不動産オーナー探訪記 第28話 岸本エステート・岸本ビルヂング
久々の登場になりました。不動産オーナーの探訪記です。２年ぶりです。不動産オーナーを調べるのは骨が折れます。ただし業界関係者に話を聞くと、ワタシの特集記事で最も人気があるのがこの「不動産オーナー探訪記」だと聞いております・・・苦笑
情報無いからこそ・・・その歴史や探訪記の意味があるのかと思います。
長くなりました、今回は丸の内の数少ない三菱地所ではないオーナー企業「 岸本ビル・岸本エステート」です。
会社の概要と業態
岸本ビルヂングの運営元である岸本エステートの沿革社史をみても今一わかりにくいと思いますがまずは下記をご覧ください。
1926年(大正15年)
東京言論界の雄「時事新報社」の社屋「時事ビル」として建築される
1937年(昭和12年)
関西の鉄鋼問屋「岸本商店」の岸本家がこれを入手、賃貸ビルとして改修して、「岸本ビルヂング」と改称
1938年(昭和13年)8月11日
ビルの所有者として「泉吉株式会社」、ビルの管理運営及び不動産の売買目的に「岸本不動産株式会社」が設立される
1979年(昭和54年)7月11日
「岸本不動産株式会社」より、ビル管理運営部門を分離、「岸本建物サービス株式会社」が設立される
1980年(昭和55年)7月7日
現「岸本ビルヂング」建替竣工
1985年(昭和60年)8月1日
「岸本建物サービス株式会社」と「岸本不動産株式会社」が合併し、 社名を「岸本エステート株式会社」に改称
引用元
ここでわかるのは岸本ビルが建て替えを行われたという事とどうやら「泉吉株式会社」と「岸本商店」の岸本家というのが本流にあるだろうというのが分かります。
岸本商店の沿革
岸本商店が現在合併がなされており存在しない商社になりますが、沿革を見てみると大阪の鉄商である大銑産業株式会社がその本流を受け継ぎ残っています。
1831年
泉屋武兵衛が堺で打刃物商・岸本商店を創業
大阪の有力鉄鋼商である岸本家は明治34年、新城屋新田に岸本製鉄所を設立し、44年には釘の国産化を目指して同地に岸本製釘所〔せいていしょ〕を開設します。大戦終結後の1919年、大正8年、岸本の設備すべてを住友伸銅所が買収。これが住友の尼崎進出の端緒となりました。
岸本家及び鉄鋼商であった岸本商店は第一次世界大戦終戦後の1919年、住友伸銅所に製鉄所が買収されます。
そしてその頃には大阪銑鉄商会が力を増してきているというのが下記の沿革からわかります。
1935年
岸本商店とその子会社泉吉商店の事業の一部を引き継ぎ、株式会社大阪銑鉄商会（大阪市大正区泉尾浜通）、資本金50万円、設立。柴田喜代治、初代社長に就任
1936年
岸本吉左衛門、2代目社長に就任
資本金100万円に増資 大阪市西区西長堀南通5-3に本社移転
1940年
東京、名古屋、高松、広島、八幡各出張所を開設
1941年
岸本商店、伊藤忠商事、丸紅商店の3社が合併、三興(株)を設立。大阪銑鉄商会は三興の傘下に入る。
岸本商店および鉄商の各社は戦争での鉄の確保兵力状況を転機に合併しより大きな企業へと統合を余儀なくされます。第二次世界大戦終戦による兵力強化施策の一つとして岸本商店、伊藤忠商事、丸紅商店の3社合併があ行われます。これらは鉄鋼の強化目的の為に合併された様子です
そして終戦を迎えるわけですが、ここで創業家の岸本家は東京丸の内へと移ってきたという事です。
現在の岸本ビルの土地には地上5階建で地階のある2607坪の本館と、地階付き平屋建の314坪の工場で構成された時事ビルがありました。
1937年時点で（合併前）大阪の鉄鋼商社である岸本商店のオーナーがこのビルを買収し、「岸本ビルディング」と命名した。翌1938年にはビルの所有者として泉吉株式会社と管理会社の岸本不動産株式会社が設立されて現在の形に近づいてきます。
当時は隣接する内外ビルとの一体開発を目指しますが、うまくまとまらず内外ビルは三井不動産の傘下として丸の内三井ビルとして、岸本ビルは三菱地所とともに岸本ビルの建て替えを進めます
岸本ビルヂングは竣工1980年7月7日に竣工を迎え事業主として三菱地所と泉吉株式会社が保有するビルとなったのです。
主な事業と関連会社
・岸本エステート
・泉吉株式会社
企業概要
企業名：岸本エステート株式会社／岸本ビルヂング
設立 ：1979年7月11日
所在地 ：東京都千代田区丸の内二丁目２番１号
代表者 ：岸本 將裕
業 種：賃貸ビル・マンションの管理運営・コンサルティング
主な賃貸オフィス：岸本ビルヂング
主な管理物件 ：有栖川ホームズ、山手ホームズ
関連情報
主にオフィスに関する不動産知識や趣味で短文小説を書いています。第1作目のツボ売り、それ以外も不動産界隈の話を書いていければ良いなと思っています。 サポート貰えると記事を書いてる励みになります。いいねをしてくれるだけでも読者がいる実感が持ててやる気が出ます