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どこで、なに食べよう?

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仕事などで訪れた各地で食べたものを中心に記録しています。 そこには、それぞれの地域の事情と、それを活かしたり克服しようとする人々の努力があります。さらには「われわれは自然のものを… もっと読む
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塩竈 すし哲

 塩竈市(塩釜市)は、仙台市と松島との中間に位置する港町だ。仙台湾の中でも深い入り江である松島湾に面しているため、古くから仙台の外港として栄えていたようだ。また明治中期になると現在の東北本線が敷設され、東北地方の陸海の結節点となり流通業が発展したようである。  とくに近年では、東日本太平洋側での近海ものの本マグロが水揚げされる漁港として食いしん坊には有名となった。三崎漁港(神奈川県)や焼津漁港・清水漁港(静岡県)は遠洋漁業の基地であり、水揚げされるのは冷凍ものである。その点

島根県大田市の『大アナゴ』

 島根県大田市と聞いて「ああ、あそこか」とわかる人は多くはあるまい。出雲空港から車でも電車でも、海沿いに一時間ほど西に走れば到着する島根県中部の街だ。市街から少し山の方に向かえば、有名な石見銀山がある。  江戸時代には、銀の世界産出量の約三分の一は日本であったという。そのかなりの部分が石見銀山であったようだ。当然、天領であったし、そこへは役人が江戸から派遣された。多くの人々が集まり、繁栄したことだろう。今ではすっかり落ち着いた雰囲気の街だけれど、さまざまな古い文化は根強く残

新潟駅の駅弁『焼漬鮭ほぐし弁当』

 新潟県は奥が深い。同じ日本海沿いでも、北部に位置する新潟市や村上市などと、南部に位置する上越市や糸魚川市とでは、獲れる魚が違うようだ。いや魚の種類どころか、文化が違う。それは越後平野という大穀倉地帯を背後に控える中北部と、信州への「塩の道」の玄関口としての南部という地形の差が生み出したのかもしれない。ちなみに長野県の塩尻は「塩の道の終着点」という意味だという説もある。  さて今回は新潟市。上述のような地形上の優位性がもたらしたのは、北前船の寄港地としての繁栄であろう。かつ

木祖村の『ぶっかけ蕎麦』~道の駅にて

 木曽街道というのは、長野県塩尻市から岐阜県中津川市を結ぶ国道19号の一部分で、かつての中山道をなぞって整備されている。木曽街道に入れば地形は大部分が V 字であり、その底にあたる部分には木曽川が流れ、東西は山々に阻まれている。国道も、名古屋-塩尻間を結ぶJR中央(西)線も、わずかな平地や斜面を整備して敷かれているのだ。  このような地形であることと、おそらくは日照時間が十分に確保できないという理由とから、大規模な稲作は不可能だ。そのため、この地では蕎麦を栽培し、あたりまえ