映画感想『犬王』
Netflixでアニメ『平家物語』を観ていた手前、気になっていたこの作品。
当初は配信されるのを待とうかと思っていましたが、ミュージカルアニメーションという紹介文を目にしてそれは劇場で観ねばなるまいと映画館に足を運びまして。
観まして。
うん。
これはミュージカルじゃねえな。
これはロックだよ。
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主人公である友魚と犬王。その最初の出会い。
琵琶の音、法師の声、祇園精舎の鐘の音…そんなの洒落臭ぇっ とばかりにビートをぶち込んでくるや潔し。明らかに琵琶の音じゃないモノが聞こえてくるというか、どこで響かせてやがるそのギターサウンド。
というツッコミどころを飲み込んで受け入れられればフェスティバル。
身体が自然とリズムを刻む、こいつはフェス映画ってものですよ。
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そして一見、トンチキ映画と思いきや。
音楽の皮を剥いでみれば、中々の『平家物語』
かたや壇ノ浦でとある『秘宝』にまつわる悲劇に見舞われ。
かたや栄華を求める父親によって悪霊に差し出され、異形として生まれつき。
そんな二人が出会い、平家の霊を肌で感じ、その声に耳を傾け、語る物語を拾い、叫び、音に乗せ、踊り、表し、弔う。
悲しみに寄り添う形ではなく、熱狂によって慰める。
聞け。見ろ。俺はここに居る。
俺たちはここに居る。
お前たちはここに居た。
お前たちは確かにここに居たと叫び表し刻みつける。
『俺たち』を見ろ!!
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されど祇園精舎の鐘の音。
諸行無常の響き響かせ。
最後に名。
名に依りて弔いは成され、幕が降りたと解釈。
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ロックであり表現の力であり弔いであり名の持つ力、呪術的な味わいもあれば時代の流れに逆らい咲いた徒花の美しさも見えて。
描写よろし。
設定よろし。
演出よろし…鯨の段はブチ上がった、演出は明らかオーパーツでしたけれど。
総合的に大変満足。
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ただ、細かく言えば諸々言える所はありまして…
一つ上げると歌のシーンで歌詞が聞き取れない事がちょいちょいと。
そこだけでも字幕付けて欲しかったなぁ… orz
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