次世代のFacebook? MeWeを実際に使ってみた
次世代のFacebook?MeWeを実際に使ってみた。
このnoteでは近年次世代のFacebookとして注目を集めるMeWeをご紹介しつつ、MeWeが立ち上げられた背景にあるSNSの市場の潮流にも簡単に触れ、今後のSNSの在り方に対する示唆について考えます。
MeWeとは
MeWeは2012年に開設された新しいSNSです。今までに無い自由なSNSとして注目を集めています。創業者はマーク・ワインスタインです。マークは1998年にSuperFriendsを立ち上げます。SuperFriendsはまさにミニブログ、SNSの先駆けで、人々がインターネット上で会話をしたり、自身の経験をシェアしたりするウェブサイトで、まさにSNSの流れを先取りしたサービスでした。もし仮に当時モバイルデバイスが普及していたら、今のFacebookはSuperFriendsに代わられていたかもしれません。その後マークは2003年にSuperFriendsを売却します。現在、SuperFriendsはSuperGroupというドメインに代わり、今はSuperGroup社のポートフォリオサイトとなっています。
その後マークは経営陣へのコーチングや講演などを生業としていました。Facebookが創業されたのは奇しくもSuperFriendsが売却された翌年の2004年で、その後急速に利用者を伸ばしました。そのFacebookの興隆を目撃したマークは、Facebookのサービスを利用者のプライバシーをマネタイズしている、投稿を厳しく検閲していると考えました。そして2012年に、HTTPやHTMLの設計者として知られるティム・バーナーズ=リーをアドバイザーに、マークはMeWeを創業します。
MeWeとは何か
MeWeのウェブサイトには、「あなたのプライバシーは売り物ではないはず」という文言が掲載されています。この通り、MeWeはユーザーのプライバシーや投稿の自由を重視したサービス設計がなされています。基本的にはSNSで、友人や他のユーザーと自由に交流することができ、ユーザーはタイムラインに投稿をすることができます。投稿はFacebookのように字数制限が無く、ミニブログのような形で長文を投稿することもできます。もちろん写真などの投稿も可能です。
またMeWeの特徴として広告が一切表示されない点が挙げられます。ユーザーは文字通り広告フリーな体験が可能です。一方で、MeWeはライブ通話やダークテーマなど様々な機能を月額2ドルから4ドル程度のサブスクリプションモデルで提供しています。こうしたユーザーが独断で選択するサブスクリプションモデルによってマネタイズされています。
Facebookに対するアンチテーゼ
MeWeが次世代のFacebookと言われるのは、単に創業者がFacebookをベンチマークとしているからだけではありません。なんど、UIが一時期のFacebookに非常に似ているのです。これはFacebookへのアンチテーゼを強調するだけでなく、ユーザーの乗り換えを用意にする意図があると考えられます。
ここまでMeWeがアンチFacebookとしてプライバシーや検閲フリーを掲げる背景には何があるのでしょうか。一つにはFacebookのマネタイズにあります。ランディングページの「あなたのプライバシーは売り物ではないはず」という文言には、大手SNSの多くがユーザーのプライバシーをマネタイズしていることに対する批判が読み取れます。例えば投稿内容からターゲティング広告を出す行為や、Cookieでブラウザ履歴などを分析しユーザー像をより高解像度にしようとする行為です。MeWeはこうしたユーザーのデータを収集しターゲティング広告を出すことはしません。
またFacebookをはじめ多くのSNSが個人情報を流出させていることも挙げられます。こうした個人情報流出の背景には、サービスプロバイダーのサーバーに中央集権的にユーザーのあらゆる情報が保存されていることがあります。現にFacebookは2019年の個人情報流出事件の際には、ユーザーのパスワードがフェイズブック社内で社員が自由に閲覧できる状態で保管されていたことが明らかになりました。一方でMeWeはエンドツーエンドの暗号化を基本としているため、MeWeのサーバーには識別できる形で個人情報は保存されていません。
さらに、MeWeは投稿内容の検閲をしないとありますが、これはどういうことでしょうか。FacebookやTwitterは自由なコミュニケーションが可能というイメージがありますが、実は検閲がされています。例えばFacebookは昨今のコロナ禍ではワクチンに対する偽情報を拡散したとして、300を超えるアカウントを削除しています。また陰謀論で知られる「Qアノン」関連のアカウントも軒並み削除されました。MeWeはこうした検閲をプライバシーや表現の自由の侵害と指摘し、運営によるアカウントの制限を行わない方針を掲げています。
実際に使ってみた
MeWeに登録し実際に使用してみました。登録してすぐにUIが非常にFacebookに似ていることに気が付きます。一方でそれもあってか慣れ親しんだSNSという印象で、かなり直感的に使用することができます。一部ポップアップなどのデザインが古いですが、そこはご愛敬です。
出典:https://mewe.com/myworldhttps://mewe.com/myworld
またテキストの投稿などを見る分には使う分には特に他のプラットフォームと大きな違いは感じられませんでした。一方で動画コンテンツなどを閲覧する際は広告が無いことの有難さを感じました。
またMeWe Storeというバナーをクリックすると、様々な機能をアンロックできるプレミアム会員のサブスクリプションや絵文字などを購入できるページに遷移しました。こうした絵文字のマーケットプレイスはLineのスタンプを彷彿させます。
また様々なテーマカラーや追加のクラウドストレージ(8GBは無料です)も購入可能です。
出典;https://mewe.com/store
このように有料ですがUIを自由にカスタマイズできるところは特徴的と言えるかと思います。
なぜか懐かしいMeWe
MeWeを使っていて妙に懐かしい気分になりました。個人的になぜだろうと少し考えたのですが、一つはとても個人的なことで、そもそも最後に新しいSNSを始めるたのが5年近く前だからかと思います。高校生の頃にInstagramを始めたのが最後でそれ以降登録したサービスもありましたが、新しいSNSを真剣に始めることはありませんでした。
これは当然のことで、現在のSNSのアクティブユーザー数ランキングを見てみると、トップ5はすべてリリースから10年以上が経過したサービスばかりであることが分かります。
参考に作成:https://www.statista.com/statistics/272014/global-social-networks-ranked-by-number-of-users/
次にこうした高いシェアのSNSのユーザー数の推移をFacebookが創業した2004年から見てみると、2010年にFacebookがYouTubeを追い抜いて以来、各サービスの黎明期を除けば大きな順位の変化が起こっていないことが分かります。
参考に作成:https://ourworldindata.org/rise-of-social-media
2010年といえばiPhoneが日本に上陸してから2年、iPhone4が発売された年です。この年に世界のスマートフォンの販売台数は過去最大の成長率を見せ、その後も爆発的な増加を続けます。このことを踏まえるとSNSの世界ではその時々の流行はあったものの、多くのユーザーは未だに力学が大きく転換するほどパラダイムシフトを経験していないと言えます。
こうした中、大手SNSのビジネスモデルは似通ったものが多いのは事実です。ユーザーの行動履歴から興味関心を特定し、広告を表示させるターゲティング広告です。こうした広告に対してYouTubeなどはサブスクリプションによって削除するプランなどを提示してきました。一方でMeWeのようにユーザーがサービスの購入する前から広告が表示されない純真なサブスクリプションモデルのサービスには未だ見られないビジネスモデルです。
表現の自由とSNS
さて、今後のSNSの在り方にMeWeはどのような影響を与えるのでしょうか。一つ確実なのは、MeWeはSNSにおいて自由を求めるユーザーの一つの選択肢として非常にコアなファンの心をつかみ続けそうだということです。
一方でこうしたプラットフォームが今後のSNSのメインストリームとなりうるかを結論付けるにはいくつか疑問があるのも確かです。まず、本当に検閲フリーであることが多くの人々が使うコミュニケーションのプラットフォームとして望ましいことなのでしょうか。SNSでは非科学的、あるいはまったく事実ではない風説を流布することを意図とした投稿も散見されます。こうした投稿が完全に野放しとなったプラットフォームを、特に青少年が利用することに懸念を抱く方も多いでしょう。そうした安全性を担保することも巨大なテックカンパニーとしての社会的責任であるという考え方もあります。
最も、マーケティングのプラットフォームとして大きなマーケットを抱えるSNSにとって、広告を出す企業目線では安全性が担保されていないプラットフォームで広報活動を行うことのレピュテーションリスクも今後サービスをスケールさせてゆく上での障壁となる可能性があります。また、そもそも広告を打てないということ自体がプラットフォームそのもののビジネスモデルのリソースを限定的にしているとも言えます。
今後、表現の自由やプライバシーと社会的責任や収益性といった様々な要素の中で、どのようにSNSが変わってゆくのか注目していきたいですね。
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