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こころのバロメーター

いい雑草がないなぁ。

都会で子育てをしていた頃、そう思っていた。
花屋で買う花でなく、道に生えてる草や花をコップに生けるくらいが好きだ。
なのに道端でも公園でも、私が求める、かわいい雑草は見つからなかった。

九州の田舎育ちの私からすれば、道端には雑草が生えていてあたりまえ。
住宅の石垣にも、側溝の周りにも、たくましく生きる雑草がいた。

雑草の中にもかわいい花をつけるもの、葉やツルや穂がいい感じなものがある。
知らないだけで、ちゃんと名前もあるはずだ。

それを見つけて摘んで飾りたい、と思う時、
きっとこころは穏やかで、気持ちにゆとりがあったのだろうと、いまは思う。

むかし、ある人から
「空をよく見てるよね」
と言われた事がある。

今日の空は青いねとか、
雲がきれいだねとか、
空気が澄んでるねとか、
月がまんまるだよとか。
そういう事をよく口にするのが印象的だと。

激務だった会社を辞めてフリーランスで働いていた頃。たしかに人間らしく、穏やかな日々だった。

九州の田舎に戻って数年が経つ。
なのに道端の草花を摘んでいない。
空を見上げることもあまりない。

生きていると色々ある。
いろんな気持ちに押しつぶされたり、
自分すら信じることができなかったり。
そんな時こそ、道端で生きる草花が、
眩しい空の風景が、必要なんだと思う。

もうじき春が来る。

力強く、可憐に咲く道端の雑草を探しに出かけてみようか。
私のこころはいま、きっとそれを求めている。

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