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娘の4年目の運動会は、ラジオ体操で泣けた

我が家の娘は、小学校1年の5月下旬に学校から遠ざかった。
それは、本人の特性もあるし、家族内の事情(兄の不登校&メンタルダウン)も関係していると思う。

競争することを徹底的に避ける娘にとって、運動会は得意な行事ではない。でも、表現(ダンス)を踊ることは好きで興味を示していたので、1年生の秋の運動会には、先生方の協力を得て、録画した動画で家で振り付けを覚え、運動会前日のリハーサルで場当たりをして、本番当日は見事に踊り切った。

続く2年生時も3年生時も、最初は「今年は踊るつもりはない」と言うが、見学や体験を重ねるうちに、「自分もやってみようかな」という気持ちになり、そこから詰めて自主練習をしてなんとか本番を迎えるということをやってきた。

ところが、昨年、3年生時の運動会本番、娘にとって記憶に残る出来事が起こった。

ダンス以外の競技に出場せず、児童席で一人観覧していた娘に、面識のない他学年の子が「なんで出ないで見てるの?」と聞いたらしい。

娘にとっては、痛い一言だっただろう。さらに、その質問に対して必死に答えた娘を置いて、その子は話を聞く姿勢を見せずに、反対側の子と会話し始めたとのこと…。

そんなこともあるだろうと予想可能な、なんでもないこの一件。

でも時間が経てば経つほど、娘の中には深く刻み込まれていったようで…。

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4年時の夏休み、突如、娘はこのエピソードを思い出しては、しょげたり、腹を立てたりし始めた。

そうして始まった4年生の2学期。「今年は運動会は出ない」という娘の意志は固く、私も「今年は本当に出ないかも…」と覚悟していた。

そんな中で、これまでにはなかった大きな変化があった。娘自身が自分の思いをストレートに打ち明けられる人が学校にいたこと。週1回1H面談してもらっていたスクールカウンセラーと、担任の先生だ。

3年間の学校とのやり取りの中で、結局は、学校という場所というよりも、人との良好な人間関係があれば、娘が自分らしく自分の意志を表現できるということを思い知った。だから、4年生が始まる前に、「この3年間の動きを見ていると、担任の先生と本人との信頼関係づくりができていれば、何事もスムーズに進む傾向がありました」と学校側へお伝えしていたのだ。

その報告を学校側が真摯に受け止めて実践してくださった結果、運動会についても、私を挟まずとも、本人の求めているものを直接先生方に受け取ってもらえた。

もちろん受け取ったからといって、望み通り叶えられるかどうかは別の話で、先生も困ったり、悩んだりされたと思う。策を提案してみるものの、本人が納得できず、また別の案を考えるというやり取りもあったようだ。

でも、そのやり取りの中で、娘が感じたのは

「これ、面倒くさいな。もう出てしまった方が楽だ。」ということ…。

そして、私の知らないうちにダンスに出る方向で話が進んでいた。

「今、一応出る方向で話が進んでいるから」とだけ娘は私に報告してきた。

私のやることは、毎日ダンスの練習がある時間に娘を送迎すること。シンプルだ。

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だが、問題はまだ解決していなかった。ダンスには出るけれど、他の競技をどこで見学するか?問題だ。

これについても、先生と本人とで考えたようだが、いい案が浮かばない。

そこで、家庭での娘の様子を見ていた私から、スクールカウンセラーに提案してみた。それは、「自分の居場所を確保したい」という娘の思いを叶えつつ、運動会の運営に関わるというところを探れないか?ということ。
「私はこの役割を果たすためにここにいる」という感覚で娘が堂々と(?)居られる場所を作ることを狙って、たとえば音響や旗持ちなど、娘ができそうな役割を作っていただくことはできないかという提案だ。

どんな役割が可能なのか、その先は学校にお任せするしかない。でも、娘が「運動会練習を見学していたら、たまたま音出しを頼まれてピッとボタンを押したんだ」ということをうれしそうに私に報告してきたことがあったので、その出来事を学校側にお伝えした。

すると、早速カウンセラーから担任の先生へ伝わり、運動会運営に関わる他の先生方との連携も含めて、音響という役割が娘に与えられた。

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張り切る気持ちの一方で、臨機応変に音出し・音止めをやらなければいけないというプレッシャーが娘には発生し、家では、泣いたり、不安がったり、夜寝つけなかったり…、いろんな形でそれが噴出していたが、そこは乗り越えられる範疇だなと私は判断していた。

そして、迎えた運動会当日の朝…。もう1つの問題が発生。開会式のリハに参加していないことを思い出したのだ。問題は、ラジオ体操。今まで1回も踊ったことのないものをぶっつけ本番で踊ることなど、考えられない。なぜなら、完成していないものを誰かの前で披露することは娘にとって一番避けたいことだったから。

これは、ヤバイ…。大丈夫かどうか、どうするつもりなのか、本人に確認しておきたい気持ちはある。でも、本番直前、不安を煽りたくはない。
どうしたらいいか?

ということで、私がやったことは、

朝ごはんを食べている娘の前で、おもむろに、アカペラで音楽を口ずさみつつ、ラジオ体操をやって見せること…(;^_^A 

不思議そうに半笑いで私のラジオ体操を鑑賞した娘に、

「大丈夫?」って確認したかったが、喉まで出かかった言葉を飲み込み、そのまま学校へ送った。

「開会式自体を見学する」という選択をするかもしれないなという私の予想は外れた。

開会式では、当日教えてもらったであろう自分の位置に並び、見よう見まねで人生初のラジオ体操をする娘の姿があった。そしてその様子を後ろから気づかう先生の姿も。

マスクの中でポロポロ泣いた。ラジオ体操見て、泣いている保護者は私くらいだっただろうな。夫もびっくりして多少引いていた(笑)

「開会式が終わって、みんなで走って退場するあの退場のやり方が一番気に入ったわ」

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競走は断固拒否、勝敗がつくことには参加したくない娘が、後で言っていた。

のびのびとみんなと走る姿を初めて見た。

娘の変則的な徒競走。

走ることは好きなんだね。

新たな娘の一面を発見できた日。

その後、私たち親に内緒で、練習していたダンス表現の部分があったことも知ることになった。

娘の中で秘密を抱えられる部分が大きくなっている。

学校苦手っ子だけど、ちゃんと成長してる。

親離れがどんどん進んでいることを実感して、嬉しいやら寂しいやら、肌寒い秋のこそばい感じにぴったりの気持ちだった。




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