投球動作における前腕の回内外の動態について

 本日紹介する文献は、 投球動作における前腕の回内外の動態について検討された報告です。

概要

 投球動作において肩関節は、トップポジションから外旋し、最大外旋を迎えた後で急速に内旋しボールをリリースします。そのタイミングでの前腕も回内外することで、投球方向に対してボールリリースすることができます。この回内外の動態は見解が別れています。この回内外は自動運動として起きるのか、他動的に生じるのか定かではありません。この論文では、モーションキャプチャーを用いてボールリリース時に前腕の回内外が存在するのかが明らかとなっています。その結果、肩関節の内旋に合わせて前腕は回外することが明らかとなりました。その内旋と回外の速度は関係性があり、タイミングが一致していたとのことです。また、ボールリリースのタイミングでは肩の外旋角度や水平内転角度が大きいほど、前腕は回内していました。

感想

 ボールをまっすぐ投げるには前腕の回内外による投球方向の調整が必要であることが考えられました。一方で問題点は、肩の回旋速度が前腕の回内外と関係があったことから、肩の回旋が大きい選手は回内外に伴う腕橈関節に加わる力学的刺激も大きいことが推察できることだと思います。
私の前回の投稿

伸展運動時に起きている腕橈関節の橈骨頭の動態|事竟Report (note.com)

で肘の速い伸展が腕橈関節の不安定性を招く可能性がある、と報告しました。もしかすると、このような動態が離断性骨軟骨炎(OCD)など腕橈関節の障害に影響を及ぼしているのかもしれません。ボールリリース前後の回旋や過度な伸展に着目しながら投球動作を解析したいと思いました。

報告者:中井亮佑

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