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目白のえほんや にこにこ書店(東京都新宿区)

 2019年10月に開店した絵本専門店「目白のえほんや にこにこ書店」。店主の岩田亜紀さんにお話を伺いました。

 奥行のあるお店の片面の壁一面に原画が展示されています。いつもこんなふうに原画展をされているんですか?
 はい、ありがたいことに、出版社さんからご依頼をいただいての開催がほとんどです。原画展によってお店の雰囲気も変わるんですよ。当店は表通りに面しているので、外から絵を見て来店される方もいらっしゃいます。絵本が好きな方だけでなく、これまで興味がなかった方も、絵本を知っていただくきっかけになったらいいなと思い開催しています。

 お店を開かれた経緯を教えてください。
 目白を散歩しているときに、ここが空き店舗になっているのを見かけ、大好きな目白の町で絵本の店を持ちたいという想いが一気に動き出し、開店することができました。
 私は大きな書店などで働いた経験はないのですが、初等教育を学び幼稚園教諭の資格を取得し、長年地域で読み聞かせの活動に携わってきました。自身の子育てが一段落したのちに保育士の資格をとり、10年ほど保育園で働きました。その後、図書館で「育児コンシェルジュ」として絵本と親子を繋ぐ仕事や、カルチャーセンターや自治体からのご依頼で絵本講師も務めてきました。絵本専門店の開店は、子育てや、たくさんの方々と分かち合ってきた読み聞かせの経験、保育士として子どもたちと一緒に絵本を楽しんできた経験などを活かした視点の店があってもいいんじゃないかと考えたからです。


おひとりでお店を開いている店主の岩田さん。
子ども向けの読み聞かせだけでなく、
シニア向けの絵本を楽しむ会なども行っています。

 お店で大事にしていることはなんですか?
 お客様とのコミュニケーションです。一般的に本屋さんって静かなイメージかと思いますが、何より店主自身がおしゃべりなんです! また、この店にお越しくださったという嬉しさもあり、絵本選びのお手伝いもコンセプトにしているので、「なにかお探しですか」と、つい積極的に話しかけてしまいます。

 お店の特徴は?
 「赤ちゃんから大人まで」がコンセプトで、店頭にある絵本は、常時1000冊程度です。ほかに、パズルや、絵本がより楽しくなるようなグッズも取り揃えています。まさに老若男女、さまざまな方がご来店くださいます。
 店内では、お一人お一人のご希望をお伺いして絵本を選ぶ「選書サービス」もしています。お子様への本をお探しの場合には、「今、どんなものがお好きですか?」と伺うのですが、この答えを考えることは、親御さんが子どもを見ることにつながると思うんです。子どもの望みを分かろうとすると、子育てのストレスが少なくなり、「子どもの今」を一緒に楽しむきっかけになるのでは、と考えています。絵本で、よりいっそうお子様との時間が楽しくなったらいいなと思っています。
「にこにこ絵本のお届け便」として、メールやお電話などで遠方のお客様のご希望を伺って、本を選ぶサービスも行っています。
 また、わたしは、相手を思い浮かべて絵本を選ぶ時間そのものも、その人へのプレゼントだと思っています。以前一緒に絵本を選んでさしあげたお客様が来店されて、その絵本を読むお孫さんの写真と「ばーば、ありがとう」というメッセージを見せてくださったこともあります。店での日々は、お客様との素敵な瞬間が数え切れないくらいあると実感しています。

 新刊はどのように選んでいるのですか?
 出版社さんからお送りいただくご案内や校正刷りなどにも目を通し「おもしろそう」と思う絵本を選びます。 
 ロングセラー絵本も、大切だなと思うものは切らさないようにし、ほかにもお客様のお顔を思い浮かべつつお薦めしたい絵本を織り交ぜるようにしています。 
 もしご希望の絵本がない際にも、「こういうものがありますよ」とお薦めできるよう、さまざまなシチュエーションを考えて選んでおいたり、その時にご要望にお応えできなくても、選書して後日取りよせることもあります。

 徳間書店の本はいかがでしょう?
 最近の絵本では、『おとうとがおおきくなったら』がいいですね。自分がおにいさんやおねえさんになったら寂しい思いをするのかも…という視点ではなく、弟が大きくなったら一緒になにをしようか、と未来を考える絵本だからです。仲のいいきょうだいの未来像が自然で、すごく素敵だと思いました。下のお子様が生まれたご家庭にお薦めしたい絵本です。
『としょかんのきょうりゅう』も大好きです。恐竜の本をお探しの方にお薦めしていますよ。本を開くと、知らなかった世界に飛び込んでいける、と実感できる絵本ですね。

 読者の方に伝えたいことは?
 絵本は読んでいたのに、小学生になると本を読まなくなると聞くと、とても残念に思います。そうご相談くださる親御さんには、物語の最初の部分だけでも読み聞かせてみると興味を持つきっかけになりますよ、とお伝えしています。実際に、お母様と一緒にご来店された小学生のお子様に、好きなジャンルの本を教えてもらい、「この本はどう?」と最初の部分を読み聞かせると、「おもしろそう」とお買い上げくださったこともありました。 
 大人も子どもも絵本を開く、想像力いっぱいの世の中になったらいいですね。
 そして当店も、街の小さな絵本屋としてこれからも楽しく絵本を手渡していけたらと思います。

 ありがとうございました!


お店の情報

目白のえほんや にこにこ書店
〒161-0033
東京都新宿区下落合4-26-13 目白金井ビル
TEL:03-3565-6232
11:00〜20:00(水土日祝18:00)
定休日:月曜日(祝日は営業)
http://www.nikoniko-books.com/
アクセス:JR山手線目白駅より徒歩13分
都営バス「聖母病院入口」下車すぐ

(徳間書店児童書編集部「子どもの本だより」2023年11月/12月号より)

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