第一話 二ヶ月くらいは帰ってこない
一月中旬、平日の午前十時過ぎ。
保育所に通う双子の妹を見送った後の二度寝、布団の誘惑に積極的に負けて以てのそれは至福だが、いよいよ目が冴えてしまい、指の爪が伸びる瞬間を目撃しようという非生産的段階に突入したなら起きるしかないだろうと思った。
出掛けねばならぬ時間までゲームでもして過ごそうと、三塚松理(ミツヅカマツリ)が居間へ行くと、居る筈のない父がいた。
「しばらく対戦出来なくなるから、少し、相手をしてもらおうかと思ってな」
高価な辞書ほどの大きさで威容を誇る