頚椎に関する基礎知識:MCPブロックについて

今回は、Multifidus cervicis plane block(MCPブロック)に関する報告について紹介します。

Multifidus cervicis plane block is effective for cervical spine surgery
Yuichi Ohgoshi. Hitoshi Izawa. Shoichi Kori. Masakazu Matsukawa.
Canadian Journal of Anesthesia 64,329-330,2017

概要
今回の論文は、頚椎椎弓形成術の周術期鎮痛に対してMCPブロックの有用性が述べられています。内容は、後縦靭帯骨化症により頚椎椎弓形成術を施行した女性に対して、全身麻酔後に両側MCPブロックを施行し、その後の鎮痛効果を報告しています。結果、術後経過は問題なく、日常的な鎮痛以外は追加の鎮痛薬は必要なかったとしています。また、著者らは本症例以外にも、椎弓形成術を施行した20症例以上に対してMCPブロックを行い、良好な鎮痛効果が得られたと報告しています。以上のことから、頚椎手術後の周術期鎮痛において、MCPブロックが有効である可能性を報告されています。

※本報告で実施されているMCPブロックについて
:0.375%ロピバカイン20ml(計40ml)を頚多裂筋と頚半棘筋の筋膜面の間に注射

感想
臨床上、頚椎術後症例や慢性頚部痛症例において、頚多裂筋や頚半棘筋が走行する椎弓面の深層部を触診すると、硬さと圧痛を認めることを良く経験します。また、エコーで同部位を観察すると、頚椎の等尺性伸展運動に伴う同筋の収縮が乏しく、筋膜間での滑走不良を認めることが多い印象です。本報告も踏まえると、頚多裂筋や頚半棘筋とその周囲組織の動態不良は、疼痛発生に関与する可能性が伺え、今後も注意深く観察していきたいと思います。  
次回は、頚多裂筋や頚半棘筋を支配する脊髄神経後枝内側枝の解剖に関する報告を紹介させて頂きたいと思います。

次回
8月2日:Surgical Anatomy of the Nerves and Muscles in the Posterior Cervical Spine
報告者:石黒翔太郎


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