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上大崎発読書案内

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#徳間書店児童書編集部機関紙

できるってどういうこと?/『体はゆく』/文:上村 令

 小学3、4年生のころ、スポーツが得意な男子と、同じSFのシリーズにはまり、本を貸し借りするなどして急に仲よくなったことがあります。どういう話の流れだったのか、あるときその子がわたしに、「なあ、おまえ、どうして逆上がりができないの?」と尋ねました。全然意地悪ではなく、心底不思議がっている口調だったので、わたしも真剣に考えました…どうしてかな? するとその子は、「オレ逆に、もうできなかった時の感じが思い出せない」と言いました。その後SF好きの二人は、「もし脳みそだけ入れ替われた

かめが語る戦争/『ひろしまの満月』/文:編集部小島範子

 物語は、ある池の庭にいるかめのモノローグ、「わたしは、かめです。」で始まります。かめは、だれも住んでいない家の古い池に何年も何年も前からずっとひとりで暮らしていました。  けれどもある日、その家に引っ越してきた家族の、小さな女の子の声で、かめの記憶がよみがえります。  月を見上げると、満月。かめの思い出ドアのかぎがあきます。かめには、心がばりばりとやぶれてしまいそうな思い出があるのです。  引っ越してきたのがどんな子か見てみよう、と思ったかめは、池を出て、女の子と出会