漫才『ライブVSイベント』

前置き

架空のお笑いコンビ『タタカルマ』による漫才です

漫才『ライブVSイベント』

イズミ：どうも、タタカルマです！　僕がツッコミのイズミで

コウヤ：墓穴を掘りがちなコウヤです

イズミ：注意が必要ですよー！

コウヤ：俺が、ボケの、コウヤです

イズミ：慎重にいっていただけるそうです、名前だけでも覚えて帰ってくださいね

コウヤ：個人的なことで申し訳ありませんが、今度、単独ライブを開催いたします！　拍手！

イズミ：えっ

コウヤ：傑作ネタ6本に加えてこの日のために新ネタ6本を下ろしますので、ぜひ

イズミ：あの、待ってください……聞いていないんですけど

コウヤ：うん、言っていないからね

イズミ：言っていないんですか！？　単独ライブをやるという重要な話を、僕に！？　タタカルマの一員なのに！？

コウヤ：だって今度やる単独ライブは「コウヤプロジェクト」としてだもん。ピン芸人としてね、しゅしゅっと

イズミ：ピンネタライブやるんですか！？　なぜ！？

コウヤ：今、R-1の予選をやっているじゃん？　それに触発されて

イズミ：触発されるのが遅すぎる！　あるいは早い！　触発されるとしたら予選じゃなくて決勝であってほしかった！

コウヤ：ライブのタイトルは「プロジェクトK」です！

コウヤ、体でKの字を表現する

イズミ：あ、コウヤのKだぁ

コウヤ：ちょっと動かすとXにもなる

イズミ：だめだめだめ、もうあるやつですからそれは

コウヤ：そうだね、受信料とられちゃうもんね

イズミ：取られませんよそんなことで！　アンテナですか、あなたは。そもそも普段からちゃんと払っているんだから大丈夫でしょ

コウヤ：とにかくピンネタライブをやることは決定事項だからね

イズミ：なるほど～。道理でモールの営業、断っていたわけだ〜。おかげでその日の僕は完全にフリーになっちゃいますけど、頑張ってくださいね～

コウヤ：でもピンネタライブやるにあたって一個、不安があるのよ

イズミ：え、僕に話を通さなかったこと以外に不安なことがあります？

コウヤ：俺のライブ開催の日ってさ、超大規模なイベントも同時に行われる日なんだよ。しかも会場も隣同士だし。そっちに客が流れる可能性が高いんだよね

イズミ：それは大変なことですね。ところでその、超大規模なイベントって何ですか？

コウヤ：あぁ、確定申告

イズミ：確定申告！？

コウヤ：全国同時、連日開催、国民的で伝統ある大規模イベントじゃん？

イズミ：コウヤさん、不安がっているところ申し訳ないんですけどね……あれをイベントって解釈している人はコウヤさん以外にいないんですよ

コウヤ：しかも午前8時30分から午後4時までの長尺だしなぁ。こっち30分なのに

イズミ：はい！？　コウヤさんのライブ30分なんですか！？

コウヤ：お、イズミ君。俺のライブに興味持ってくれるの？

イズミ：いや、興味を持ったというか、ひっかかるところがあったといいますか……傑作ネタ6本に加えて、この日のために新ネタ6本を下ろすんですよね？

コウヤ：そうだね、合計12本

イズミ：30分で足ります、それ？　単純計算で1本につき2分半しかないんですが

コウヤ：あ、ほんとだ

イズミ：尺を計算していませんでしたか！　たまげたなぁ

コウヤ：まぁ「10ビヨーン！」のオーディションに向けて作ったネタも何本かかける予定だから、多分足りるでしょ

イズミ：多分10秒ネタの番組だ。尺は足りるかもしれないけどピン活動に視野が向かっているのが何か複雑！

コウヤ：話を戻すよ。とにかく確定申告が俺のライバルだ！

イズミ：ケンカの売り方の次元が違いますね！　脱税する人ぐらいしか言わないセリフ！

コウヤ：だから当日はさ、俺自ら客引きに行って、確定申告に行くお客さんも引き込もうと思っているんだよ

イズミ：そんなこと本当にできるんですか？

コウヤ：やってみないとわからないから練習しておきたいな。じゃあ俺は客引きやるから、イズミ君は確定申告に並ぶお客さんをやってね

イズミ：あー、今年度もたくさん税金払っちゃった。ちょっと返してもらおうっと

コウヤ：本日単独ライブやりまーす。見に来てくださーい。あ、お客さん、俺のライブを観に来てくれませんか？

イズミ：えー？　僕、今から確定申告しなきゃ行けないんですよ。そのライブ、面白いんですか？

コウヤ：ネタには自信があります！

イズミ：へー。ところでそのライブ、チケット代いくらなんですか？

コウヤ：1000円です

イズミ：確定申告は入場料無料ですけどね

コウヤ：参りました！

イズミ：負けちゃったー！　客引きが論破されてどうするんですか！

コウヤ：だって無料は最強じゃん？　さすがに俺のライブを0円にするのは無理だよ

イズミ：いや、そうですけど！　とにかくもうちょっと抗ってくださいよ！

コウヤ：1000円、いやそれ以上の価値があるネタを披露しますから！

イズミ：ほんとにー？　ところでそのライブ、キャッシュバックみたいなのってあるんですか？

コウヤ：ネタの感想とかを書くアンケートに答えてくれたら100円返します

イズミ：確定申告だと、この書類を出せば10000円は帰ってくるんですよ

コウヤ：参りました！

イズミ：お札でビンタされて敗北を知ったー！

コウヤ：入場料無料、キャッシュバックありの神イベントだよね。確定申告

イズミ：勝ち目がない戦いしているんですよ、だから！　あれをイベントと解釈するのはもうやめましょうよ

コウヤ：いや、勝てるところはあるはずだ！　俺は面白さだけは負けていない！

イズミ：そりゃそうでしょ。芸人がそこで負けたら終わりですからね

コウヤ：……いや、それも負けるかもしれない

イズミ：何で！？

コウヤ：確定申告には最強のコンビが出演していることを忘れていた

イズミ：誰！？

コウヤ：おじいさんと事務スタッフ

イズミ：あれお笑いコンビじゃないですよ！　たまたまそこに来た人とそこでバイトしている人がペアになっただけです！

コウヤ：即席ユニットなのあれ！？

イズミ：あんまりそれを即席ユニットとは言わないんですよ。一期一会すぎるでしょうよ

コウヤ：おじいさんがうっかり違うボタンを押してありえない金額をたたき出して、スタッフがツッコミを入れるボケが定番なのに？

イズミ：ボケているの意味が違ってくるんですよ！　あとツッコミでもないですし、指摘！

コウヤ：あー駄目だ、確定申告にケンカを売っても勝てないや

イズミ：やっと諦めてくれましたか

コウヤ：もし次に単独ライブをやる時は、24時間テレビの募金にケンカを売るよ

イズミ：いや、いい加減にしてください！

二人：どうも、ありがとうございました

終わり