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魅力的な漫画を作るために必要な表情作画力の話 (もっと強く読者の心を動かすために)


<読者はキャラクターの表情によって心を動かされる>

最近フィギュアスケート漫画 メダリストのコミックを読み返しているのですが、この漫画はストーリーやキャラクターが良いのはもちろん、各キャラクターの表情の作画がかなり素晴らしいです。

漫画においては読者はストーリーやキャラクターの言動によって心を動かされる事もあれば、キャラクターがする色々な表情によっても心を動かされる事があります。

その表情の作画がいまいちだと、せっかくの名場面のシーンであってもいまいち読者の心を動かす事ができず不発に終わってしまう事になりかねません。
逆に読んでいる人達の心を強く動かすような素晴らしい表情をキャラクターにさせる事ができたら、そのシーンはより印象的・感動的な物になるでしょう。

しっかり魅力的な表情の作画を行う」という事は、本格的に商業として漫画を描いて生きていこうという人達は特に意識すべきではないでしょうか。
同じ内容の漫画でも魅力的な表情を描けているかそうでないかで、コミックの売れ行きもずいぶん違ってくるでしょう。

出版社への投稿作品や連載獲得のための漫画の場合も、キャラクターの表情がしっかり魅了的に描けているかどうかで編集者などへの受けも随分違うと思います。


<決めゴマでは特に表情の作画を頑張る>

全てのコマで表情の作画を頑張ると締め切りがある漫画の場合は時間が足りません。
そのため、決めゴマや印象的にしたいコマの作画で主に表情の作画に力を入れた方が良いでしょう。


以前漫画家に密着取材するNHKの漫勉という番組で藤田和日郎さんが登場した回がありました。

作画の様子を見ていると、とあるコマでキャラクターの顔を描いては消して、描いては消してという風に何度も何度もしつこく描き直しするシーンがありました。
観ている方としても「さすがにもうその表情で良いのでは?」と思っても、藤田さんの表情追及は止まらず、本当にしつこいくらい描き直ししていました。

『うしおととら』や『からくりサーカス』など人の心を強く動かす作品を描いてきた藤田さんは、これらの漫画の名場面でもキャラクター達に素晴らしい表情をさせ、そのシーンをより印象的・感動的にさせていました。

キャラクターの表情の作画に力を入れる事の大切さを本当に良くわかっているからこそ、ここまでしつこくこだわって作画をされていたのだと思います。


<日頃から色々な表情を描いて表情作画力を鍛えてみる>

アスリートが毎日体を動かして運動能力を維持したり鍛えるのと同様に、漫画家や漫画家を目指している人達は色々な作画のトレーニングを日々していると思います。

ジェスドロ(ジェスチャードローイング)などで色々なポーズの作画をするのも大事だと思いますが、「色々な表情を描く」というのも毎日のルーティーンに組み込んではどうでしょうか。

表情が乏しかったり、表情が固い作画しかできないとそれだけであなたの漫画の魅力は大きく落ちてしまいます。
自分の出すコミックの売れ行きを増やしたかったら、毎日の表情作画トレーニングは必須だと思います。


<手癖感覚で表情を描いていないか?>

漫画家の中には表情を手癖のように描いて、あまり一つ一つの表情をしっかり追及するという事をされていない人もわりと見かけてしまいます。
名前を出すとファンが怒り出すので具体的には書きませんが、大御所漫画家でもキャラの表情はテンプレのように描いてしまっている人がわりといますよね。

そういう漫画はせっかくの名場面、決めゴマでもキャラクターの表情がテンプレや判子絵のように『いつも通りの使いまわし的な表情』をしているため、いまいち読者は心が動かされないという残念な事になってしまいます。

読者の心を動かす素晴らしい表情はテンプレ的に描くような物ではなく、毎回その場でうなり、試行錯誤しながら「もっと良い表情をキャラにさせよう」と追及する物ではないでしょうか。

今はデジタルで作画している人も多く、修正しやすかったりレイヤーで複数の表情バリエーションを簡単に作れる時代です。
時間が許す範囲で、名場面のコマではキャラクターにより魅力的な表情をさせるよう追及すべきだと思います。