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ヒップホップフェス『POP YOURS』感想!

「2020年代のポップカルチャーとしてのヒップホップ」をテーマにした大型ヒップホップフェスティバル『POP YOURS(ポップユアーズ)』が、2022年5月21日(土)&22日(日)、千葉市の幕張メッセ(屋内ホール)で初開催されました。

タイムテーブルをおさらいすると以下の通り。

タイムテーブルDAY1-DAY2

全体の感想としては、お目当てのピーナッツくんとTohjiが見れたから本当によかったなというのが一番です。フェス全体を楽しめたかというと、正直すべてのアーティストのパフォーマンスを楽しめたわけではありません。知らないアーティストが大半なので無理もないですが。
先に言っておくと自分はこれまでろくに「ヒップホップ」を聞いてないんですよね。単にピーナッツくんとTohjiの音楽が好きなだけなんです。

個人的に特によかったアーティスト

よかったアーティストを羅列していきます。順番は別に「よかった順」というわけではなく、適当です。

ピーナッツくん

ピーナッツくんはライブパフォーマンスもMC(トーク)もよかったと思います。生でピーナッツくんが歌っている姿を見ることができて、結構興奮しました。
彼の生の姿は、これまでYouTubeで見てきたそのままの印象でした。
ピーナッツくんが観客たちから歓迎されている空気を何となく感じたので、ファンとしては安心しました。

Tohji(トージ)

Tohjiはめっちゃよかったです。1曲目の「Higher」のイントロが流れたときから、急に観客もブチ上がっていました。
「GOKU VIVES」の通常版→Remix版という展開は意外性もあって盛り上がりました。客演のElle Teresaも登場してくれて、Tohjiの出番の中ではこの曲が一番盛り上がっていたのではないでしょうか。
あと、めっちゃ好きな「POOL SIDE」を聞けたのはかなり嬉しかったです。
また、今年発表されたばかりの「カモメ」や「ULTRA RARE」は私が最近一番聞いている楽曲だったので、贅沢な時間だなと思いました。
TohjiはMCもよかったです。愛車を失ったときの心情や、次のアルバムに込めた思いを本人の口から聞けたのはとても貴重な機会でした。Tohjiは次のアルバムについて、

言葉の通じない(外国の)相手から「かっこいい」って思ってもらうためには、言葉だけじゃなく、立ち振舞いとかライフスタイルとかを含む全部で勝負しなきゃなって思って、このアルバムを作りました。

(TohjiのMCトーク)

といった趣旨のことを語っていました。(どうやら厳密には、アルバムに収録されている『ねるねるねるね』という曲についての導入だったようです)
Tohjiには今後とも「日本のヒップホップ」とかにこだわらず、彼らが一番いいと思う音楽を提供し続けてもらいたいと心から思います。

どんぐりず

2日目のトップバッターでしたが会場をいくらかアゲてくれてよかったです。やっぱり「NO WAY」はめっちゃノれていいですね。
MCの森くんが楽しそうで、こっちも嬉しかったです。

dodo(ドド)

dodoはよかったです。かなり観客から愛されてた気がします。

Awich(エイウィッチ)

今回見たアーティストの中で一番すごかったと思います。とにかくかっこいい!!

STUTS(スタッツ)

客演も含めると2日間を通して最も多く登場した演者なのではないでしょうか。謙虚な人柄で、彼が登場しているときは会場の空気が受容的で穏やかな感じになって息がしやすかったです。(別に他のときピリピリしているわけではありませんが)。

その他

1日目、OZworld、VaVa、SALUの3人はマジでかっこよかったです。
2日目は、ralph、Daichi Yamamoto、BIM、¥ellow Bucksあたりがすごくよかったです。

ある意味印象深いアーティスト

個人的にいいとは思わなかったけど印象に残ったアーティストについて言及します。

SKY-HI(スカイハイ)

元AAAのメンバーらしくて、顔も声もかっこいい感じの人でした。
1日目、「dodo→ピーナッツくん」と来てから、「SKY-HI」という順番だったのですが、ピーナッツくんが終わってから一気に観客が減り、SKY-HIがライブしている間多くの観客が座ってスマホを触っているような状態でした。
「どうしてこんなに空気が変わったの!?」と戸惑いましたが、どうやらTwitterなどを見たところ、彼は「ジャンル的にヒップホップじゃないからそりゃ観客も盛り上がれないよな」と言われていたり、「アイドルラッパー」と揶揄されていたりするようです。
彼自身、MCトークで「アウェーな方がパワーになるから」と強がってみたり、「アンチとか誹謗中傷とかダサいから辞めな」みたいな説教を始めたりしていて(それは楽曲の導入でしたが)、別にファンでもアンチでもなくただ無知な自分としてはとにかく気まずかったですね笑。
私は内心「おいおいみんなそんな冷たい反応することないじゃん」と思いつつ、自分としてもあんまりノれる音楽ではなかったので座って休んでいました。
なんだか気の毒なので今後ともがんばってほしいなと思います。
(という仕方でかなり印象に残っています)

BAD HOP(バッドホップ)

2日目の大トリという大役を務める大人気グループです。自分もさすがに名前くらいは聞いたことがありました。
感想としては、何がいいのかまったくわからない特にノれる音楽がない、という印象でした。しかし、会場は大盛り上がりでものすごい一体感でした。これが大人気グループのライブというやつか…と圧倒されました。
私はどうして自分はこんな人気グループの音楽のよさを感じとることができないのだろうか、と戸惑いました。加えて、「まったくよさがわからない」みたいな厳しい言葉が自分の中に生まれてくることにも混乱しました。というのも、POP YOURS出演アーティストの中には自分がピンと来ないアーティストなんて他にも複数いたのに、なぜかBAD HOPにだけ厳しい言葉が思い浮かんだからです。
それはきっと、「人気グループだから」という前情報が作用して、始めから「そんなにいいものなのか…?」と疑う心があったからかもしれません。

とにかく私は、「この音楽のどこがいいんだ?」という自分の中にある思いと、会場の圧倒的な盛り上がりとの間にある大きなギャップに苛まれ、みるみる会場から置いていかれました。

ここで少しエピソードを挟みます。
私は今回のフェスにはひとりで参加していました。ちょうど後ろの席に座っている女性もひとりらしかったので、待ち時間の間暇だなと思ってその女性に話しかけてみました。
女性はおそらく20歳前後くらいで、全身黒のレザーっぽい服装でした。チェーン付いてたり、めちゃ上げ底の黒ブーツだったりする感じのやつです。
私は「誰目当てとかありますか?」といったことを聞き、女性は「Awichとかralphとかです」と答えました。
私は「Awichでオススメの曲とかありますか?」と聞きました。女性は「全部です」と答えました。
そして、「自分あんまりヒップホップ詳しくないんですけど、(これから始まる)¥ellow BucksとかBAD HOPとかってどんな感じなんですか?」と聞いたところ、女性は「こっからヤバイですよ」と答えたのです。私は「(へーそんなにすごいんだ)」と思いました。

そして実際聞いてみたら、確かに¥ellow Bucksはめっちゃかっこよかったです。また、Awichは本当に「Show」という感じで、こっちが盛り上げようとしなくても手放しで圧巻のパフォーマンスを眺めていられる感じでした。
しかし、BAD HOPはよくわからないことを集団でギャーギャー騒いでるだけで、しかも観客たちはなぜか大盛り上がりしているし、「本当にこれがすごいのか? でも後ろの女性がヤバイと言ってたしな…」と信じてしばらくBAD HOPのパフォーマンスを見守っていました。

そして私は、「さすがに45分間全部聞くほどのものではないな」と思い、早めに会場内コインロッカーの荷物を回収しようと立ち上がりました。
そのときです。席を立つために後ろを振り返ると、なんとあの女性がいなくなっているではありませんか! そう、後ろの座席の女性はもう帰っちゃってたのです! 「ヤバイ」と言われるBAD HOPがフェスを最高潮に盛り上げてるタイミングで、彼女は足早に帰っちゃってました! そりゃそうですよね、何がいいかわからない音楽やってるんですもん。でも、私は「こっからヤバイですよ」というあなたの言葉を信じて、30分間くらい耐えていたというのに…笑。

私は、突然話しかけたにも関わらずそれなりに会話してくれた後ろの座席の女性に対して、「帰っちゃうんかい」という思いと「そりゃ帰るよね」という相反する2つの思いを抱きつつ、2日間のお祭り騒ぎの高揚を胸に残したまま会場を後にしたのでした。

印象深い関連サービス

LINEOpenChat

今回のイベントでは、POP YOURS公式の「LINEOpenChat」が公開されていました。2022年5月23日(月)お昼の時点で542人参加しています。(なお現在は閉鎖済み)。LINEOpenChatとは、誰でも匿名でメッセージのやり取りができるサービスです。ラインを本名でやっている人でも、OpenChatでは新しくニックネームをつけてトークすることができます。
POP YOURS公式OpenChatでは、「座席A3ってハズレ?」「喫煙所どこ?」などの健全な内容の会話から、「チケット売ります」「Tohjiの動画撮った人いたら見せてください(撮影禁止なのに)」などのグレーな会話まで見られました。さらに、2日目のフェス終了後には、

女2人で🏩行ったらええやん
テレビでは流せない「うちくる?」

このように性的な意図を明示したやり取りが行われていました。これまでも「誰か飲みに行かない?」といったやり取りは頻繁に行われていましたが、ここまで完全にアウトなものも登場するとは驚きです。未成年もたくさん参加しているchatなので本当によくないですね。(規約違反なので通報すべきものでしょう)。
POP YOURS公式運営のOpenChatでありながら、ここまで無法地帯のような状況になるというのは少し驚きました。

とはいえ、本当に多くの人がオープンにチャットしていて、個人的には何だか愉快でした。OpenChatは今回のイベント全体の中でも結構思い出になっているのでメモしておきます。

YouTube無料生配信

POP YOURSのライブ映像はすべてYouTubeで無料生配信されました。
この無料生配信が発表されたのは、確か5月20日(金)というフェス前日。おそらく、「生配信あるならチケット買わなくていいや」という人を生まないための戦略だったと思われます。しかし、そのやり方がどうにも気に食わない、という意見も結構見られました(例えば件のOpenChatなどで)。前日発表というやり方にどこか汚いものを感じるのは、気持ちはわからなくもないですね。
しかし、自分としては「初めてのフェスでピーナッツくんやTohjiが生で見れる!」と思ってウキウキしていたので、生配信されようがどうでもよかったです。
また、スケジュールやお金や地理的な事情で現地に来れなかった人たちが、どこでも無料でフェスを楽しめるなんて「最高じゃん。よかったじゃん」と素朴に思いますね。
それに、ちゃんと稼ぎをあげないとフェスを継続できないはずですから、運営側の都合もわかります。
次々と新情報が出てくる感じはおもしろかったです。

YouTube生配信ではチャット(コメント)が可能でした。しかし、チャット内容は運営への短絡的な不満とか、しょうもないマウントの取り合いばかりで、見るに耐えないものでした。アーティストのパフォーマンスをみんなで楽しむための場のはずなのに、なぜ観客同士で言い争っているのでしょうか。
あれはまさに、仲裁役の大人が不在のときに発生してダラダラ続いてしまう、小中学生同士の喧嘩みたいな感じでした。これは配信内容を問わず、YouTube生配信のチャットではしばしば見られる光景だと思いますが、いつ見ても呆れちゃいますね。多くの人々にとって、子どもたちの喧嘩をいつまでも鑑賞する趣味はないはずなので、なんとかならないものでしょうかね。

YouTube生配信が現地にいる観客にとってどういう意味をもっていたかと言うと、ひとつは「離席中にフェスがどういう進行状況か把握できる」という利点がありました。トイレの中にいても、「いま誰がやってるのかな」というのを誰に聞かずともリアルタイムに確認できるのは普通に便利でしたね。
あとは、現地に来れなかったヒップホップ好きの知人とTwitterを通して一緒にライブを楽しむことができました。私は現地で、知人はYouTubeで鑑賞し、それぞれTwitterで感想をつぶやき合っていました。超空間的にリアルタイムでオフラインイベントを楽しめるなんて、現代的でおもしろいですね。

まとめ

今回フェスに参加して思ったのは以下のことです。

  • ピーナッツくん、(失礼ながら)思ったよりちゃんとライブ盛り上げててかっこよかったし、楽しかったし、安心しました。

  • Tohjiのライブの盛り上げ方はやっぱりすごいんだなと思いました。

  • フェスもいいですが、今後は好きなアーティストのワンマンか、せめて3組くらいのイベントにたくさん行ってみたいなと思いました。

  • 自分は「ヒップホップが好き」と思っていいのか、少し自信がなくなりました。確かに、これまで複数のヒップホップアーティストを好きになってきました。しかし、実は「ラップ」にはそれほど惹き付けられていないのです。攻撃的な歌詞よりも、心地よい気分にさせてくれるかどうかを重視しています。私は電子音楽系のヒップホップが音楽として好きなんです。フェスで演じられていたラップを見て、「すごいな、かっこいいな」とは思いますが、特にこれから新たに好きになれそうなアーティストはいませんでした。(いや、やっぱりAwichだけはチェックしてみようかなと思います)。

  • やっぱり自分は「日本のヒップホップ」には取り立てて強い関心があるわけではありません。group_inou、Tohji、ピーナッツくんなど、好きになった特定のアーティストの音楽をとことん楽しむまでです。

さて、『POP YOURS』は国内最大規模のヒップホップフェスティバルで、まだ今回が第一回です。素敵なヒップホップアーティストに出会うためにも、ジャンル全体が盛り上がることは重要だと思うので、この素晴らしいイベントが今後ともよい形で継続するといいですね!

とても楽しかったです! とにかくピーナッツくんを呼んでくれてありがとうございます!
企画運営や演者の方々は本当にありがとうございました!

おわり

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