ひやし牛まぶし
この時期になると思い出す、忘れられないメニューがある。
それがすき家の『ひやし牛まぶし』。
牛丼に青ネギ、わさび、おしんこ、だし汁が添えられていて、
まずは牛丼として半分くらい頂いたあとに冷たいだし汁、わさび、青ネギを牛丼にかけお茶漬けのように食べるメニューだ。
改めて調べてみるとそのメニューが発売されていたのは2011年。
僕が高校1年生だった頃だ。
最初は部活の練習終わりだったか試合終わりだったかとにかく暑い夏サッカーで疲れた身体を牛丼で癒そうと入ったすき家で、「こんなんあるんや」と思ったところからだったと思う。
正直ひつまぶしすらあんまりどんなメニューかもわかってない中、冷やした麦茶で食べるお茶漬けが結構好みだった僕は冷やし牛まぶしという名前の冷やしの部分に惹かれた。
とにかく冷やされたい。元々サッカーなんてしていい気候ではない中紫外線に打たれてサッカーして火照った身体を冷やしたい。
しかもキーパーだった僕は夏でもおかまいなく長袖のユニフォームを着せられていた。今考えれば正気じゃないが、日本のサッカーグラウンドはほとんど土のグラウンドだから仕方ない。
それに関しては早く全国のサッカーグラウンドが芝生になることを願うばかり。
とにかく冷やそうと思って頼んだひやし牛まぶし。
まあ別に今回だけ冒険として頼んで次からはいつも通り高菜明太マヨ牛丼を頼むだろうと思っていた。
ひやし牛まぶしが運ばれてきた。
最初は普通に牛丼を食べる。いつも通りの味。いつも通り過ぎてもう何も心配していない。それがチェーン店の良さだから。
さてここからだ。
半分くらいになった牛丼を一回丼の底と平行になるようにスプーンでフラットにする。
フラットになった牛丼の真ん中にわさび、その周りに青ネギ。
そして冷たい出汁を丼全体に行きわたるように回しかける。
出汁でひたひたになった牛丼にスプーンで持ち上げ、口に運ぶ。
・・・ぬるい。
半分になろうがちゃんと熱をもった牛丼はちょっと冷たいくらいの出汁じゃ冷え切らない。
ただ、それがめちゃくちゃ美味い。
正直それまで牛丼はどれだけ雑に食べてもいいと思ってた。
味がちゃんとわかるのは最初の数口で、あとはただすきっ腹を埋める手段になっていることがほとんどだったけど、これは違う。
手段になりかける直前で新しい食べ方を提示してきて、
そしてそれはジャンクになりやすい牛丼を高尚なものにしてくれている。
一発でハマった。
そこから少しでもチャンスがあればひやし牛まぶしを食べるようになった。
試合の帰りや友達と昼飯を食べに行くとき、ひやし牛まぶしを食べた。
ここまできたかと思ったのは、1学期の終業式終わり2時間後に練習があると言われ、その2時間の間に学校を飛び出し自転車20分ほどかけてすき家へ行き、ひやし牛まぶしを食べてまた20分かけて学校へ帰ってきたこともあった。
ここまできたか。
夏季限定だったそのメニューはある日忽然と消えた。
ショックではあったけど、「まあ、来年も多分限定で出てくるだろう」と思ってたから引きずらなかった。
けど、ひやし牛まぶしは次の年も、またその次の年も現れなかった。
自炊するようになってから、すき家で牛丼をお持ち帰りしてきて、自分で出汁を作って青ネギとわさびをかけて食べたりもした。
でも、ぬるさ以外は再現できなかった。
僕は今でも待っている。
ひやしという割にそんなに冷やしてくれなかったあのメニューを。
この記事を書くにあたって改めてひやし牛まぶしのことを調べたら、webライターみたいなのがひやし牛まぶしを酷評している記事を見つけてしまったけど、それでも僕は待っている。
僕みたいな人もいたし。
夏の思い出ってそんなにないけど、ひやし牛まぶしのことだけは何歳になっても追い続けたい。いつまでも待ってる。
ありがとうございます。 人を一人救ったって自覚持ってください。 本当に感謝します。