤが、キャノットという人物の助けを借りて荒野を渡り歩くという話となっている。

クルビアという国の闇の深さが象徴された話だったように思う。オリパシーの抑制剤と偽って開拓者に栄養剤を与えているだけというセコい商売をするママジョンズが本当にえげつない。クルビアの利益優先という思想の欠陥が垣間見える。

この話ではそういったクルビアの闇が描かれるとともに、途中でドクターに語りかける謎の声がさしはさまれる。「このまま続けていたらすべてを失う」という意味深なことを言っているが、それ自体が何だったのかは最後まで判明しなかった。もしかするとアークナイツ世界自体がSAO的なシミュレーション世界でその世界に浸っていることが危険であると外部世界から語り掛けてくるというような話なのだろうか?自分は以前からなんとなくそのようなことを考えていたが現時点だとどのような解釈もあり得るので実際のところはわからない(プリースティスと言われているキャラの声なのだろうか?)。

その全てを忘れず

この話はロドスの進行ルートに天災が発生してそれを何とかして回避するという内容となっている。合間にドクターの記憶の話も入ってくるため伏線と思われる描写も豊富で面白かった。

ここのケルシーのセリフが好き。面倒くさい言い方ではあるけど、だからこそかわいいと思う。

天災を避ける直前に式が浮かぶドクター。ケルシーの見立てではドクターは危機に陥ると過去の記憶を引き出すことができるかもしれないとのことらしい。エピソード記憶は抜け落ちてるけど手続き記憶は驚くべき回復を見せているとの描写もあったので一部の記憶は再度浮かぶようだ。もしかしたら記憶を引き出す何らかの条件が明確にあるのかもしれないが現時点ではわからない。

この話ではドクターの記憶についての伏線も豊富だったが天災の発生条件についての伏線も結構あったように思う。エイヤフィヤトラの話によると条件さえ整っていればたとえ少量の源石でも短期間で急激に増殖することもあるらしく、砂地では源石エネルギーの爆発が地面の温度を急激に上昇させ、大型の風災に発展する可能性が大幅に高まるらしい。

この話を聞いて思い出したのはエイヤに関わる話で散々出てくる黒曜石である。『青く燃ゆる心』ではカザンオリジムシ及びヨウガンオリジムシが黒曜石を食料としているという描写もあったし(OF-8戦闘前)、『火山と雲と夢色の旅路』でも黒曜石の話がやたらと出てくる。

砂は岩石が壊れてできた破片や粒子も混じっていると思われるので黒曜石の破片も混じっているだろうと思われる。これは仮説だが、もしかすると黒曜石は源石の反応を活性化させる触媒のような働きをするのではないだろうか。砂に混じった黒曜石の粒子が少量の源石結晶を増殖させるように作用し天災が発生しているのではないかという仮説である。

黒曜石と反応しているのか単なる触媒に過ぎないのかは不明だが明らかに反応を促進させる作用があるような描写しているような気がする。現時点では証拠が薄いような気もするが、黒曜石自体はやたらと出てくるので正しい可能性もあるかもしれない。

価値を知り得ず

この話はAceとScoutがバベル時代にしたとある賭けに関する話となっている。彼らはバベル時代に難民キャンプで謎の赤いスクラップを発見しそれが何だったのか賭けをした。バベル時代には結局それが何だったのかわからずロドスの総合感染生物処理室で管理されていたところ、ドクターがそれを触ると単なる自販機だったという話である(明確に自販機だったかどうかはよくわからない終わり方だったようにも思うが)。

この話は上記の赤い機械の他にも様々な描写があった。ロドス古参のサルカズボイラーマンも出てくるし、Wも出てくる。

Wはアスカロンと話している様子だったがアスカロンとは誰なのだろう?どうやら星6のオペレーターで実装されているようだが、詳しい部分は読むとネタバレになりそうなので調べていない。現在10章の途中まで読んでいるが、途中でアスカロンという名前が出てきたというのもあるし気になる存在である。

思慮は此に留まらず

この話ではテレジアが出てくる。つまりバベル時代の話である。ドクターのことが気に入らないという理由で襲ってくるサルカズやそれを止めるScoutなどの様子が描かれる。テレジアの立場の危うさなどがなんとなく伝わってくるという感じの話だった。

Scoutがサルカズだということは全然知らなかった。アークナイツのキャラクターは顔が見えないことも多々あるので種族がわからないことも結構ある。

行き着く先を恐れず

この話もロドスでの出来事(ケルシーが患者を治療する描写など)や過去のバベルでの出来事(幼少期アーミヤの話)などいろいろな場面があったが、自分が一番印象に残ったのは最後のケルシーとドクターの会話のシーンである。

ここのケルシーの質問が非常に意味深だったように思う。ケルシーはもしかするとドクターが自ら記憶を失うことを選択したと考えているのかもしれない。ここのドクターの回答である「自由を選ぶ」という選択と同じように過去のドクターは自由になるため記憶を失うことを決定したのかもしれない。

つまりこのシーンではケルシーが過去のドクターが取った行動を自分なりに分析しそれを今のドクターに質問としてぶつけているという構図なのかもしれないということである。これはあくまでも1つの解釈にすぎないが、なんとなくそう感じた。

過去のドクターが自由でないことはアークナイツというゲームにおいてシステム的に示されているのではないかと個人的には思っている。平たく言えばバベル時代のドクターが出てきたときは選択肢が出ないということである。普段のドクターが話すときには基本的に選択肢が出るがバベル時代のドクターには選択肢が出ない。これはバベル時代のドクターには選択する自由がなく、記憶を失ったドクターには選択する自由があるということを暗に示しているのではないだろうか。

この選択肢システム自体が何らかの叙述トリック的、シミュレーション仮説的な構造を構築している可能性もあるし、様々な可能性が考えられる。明らかにバベル時代では選択肢を出さないのでなにかしら大きな物語構造を取り入れているような気はしている(それ自体がどんな構造なのかは明確にわからないが)。ただおそらく、孤星で出てきた保存者のあたりの話はそのあたりの話に繋がってきそうな気はする(あのあたりは情報量多すぎて咀嚼できていないが……)。

最後の賭け

この話ではPRTSと話すクロージャ―の話が描かれる。PRTSは石棺救助作戦のシミュレーションを何度もしており167回のプロセス実行の中、2回だけ成功例があったらしく、その2回の成功例を元に作戦を組んだとのこと。

やっぱりPRTSも物語全体の構造に深くかかわってきているような気がする。そう感じるだけで具体的にどういう風になっているのかは明確にわからないが、明らかに重要そうな描写が結構な頻度でされている気がする。今回の話のクロージャのセリフ的にクロージャが作ったものでもなさそうだし誰が作ったのかも気になるところ。

まとめ

VIGILOはとにかく伏線が多くて面白かった。普段の話も面白いけどやはり物語の核心部分の話をされるとより面白くなる傾向にあると思う。次はとりあえずメインシナリオを読んでいこうかなと思っている。10章も途中だけど面白いしまだ分量もあるので楽しみである。


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