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08 とん平のヘイ・ユウ・ブルース/左とん平

 どんな娘かと訊かれ、ちんちんを踏むのが上手そうな娘だと正直に応えられなかった事実がなによりの証左、俺の魂は今の今まで死に続けていたのだ。

 いやさしこたまの麻酔を都度に射っては眠らせ続けていたのでありそうやって葬っていたのだ自らの手で。

 2,000万円。

 即ち老後資金を貯めるべく、時給896円の最低賃金で粉骨砕身、疲労困憊の内ほうほう帰宅したならコンパニオンガールにもむくりと起きない、股しない。

 最早今世の内には多摩蘭坂、宝くじは買わないってゆーかないってゆーか、ないってゆーか。

 黒髪の、マッシュルームカットの長いやつみたいなあの娘ですあの娘。ああ、あれってボブカットって言うんですか、女の子の髪型なんかよく分からんすからねえ。

 だ、などとプライベートブランドの廉価食パンみたいに味も素っ気もない回答のなにを面白いと思ったのか俺は、舐めんなよ。

 脳に働き方改革の理念なぞ聞かせるな、二枚重ねで被せられたゴムが早漏対策の心遣いなものか、剥ぎ取れ、流行歌手に心の目隠しを外される前に。

 ひっとえんどらーん、筆頭遠投卵。

 茹でちゃった股する。

 いずれナマでやらせてはもらえない人生、ならば無差別ぶっかけテロ行為で誰彼構わずハラませてやるとした気概を忘れたのか俺は、お前は誰だ名前を名乗れ。

 後ろの藤の喜ぶ男、三歩進んで二歩退る。

 逆襲へ。

 同僚と二言三言、業務上の会話をしたくらいで相手の娘さんと自分は結婚を前提に付き合い始めたものと思い込んだ主人公の独り相撲、葛藤する活動と暴走する妄想とセンチメントな千と千尋に秒単位で悶え翻り天を翔け海底で泥を被る日々を送りブスが雑に扱われる動画が容量いっぱいに詰まったSSDスティックを断腸の思いで熱湯に沈める儀式を果たし、末に、娘さんの彼氏を名乗る男による身体検査で芳賀ゆいやテライユキらといたした記録、その内容、無論想像上でだが、を仔細に記した春の歩みを没収され、免許証のコピーを取られ、足蹴にされる内にちんちんを踏まれたい欲求が自らのものであった事実を、或いはその願望が憚られるものであると不幸にも思い込んでしまった切っ掛けを夢想の滓の下に掘り起こすまでの心のジャーニーを、となれば必然的に伴って起こる単独ホモソーシャル、即ち真の願望から目を背ける為の虚勢、その瓦解と終焉をダイナミックに描写したなら直木賞だ、芥川賞だ、ノーベル文学賞だこりゃもう辞表だ。

 貯められるか老後資金、止められるか俺たちを。

('23.10.11)

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