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竹迫祐子の「絵本の魅力にせまる! 絵本、むかしも、いまも…」

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2023年10月の記事一覧

「魚の存在感に迫るクレヨン画家」加藤休ミ『おさかないちば』

 青光りする背に、ふっくら白い腹をした大きく立派なブリ。薩摩焼の黒い釉薬のような艶やかな体でパックリ口を開けている大層大きなヒラメ。鱗取りを使えば、それぞれにきらきらした鱗が景気よく舞い上がりそうです。 魚市場を描いた絵本はいくつかありますが、加藤休ミの『おさかないちば』(2013年・講談社)は一味ちがいます。  寿司屋でタイラギのにぎりを食べた男の子は、それがもとはとっても大きな貝で、魚市場に行けば実物が見られる。そう聞いて、お父さんと早朝の魚市場へ出かけることに…。

「怖い+可愛い化け猫・妖怪ワールド」石黒亜矢子『ねこまたごよみ』

 コロナ禍で、広く知られるようになった妖怪アマビエ。江戸時代の摺物には、肥後(現代の熊本)の海に現れ、6年間の豊作とともに疫病の流行を予言し、疫病の流行時には自分の姿絵を見るように託宣した、と紹介された妖怪です。災害や疫病など人知を超える災禍に見舞われたとき、古人は神力とともに、異界の存在を思い描き、納得したり慰められたりしたであろうことは想像に難くありません。妖怪や異形の絵と言えば、室町時代の「百鬼夜行絵巻」以降、江戸時代には曽我蕭白、鳥山燕石、河鍋暁斎、近くは『ゲゲゲの鬼