宣伝会議・ダイナミックNFT広告を出した意義
NFTをマーケティングや広告ツールとして活用するスタートアップ SUSHI TOP MARKETING社 ※1(以下スシトップ社)を創業して2年半が経とうとしている。
そのスシトップ社で先日、月刊『宣伝会議』の4月号の裏表紙に広告を出稿した。しかもただの広告ではない。「ダイナミックNFT」という聞きなれない技術を用いている。
簡単に説明すると、受け取ったNFTの組み合わせによって、NFTの絵柄が変化するというものだ。
このnoteでは、宣伝会議に出したダイナミックNFT広告を通じて伝えたかったメッセージを出版社の広告営業から始まった個人的なキャリアを振り返りながら考えてみたいと思う。
広告企画の説明
まず、今回のダイナミックNFT企画について説明したい。
詳細は会社ブログで解説しているが、
雑誌で配ったNFT「グンカンジャクシ」を持った状態で、特設サイトで配布されているNFT「進化のいくら」を受け取ると、「グンカンジャクシ」→「カバヤキモリ」に進化する という内容だ。
特定のNFTが同一ウォレットに入ったことをトリガーにして変化するNFTを雑誌広告で配るという試みをおそらく世界で初めて実施したことになる。
ダイナミックコンバージョンNFTの効用
NFTが変化すると何が良いのか。
例えば、
①看板広告でQRを掲出し、「卵のNFT」を配る。
②卵のNFTは店頭でクーポンとして使えるなどすることで、何かの購買の際にお店の人に見せる。
③お店で「卵のNFT」を出してクーポン活用した際に、お店の人はリワードとして「お花のNFT」を渡す。
④「卵のNFT」と「お花のNFT」が同一ウォレットに存在するとき、「卵のNFT」は「ヒヨコのNFT」に変化するとする。
看板広告でのコンバージョン率も紙媒体同様、測定しにくいものだが、「卵のNFT」が変化した「ヒヨコのNFT」の数=この企画によって行動変容した人の実数とカウントすることができる。
また、ブロックチェーンで確認できる。「ヒヨコNFT」/ 「卵NFT」で看板のQRからNFTを受け取り、店頭での購入につながったコンバージョン率も見ることができるのだ。
このような変化するNFTによって、媒体効果を測定する方式を、ダイナミックコンバージョンNFT※2 と呼称しているが、単に広告効果をトラッキングができるだけというだけではなく、卵のNFTを変化させるために購買行動をする人もいる(はず)なので、広告自体をコンテンツのようにエンドユーザーに届けることができるのだ。
広告企画の説明についてはこれくらいにする。
余談だが、今回の雑誌広告により、スシトップマーケティング社は4マスと呼ばれるテレビ・ラジオ・新聞・雑誌のすべての媒体でNFTを配布した実績を持つ(おそらく)世界初の企業となった。
NFT広告で解決したい課題とは?
4マス広告(以下、オールドメディアと言う)はネット広告の出現以降、毎年パイを削られ、現在では国内の広告費の約半分はインターネット広告となった。
ここからやや個人的な話になるが、
10年前、デジタル化が進む時代に逆行するように、私は「山と渓谷」という登山の専門誌の老舗企業に新卒入社し、広告営業部という、アナログな雑誌の広告を売る部署からキャリアを始めた。
紙の広告は当然だが、効果測定が難しく、当然コンバージョン率など、ネット広告で当たり前の数値も取れない。
広告営業マンは、オンラインやイベントとの抱き合わせや、広告効果を煙に巻くような営業トークでなんとか雑誌広告を販売しているのが実態だった。
ところで、『宣伝会議』は広告・マーケティング業界では権威のある雑誌で、多くの企業のマーケティング担当者や広告代理店の人を読者に抱えている。
今回のNFT企画を行う媒体は『宣伝会議』をおいて他にないと思っていた。それは、我々がスシトップマーケティングという企業を通じて解決したい課題を、最もシビアな問題意識として感じているのはこの媒体の読者である、「企業とエンドユーザーのコミュニケーションの担当者」だと考えているからだ。
では、スシトップ社が解決したい課題とは何か?
それは、「企業と個人のコミュニケーション」におけるアンフェアネスだ。
アンフェアネス(=不公平、不公正さ)というのはまた漠然とした表現のので、少し具体的にする。
スマホが世に出て15年ほど経過し、インターネット広告はもはや成熟産業となった。ビッグデータやさまざまなアドテクが開発され、広告主はより精密に訴求したいメッセージをターゲット層に届けることができるようになった。
しかしながら、私たちはいまだにSNSで流れてくる広告(youtubeの再生前の広告など)を「うざい」と思ってしまう。
アドテクノロジーは発展したが、その恩恵を受けるのはマーケターや川上にいるクライアント企業だけで、最も配慮されるべきエンドユーザー(私たち市民、消費者)の利便性が向上したと感じることは少ないのではなないだろうか?
実際「アテンションエコノミー」という言葉が存在するように、今やエンドユーザーの注意力、集中力が、モノのように扱われているのが今のSNSに牽引されるインターネットだと思う。
アドテクノロジーの発展の陰で置き去りにされていた、CX視点(エンドユーザーの顧客視点、消費者視点)に光をあてることこそが、やや抽象的ではあるが、この会社を通じて解決すべき課題だと思っている。
プログラミングできる広告としてのNFT
ところで、「広告マンの仕事」とは究極的になんだろうか?
これは、シンプルに「人が喜ぶ広告を作ること」だと思っている。
NFT、ブロックチェーンという技術を使うことで、広告を「うざい」ものではなく、「もらって嬉しい」コンテンツにできるのではないか?
なぜNFTで「個人のうれしい」を実現できるかというと、NFTには「プログラミングできる広告」としての側面があるからだ。
一人一人が喜ぶ価値は当然違う。NFTはクーポンやゲームアイテム、クローズドなイベントの参加チケットなど、多様な価値にデジタル所有権を与えることができる。
なので、人が喜ぶ多様な価値に合わせた広告が作れるという考えだ。
(当然、よかれと思って作った広告をスパムと感じる人もいるだろうが)
プログラミングできる広告としてのNFT活用によって、広告を「うざい」ものからユーザーが喜ぶコンテンツに変え、企業と個人のアンフェアネスを解決できるかもしれない。
こういったピュアな発想が、口幅ったいがこの会社のパーパスだと思っている。
今回の広告を通して伝えたい「メタな」メッセージ
この記事は限られた時間で書いている。
結びに向けて書き殴っているので、話題が散逸した結果、重要なことが伝えられていないことを気にして、まとめのようなものを記載しておく。
<宣伝会議 ダイナミックNFT広告で伝えたかったメタなメッセージ>
・ダイナミックNFTでオールドメディアをDXさせることができるのではないか?
・NFTにより、アドテクノロジーが見落としたCX視点にもう一度光を当てたい
・NFTを「プログラミングできる広告」として用い、多様な価値をエンドユーザーに届けることができる
こういったメッセージを宣伝会議の広告で企業のマーケターや代理店マンに伝え、もっと言うと、
「NFTの活用により、広告をうざいものからユーザーが喜ぶコンテンツに変え、企業と個人のアンフェアネスを解決する」という我々のパーパスに共感してもらいたかった。
35歳の誕生日
さて、このnoteを書いているのは3月7日 、私の誕生日だ。
いよいよ35歳になってしまった。
25歳で遅めの就職をしたので、社会人になって10年が経つ。
新卒で雑誌広告をやっていたときに、上司のNさんから、
「徳永クン、広告って何だと思う?」
と訊ねられた。
Nさんは「広告は数字が全て」ということを伝えたかったらしいが、私は その時は
「客がモノを売る手伝い」
と芯を食った答えを返し、
「たしかにそうかもな、」と歯切れの悪い返事をもらったのを覚えている。
実際今でもその時の自分の答えの方が、本質的だと思う。
ただ、10年経って、もう一度同じ質問をされた時、35歳の自分の答えは違ってきたと思う。
「広告とは商売人が客を理解しようと思う情熱そのもの」
だと思う。※3
客に自分や商品を理解してもらおうとする情熱 じゃないの? と思われた方もあるかもしれないが、違う。
マーケティング、広告の仕事は潜在的な顧客の年齢性別などのデモグラフィーや趣味嗜好を推しはかり、そのターゲットに向けたメッセージを捻り出す。それは、本質的に人が相手を理解しようとする営みに他ならない。
スシトップ社が提唱する「トークングラフマーケティング※4」もブロックチェーン上における「個人のデジタルデータの所有」によって、その人を理解しようとする考え方だ。
「NFTをコミュニケーションツールとして活用する」という前例のないジャンルで起業してもう2年半になるが、ブロックチェーンという技術は知れば知るほど、「power to the people 」的な発想で作られた存在だと感じる。
「企業と個人のコミュニケーションをより良くする」という大きなテーマに、30代の働き盛りの時期をぶつけられることが、幸いだと思う。
※1. SUSHITOPMARKETING株式会社
https://www.sushitopmarketing.com/
※2. ダイナミックコンバージョンNFTの詳細はこちら
https://www.sushitopmarketing.com/blog/dynamic-0307
※3.この言い回しは某ラーメン漫画の影響を受けているかもしれない
※4.トークングラフマーケティング
https://www.sushitopmarketing.com/service/tokengraphmarketing
実際に宣伝会議に掲載した広告 QRをスキャンして遊んでみてください!
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